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2.出会い:偶然の再会
透は背表紙に触れていた指を止め、棚の隙間からそっと覗いた。
向こう側、絵本コーナーの前に立つ小柄な背中。
薄いベージュの棚に囲まれたその場所だけ、春の名残のように柔らかい空気が漂っている。
――奏だった。
制服の袖口が少し濡れている。髪の端には、外から連れてきた細い雨粒が一つ、まだ消えずに光っていた。
彼女は何冊かの絵本を手に取りながら、真剣にページをめくっている。
透は一歩、ためらいながらも足を進めた。
> 「……藤原さん?」
声をかけると、奏が驚いたように振り向いた。
その動きで、髪の雨粒が一粒、肩の上に落ちる。
> 「あ……佐伯くん」
二人とも、同じ瞬間に声を少しだけ落とした。
図書室の空気が、その音をやわらかく包み込む。
外の雨音と、ページをめくる音だけが、再び静かに重なっていった。




