表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/94

5.象徴と余韻

外の風が、やわらかくカーテンを揺らした。

白い布がふわりと膨らみ、光を含んで、また静かに戻る。

そのたびにチョークの粉が舞い上がり、金色の粒となって空中を漂った。


透は机に寄りかかりながら、その光景を見ていた。

さっきまで書かれていた文字はもうどこにもない。

けれど、黒板の上には、何かがまだ“残っている”ように感じられた。


“黒板を消す”――

それは、過ぎた授業を終わらせ、言葉を一度空に戻す行為。

けれど今日のそれは、ただの“終わり”ではなかった。


消したあとの黒板には、確かに“余白”があった。

そこに、まだ誰も知らない何かが書けるような、そんな余白が。


奏もまた、窓際から黒板を見つめていた。

視線の先で、透とふと目が合う。

どちらも何も言わない。

ただ、夕陽の反射が二人の瞳の奥でゆっくり重なった。


何も書かれていない黒板。

けれど、その静けさの中に、

“これから”の輪郭だけが、確かに存在していた。


春の教室に満ちるのは、終わりの静けさではなく、

はじまりの予感――。


そしてその余白の上で、透と奏の物語は、音を立てずに動き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ