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『その手を言葉にできたら』 ― 行動でしか伝えられない彼女と、言葉でしか繋がれない彼 ―  作者: 南蛇井


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「放課後の共有時間」時期:4月下旬(春風の午後) 1.導入:静かな放課後

教室の空気には、もう一日の終わりの匂いがあった。

ほとんどの生徒は帰り、廊下の向こうに響く笑い声も、少しずつ遠ざかっていく。


窓から差し込む春の残照が、斜めに黒板を照らしていた。

チョークの粉が淡く光を受けて舞い、ゆっくりと落ちていく。

その粒子のひとつひとつが、過ぎ去った時間の名残のように見えた。


透は黒板の前に立ち、布を握りしめていた。

ひと拭きするたびに、白い線が静かに消えていく。

まるで“今日”という名の記録を、ひとつずつ確かめながら消しているようだった。


奏は窓際で、机の列を丁寧に整えている。

脚のきしむ音がほんの少し響き、すぐに春風の音に溶けた。

彼女は動きを止めるたびに、ちらりと透の方へ視線をやる。

その背中のゆっくりとした動きが、妙に静かで、見ていると心が落ち着いた。


外から聞こえる野球部の掛け声が、遠くで波のように途切れ、また戻ってくる。

そのリズムの向こうで、教室の中だけが別の時間に取り残されたようだった。


光が黒板の水跡に反射し、壁や机の上をかすかに移ろう。

まるで、時間そのものが淡く流れていくように感じられた。

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