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第8話 弟について、姉について

「リオラ。なにかワシに話したいことがあるんじゃないのかい?」


「え?おじい様に…?」


「そうじゃ。ここにおる先生方は、リオラが思っておる以上に信頼できる。

何も恐れることはない。話してごらん?」


「おじい様…」



レオンのことを話すべきか迷っていると、ミレニスおじい様はそれを察したかのように、安心して話しなさいと優しく促してくれた。

その言葉に背中を押され、私はレオンに起きた不思議な出来事を話し始めた。



「昨日、怪我もなく帰ることができたのは、弟のレオンのおかげなんですの。

あの時、母熊はわたくしたちが子供を連れ帰って殺そうとしていると誤解し、

わたくしの言葉に耳を傾けてはくれませんでした。

“どうしよう、この状況を助けて”と願った瞬間、とてつもなく眩しい光が現れて、

気づけばレオンがわたくしたちの目の前にいたのです。

そして母熊と対話をし、レオンの気持ちを受け取った母熊は冷静さを取り戻しました。

そのおかげで、誰一人怪我することなく家に帰ることができましたの。」


「なんと…レオンがリオラの居場所まで転移したということじゃな?

そして、魔獣と対話できたと…」


「なんか…そう…そうなりますわね…。

レオンが言うには、お父様と剣術の稽古中に、わたくしの“助けて”という声が聞こえたら、気づいたら転移していたと言っていましたの。」



レオンが突然現れたこと、そして母熊と対話できたことを話すと、

先生方は一瞬驚いた表情を見せた。

ミレニスおじい様は何か思うところがあるようで、静かにうんうんと頷いていた。



「次の休みに、レオンを鑑定してみようかの。ここ1年ほど見てはおらぬからのう。」


「そうしてくださると助かりますわ。セレナたちにも、おじい様に見てもらった方がいいと話していたのです。」


「そうじゃのう。それでは、次の休みの日を楽しみにしておくよ、リオラ。」


「はい!わたくしも楽しみにしていますわ。

それでは先生方、本日もよろしくお願いいたします。」



本当は私の方から鑑定をお願いしようと思っていたけれど、

おじい様の方から「鑑定してみよう」と言ってくださって、心から助かったと思った。

早く鑑定して原因を突き止めてもらわないと、レオンがまたどこかに飛んで行ってしまったら困るもの。

そう思いながら、先生方に一礼して学院長室をあとにした。


次のお休みの日まで、あと7日だったかしら?

早く時間よ進め!

そんな風に祈りながら、私は教室へと戻っていった―…









一方、学院長室では―



「リオラさん、何だか様子が変わったように感じますね、ミレニス学院長。

何て言えばいいのでしょう…背伸びしていた子が、ありのままになったというか…」



「確かに!今までのリオラちゃんだったら、“わたくしと弟の力でねじ伏せてやりましたの!”とか言いそうだもんね?」


「そうだな…。昨日と今日のリオラを見ていると、まるで別人のように感じる。

誰かと入れ替わったみたいな、そんな印象すらありますね。」



リオラが退室したあと、ルミナス、モリーナ、マイロの三人は、彼女の様子が以前と違うと話していた。

その会話を聞いていたミレニスは、やはり優秀な教師たちだと静かに頷いた。



「ふむ…。そうじゃのう…。あながち間違ってはおらん。

あの子は生まれた時から、あの子じゃよ。

ただ、忘れていたものを突然思い出した。そんな感じじゃのう。」


「忘れていたもの…

まさか、彼女は稀に、他の世界から生まれ変わった者…転生者なのでは?」


「ええー!そうなの?!この学院じゃ、転生者ってたまぁにいるけどさ。

そっかぁ…リオラちゃんの心は転生者なのかぁ。

今までのリオラちゃんも可愛いけど、今のリオラちゃんも僕は好きだなぁー。」


「しかし、それなら合点がいきます。昨日のリオラは、本当にすっとぼけていた様子でした。

記憶が戻って間もない。そんな印象でしたね、学院長。」



ミレニスが「忘れていたものを思い出した」と言ったことで、

三人の教師たちはすぐに、リオラが転生者であることに気づいた。

並大抵の観察力では一生気づけない事実。

だが、このルミステリア魔導学院の中でも特に優秀な教員たちには、転生者を見抜く力が備わっている。

それは、ごくごく稀に見られるほどの優秀さだった。



「うむ。ごく最近のことじゃ。

記憶が戻った衝撃で、これまでの生活や記憶が一時的に抜けてしまったのじゃろう。

よくあることじゃ。すぐにすべてを思い出すじゃろうて。

ただ、まだ本人には打ち明けてはおらん。そっと見守ってやってほしい。

完全に記憶が戻るまで、迷惑をかけることもあるやもしれん。すまんが、頼んだぞ。」


「お任せください、ミレニス学院長。彼女のことは、私がしっかりサポートいたします。」


「我々も、大きな事故につながらないよう、授業中は目を離さないようにします。」


「僕もしっかりサポートしまーす!」



ミレニスは、あの日の朝リオラが自室にやってきた瞬間から、記憶が戻ったことに気づいていた。

しかし、彼女自身が自分の口で打ち明けるまでは、そっとしておこうと決めていた。

だからこそ、すべてを思い出すまでの間、何かと迷惑をかけるかもしれないと感じていたミレニスは、

ルミナスたちにリオラの様子を見守ってもらえるよう、静かに頼んだ。


そして、自分の血筋の中に転生者が現れたことに、少しだけ喜びを感じていたミレニス。

転生者は、その能力が高く、心も美しいとされている。

だからこそ、リオラが今のまま、素直に、まっすぐに成長してくれることを、彼は心から願っていた-…。



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