49.
学園の休日。
私は、庭園の花の香りに包まれながら、刺繍を刺していた。
この頃、騒がしい学園生活が、日常になっていた。
静かに過ごせる貴重な休日。
そんな貴重な日に、またもや面倒事が私の前にやって来た。
父から呼び出され、父の執務室にやって来た。
「私が、ルオンダーク皇国に、ですか。」
「そうだ。陛下を通して、皇国から、治癒魔法師であるセレンに依頼が来た。皇妃を見てほしいとの事だ。」
「怪我はある程度治せますが、病気は分かりませんよ?」
「それを伝えた上での依頼らしい。」
「分かりました。お受けします。」
他の国にも、行ってみたいと思っていた。
公的に行けるなら、それに越したことはない。
「わかった。伝えておこう。」
ルオンダーク皇国。
どんな国なのだろうか。
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父に返事をしてから、四日後に出発すると決まった。
かなり速い決定に、皇妃の体調は、思ったより深刻そうだ。
皇国に訪問する際、皇子と皇女も、一時帰国することになった。
私は政治的フォローをしてくれる、ドルテア王国の随行員を連れて、ルオンダーク皇国に向かったのだった。
皇国は、王国から国を二つ跨いだ先にある。
片道でも、馬車で一カ月もかかる。
野営などはせず、宿に泊まりながらの移動なので、余計に時間がかかるのだとか。
一カ月も馬車で移動をしていると、だんだん飽きてくる。
馬車の中は揺れるので、刺繍やレース編みは出来なかった。
なので、余計退屈で仕方がなかった。
短いようで長かった一カ月が過ぎ、やっと皇国に入国することができた。
ただ、まだ皇国に入国しただけなので、まだしばらくは移動が続く。
けれど、王国とは違う空気に、少し気分が上がった。
皇国では、皇城に滞在することになっている。
一応、一通りの知識は入れてからきたが、王国と違うマナーがあったりして、間違わないか少し心配だ。
多少間違ったところで、何か言われることはないと思う。
だが、どこにでも突きたがる人間はいるので、間違えないに越したことはない。
頭の中でマナーをおさらいしていると、ようやく皇城に到着したらしい。
休憩を提案されたが、皇妃の様子だけでも知りたいと頼んだ。
あちらとしても、その方がありがたいそうだ。
長い廊下や階段を進んで、皇妃の部屋にやってきた。
部屋の中には、複数の気配。
誰か皇妃のお見舞いに、来ているようだ。
客の後にした方がいいのかと思ったが、特に何か言われることはなく、中に案内された。




