40.
学園生活二日目。
学園の授業は午前三科目、午後一科目。
随分とゆったりとしたスケジュールになっている。
学園は社交も重視しているので、午後の時間を社交のために空けているのだ。
午前の三科目は、共通科目。
自分のクラスで受ける、必須科目だ。
午後の一科目は、選択科目。
興味のある授業を、自由に受けていい。
なので、午後はその授業がある教室に、移動して受ける形になる。
授業一日目の今日。
午前の授業は、国内歴史、宗教、古代語。
初日から、なかなかのラインナップであると思う。
だが私にとっては、人間のことを知る材料となる授業だ。
国内歴史は、自国の成り立ちから、どう言った歴史を歩んできたかを学んだ。
まず一通り、現在までの流れを説明し、その後から細かい事象を解説していた。
宗教の授業では、偽りの唯一神の話から、教義について。
所々、聖女候補のリズベットから注釈が入っていた。
大神殿所属として、見過ごせなかったらしい。
教師は授業を、やりにくかっただろう。
古代語は、今現在使っている言語とは違う、遠い昔に使っていた言語だ。
古い文献だと古代語で書いているから、そのために学ぶと言うことだ。
午前の三科目が無事に終了し、今はお昼休憩の時間。
食堂で昼食を取るため、各々が移動を開始していた。
食堂は、全学年が揃う場でもある。
と言うことは、つまり、揉め事は避けられないと言うことだ。
「何故この神聖な貴族の学園に、平民なんかがいるのかしら!とっても不愉快だわ!」
大勢がいる中で、放ってはおくわけにはいかない。
溜め息を堪えて、現場に近づいた。
「平民ごときが…」
「王女殿下、もうよろしいのでは?いらぬ注目を集めていますよ。」
「誰よ、お前。」
「セレン・セテラディートと申します。これ以上は、殿下の評判にも関わりますわ。」
「セテラディート公爵の。ふんっ、興が削がれたわ。」
王女は、取り巻きのご令嬢たちを引き連れて、食堂を出ていった。
ご令嬢たちの気配は、教室にはなかった気配。
つまり全員同じクラスではないと言うこと。
言い換えれば、全員高位貴族ではないだろう。
高くても精々、伯爵家。
こちらは公爵家だから、何かあっても対処可能と言うこと。
「大丈夫でしたか?災難でしたね。」
「い、いえ。助けていただき、ありがとうございました。」
声からして、女性。
「あなた、魔力が高いのね。そして、制御が上手だわ。努力なさったのね。あなたのような優秀な努力家が、我が国にいることは、嬉しいことだわ。勉強、頑張ってちょうだいね。」
「はい!ありがとうございます!」
「それじゃあ、失礼するわ。」
あまり長く話しても、別の意味で問題が起こるだろう。
彼女のためにも、関わりすぎない方がいい。
早めに話を切り上げて、気配のない、空いている席を探して移動した。




