39.
ついに、この時が来た。
国王と謁見をしてから、約半年後。
ついに、学園に入学する時が来た。
神界には、学園と言うものがない。
初めての経験なので、少し緊張している。
想像もできない場所なので、期待半分不安半分といったところ。
不安の大半は、王族と留学生の事だ。
私は馬車に乗り、公爵邸の皆んなに見送られながら、学園へと向かった。
私の今日の服装は、学園指定の制服だ。
なんでも、服装で差別化をしないため、と言うことらしい。
貴族の令嬢らしく、手首までの長袖に、ふくらはぎの長さのスカート。
手には白い手袋を着用している。
私が治癒魔法師なので、学園に護衛騎士を連れて行くことを許可されている。
護衛騎士の名前は、グレアム。
寡黙な騎士だ。
本当は護衛がいなくても、自分の身は自分で守れる。
だがそれは知られていない事なので、護衛騎士をつけられても仕方がない。
治癒魔法師は、とても貴重らしいから。
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学園に着いたら、大講堂へ向かう。
新学期の初日は、全学年が大講堂で話を聞くことになっている。
大講堂前で、座る席を教えてくれる。
所属するクラスは、事前に各家に知らせが来ている。
私のクラスはAクラスだった。
父から聞いた話だと、学力順でクラスが決まっていると言うことらしい。
Aクラスは一番上なので、父から頑張ったと褒められた。
まあ、不正はやろうと思えば、出来るみたいだが。
大講堂の席は、クラス順の学力順。
私の席は、一番前の右端だと教えてもらった。
大講堂には、全体の三分の二ほどの席が埋まっている。
私は自分の席で、始まるまで静かに過ごした。
私の隣りに座ったのは、ルオンダーク皇国第三皇女、アンジェリーナ・シア・ルオンダーク殿下。
私より、頭半分くらい背が高い。
漆黒の髪と桃色の目をしている、凛とした雰囲気の女性だ。
同じクラスには、第二王女のリズベット・ジュノ・ドルテア殿下と、聖女候補筆頭のエスメラルダ・カロットがいる。
出来れば違うクラスを望んでいたが、幼い頃から最高の教育を受けていたら、下のクラスになることはまずないだろう。
学園長から挨拶及び諸注意があり、それが終わった後に、留学生の紹介があった。
失礼がないように、と言うことだ。
その後は各クラスに移動し、順に自己紹介をした。
盲目が珍しいようで、なかなか不躾に視線を送ってくるので、その人の方向を見て、微笑んであげた。
びっくりした様子が、面白かった。
確かに盲目ではあるが、サポートなしでも過ごせる。
出来なければ、そもそも入学していない。
今日の予定は、顔合わせだけだそうで、早々に解散となった。
本格的な授業は、明日から行われる。
学園見学をする人もいるようだが、私は人の多さに疲れたので、先に帰ることにした。




