38.
謁見の間で、父と国王が話すのを黙って聞いていると、国王の斜め前の気配から、ずっと視線を感じる。
彼らの事は、先ほど国王から紹介があった。
第一王子、アッシュフォード・ミュゼ・ドルテア。
そして第二王子、ギルバート・ミュゼ・ドルテア。
なぜさっきから、私の事をじっと見ているのだろうか?
盲目が珍しいのか?
私は、目が見えない事を周囲に認識してもらうため、レースの布で両目を覆っている。
公爵家に帰って来てからすぐに、父に話をしたら、よういしてくれた。
「セレン嬢、私たちもとても心配していた。無事で何よりだ。」
「恐縮でございます。ご尽力を賜り、ありがとう存じます。」
「半年後には、学園入学と聞く。第三王子と第二王女が迷惑をかけるかもしれん。無礼は問わないから、容赦無く指導してやってくれ。何かあれば、私に言うといい。」
「お気遣い、感謝申し上げます。」
「私と宰相は、まだ話がある。アッシュフォード、ギルバート、庭園に案内してやれ。」
「「はっ!」」
王子の相手は荷が重いが、仕方ないか。
国王と父の話が早く終わるように祈ろう。
「お手をどうぞ。」
「ありがとう存じます。」
王子たちのエスコートで、謁見の間を退出する。
庭園に案内されても、見えないのだけど…。
花の香りが仄かに漂ってくる。
庭園に着いたのだろうか。
「座れる場所があるから、案内するよ。」
「甘いものは好きか?クレアとクリスから聞いて、用意させた。」
「お姉様たちと親しいのですか?」
「ああ、幼馴染だな。」
「そうだったのですね。」
公爵家と王家だから、親しくても不思議ではない。
むしろ、自然だろう。
「父も言っていたが、弟と妹が迷惑をかけたら済まないね。遠慮せず、指摘してくれて構わないから。」
「あいつらは、はっきり言わないとわからないからな。それに、誰も忠言しないと助長する。」
二人の声は、兄弟の事を話しているとは思えないほど、とても冷たく感じた。
国王も王子たちもそう言うと言うことは、本当に何かあるのだろう。
学園に行くのが、ますます憂鬱になる。
二人の王子は博識なので、時間を忘れて話をすることができた。
思いの外、楽しい時間だったように思う。
しばらくすると、父が迎えに来てくれたので、お茶会はお開きになった。
二人の王子に礼を言い、私と父は公爵邸に帰った。




