02.
私が、セレン・セテラディートに成り変わってから、二年の時が過ぎた。
生活環境を良くするために、使用人と関係改善を頑張った。
目が見えなくなって初めて、人の優しさの大切さに気付いた、と言う設定だ。
見事なまでに、ハマってくれた。
結果、一年が経つ頃には、私を悪く言う使用人がいなくなった。
この二年で、父と母にも会った。
父は相変わらず、私を見て忌々しそうな顔をしていた。
まだ見えない事で、もっとお荷物になった厄介者として見られた。
母は、傷物になったと喚き、私の目の前で役立たずだと言っていた。
後、前妻の子ども、つまり姉と兄にも会った。
一応、心配して見に来てくれた。
クレア・セテラディート、16歳。
セテラディート公爵家長女で前妻の第1子。
宮廷魔法師第13席で、王宮に住んでいる。
クリス・セテラディート、16歳。
セテラディート公爵家嫡男で前妻の第2子。
クレアの双子の弟。
近衛騎士団第3隊所属で、騎士団の寮住まい。
ルヴィク・セテラディート、14歳。
セテラディート公爵家次男で前妻の第3子。
学園在学中で、学園寮に住んでいる。
この三人が、私の兄弟だ。
クレアとクリスは、本当に顔を見ただけで帰って行った。
ルヴィクは事故以降、度々帰って来て、兄としての役割を担おうとしている。
セレンが、事故以降変わった事を知って、態度を変えて来た。
なので、一応ルヴィクとの仲は良い。
……と、まぁ、どうして私が現実逃避しているのかと言うと、私が貴重な治癒魔法と鑑定魔法の使い手だと、国王陛下にバレてしまったからだ。
まぁ、わざとなのだが。
実は、今、国王陛下と謁見の最中である。
そもそも、何故バレたのかと言うと、ルヴィクと共に遊びに来ていた王子殿下に、見られたからである。
ルヴィクと王子殿下は幼馴染で、学園でも仲が良い。
今までは、一切なかったのに、急に家に帰ることが増えたから、気になってついて来た。
それ以降、ルヴィクが帰宅の際は、度々ついてくる事になった。
そんなある日のこと、いつもと少し違う様子の王子殿下を見て、鑑定した。
その結果、蓄積型の毒に侵されているのがわかった。
それを王子殿下に伝えて、かつその場で、治癒魔法で治療した。
そう言う経緯で、王子殿下から国王陛下に話が上がっていき、今回呼ばれる事になったのである。
ちなみに、謁見の間で、父は私が魔法を使える事を初めて知って、驚いていた。
父は、国王陛下と王子殿下から、不審そうな目で見られていた。
私は、その時、笑いを堪えるのに必死だった。
ザマァ見ろ。
「さて、セレン嬢。いつから治癒魔法と鑑定魔法が使えるようになったのかな?」
「階段から落ちて、目が見えなくなった後からです。きっと、目が見えないから、神様がくれたのだと思います。」
「何故隠していたんだ?」
「隠してはいません。皆さん使えると思っていました。」
「そうか。わかった。後は、アランドルと話をする必要があるな。セレン嬢、控え室でしばらく待っていてくれるか?」
「かしこまりました、陛下。」
私は、王城の侍従に促されるまま、謁見の間を退出した。