26.
部下である兵士から、南の街頭に魔族が集結していると言う報告を受けた部隊長。
彼は領主に許可を取り、兵士を引き連れ、南の街頭にきていた。
思っていたほど、人数は多くなかった。
だが、どの魔族からも、強者の気配が漂っている。
なるほど、これは人数の割に脅威だと、気を引き締めた。
おそらく今までの戦場では、同数で倒せると油断したのであろう。
これほどの強者であれば、同数だと、三〜四倍の戦力差があったのだろう。
領主の考えは正しかったのだと、部隊長は尊敬の威を強めた。
こちらの兵士は、魔族の五倍。
用心して多めに連れてきて良かったと、安心した。
そして、これで勝てると確信した。
それが、取り返しのつかない油断だったのだと気付かずに。
「全軍、突撃ーー!」
部隊長が全軍に指示を出した。
前方の兵士が、魔族と接敵した。
次第に、戦場は混戦状態となる。
すべての兵士が、前方の魔族に集中していた。
そんな時。
ドォォォォン
背後の街で、爆発した轟音と暴風が兵士たちを襲う。
驚いて動きを止めた兵士たちに、魔族は容赦無く襲いかかる。
それでも、部隊長が背後を確認すると、彼らの守る街から、火の手と黒い煙が上がっていた。
兵士の実に九割を、この戦場に連れてきていた。
今、街の中を守る戦力は、無いに等しい。
背筋に、冷や汗が流れる。
街は、どうなっているのだろうか?
部隊長は後方半数の兵に、街に戻り防衛するように命じた。
その命令を聞いた兵士たちは、踵を返して街に戻った。
門は開いている。
それなのに、何かに阻まれて入れない。
それならばと、壁をよじ登ろうとする。
しかし、壁に触れることすら出来ない。
火の手が、黒い煙が、威力を増している。
悲鳴が、外にまで漏れている。
見えるのに、聞こえるのに、すぐそこにあるのに、手が届かない。
半狂乱になりながら、兵士たちは壁を叩き、剣を振りかぶる。
次第に、悲鳴が小さくなっていく。
状況が落ち着いたのか、それとも…。
そして、轟音と共に、目の前の壁が壊れる。
姿を現したのは、血に濡れた魔族だった。
「ああああああ」
誰かが、絶望の声を上げる。
いつの間にか街の外の戦場からも、音が止んでいた。
守るべき街が、すでにもう無いのだと悟った。
悟った者から、手から武器を落とした。
戦う意味を失ったのだ。
そんな彼らは、自分たちの意識が消えるまで、ただ茫然と、火の手が上がる街を見続けていた。




