24.
ガロナ侯爵領、攻略完了。
私たちはその様子を、遥か上空から眺めていた。
自然の脅威というものに、恐れを抱かせる光景だ。
「う、わあ…。」
誰もが、引き攣った笑いを顔に浮かべる。
「あなたが敵でなくて良かったと、心から思いました。」
皆と同じ表情で隣にいるエインズワースが、心からそう呟いた。
心配しなくても、理不尽な行為をしなければ、敵になることはない。
小さい悪事くらいなら、わざわざ神が出てくることもない。
だから、安心するといい。
と、言ってみたが、誰も安心してくれなかった。
なぜだろう?
不思議な顔で、首を傾げてみた。
まあ、それはそれとして。
このまま放っておいたら、どこまで流されるのだろうか。
人間がどこまで流されても、その麓で二次災害が起きても、特に気にしないので無視する。
ここの水が捌けたら、奴隷になっていた者たちを解放して、砦に送ろう。
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さて次の攻略場所は、と言いたい所だが、今回は元ミルド国の時と違って、時間をかけることにした。
その方が、人間にとっても考える期間になるだろう。
そして、その恐怖は時間が経つほど、大きくなる。
だから、今回のガロナ侯爵領陥落の知らせが、マーヤ国中に伝わるまで、しばらく時間をおくつもりだ。
それに、それほど戦闘をしていないとはいえ、今までの疲労は蓄積しているだろう。
休憩できる時に休憩してほしい、と考えている。
私はこの期間で、保護された多種族の様子を見ている。
獣人は兵や労働として使われることが多かったから、肉体の疲労はあっても、精神的にはそこまで傷ついていない者が多い。
けれど半精族は違う。
魔法の能力は確かに高いけれど、それ以上に容姿が良い者が多い。
容姿が良いということは、性の対象として見られるということだ。
戦闘能力よりも、そちらの目的で使われていた者も多くて、精神的にかなり傷ついている。
心が戻って来ずに、一人ではまともに生活出来ない者も多くいた。
ローヴァインに聞くと、こう言う事は珍しくないらしい。
半精族だけでなく、見目麗しい魔族や獣人も、その対象になるのだとか。
それを聞くと、つくづく人間の欲望の深さと愚かしさを思い知らされる。
私が出来る事は、一日でも早く、奴隷にされている他種族を救うことだけだ。
そう、改めて思った。




