22.
コラン砦陥落後、獣人たちを回収し、魔族側の砦に送り届けた。
その時の彼らの顔は、とてもスッキリしたものだった。
我慢は良くないから、これでよかったんだろう。
そして魔族側もまた、こんな方法で簡単に攻略できたことに驚いていた。
私は、確かに人間との戦争で勝つことは、前提として考えている。
だからと言って、魔族側に犠牲が出て良いとは思っていない。
勝つことは前提だ。
けれど、魔族側の被害を最小限、できればゼロにすることを目標にしている。
最高神より命じられたのは、人間の裁定より他種族の保護を優先すると言うものだからだ。
もちろん、私が全て一人ですることは可能だ。
だが、魔族側に戦争に参加して貰っているのは、彼らの今までの苦労と彼らの誇り高き姿勢に敬意を評しているからだ。
だから、これからも彼らと共に戦う。
その上で、彼らを守る。
それが私のすべき事だ。
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マーヤ王国との初戦は、うまく行った。
次の目標は、ガロナ侯爵領だ。
ローヴァインから聞いたと所によると、ガロア侯爵家は、マーヤ王国一の戦力を有している。
つまり、それだけ多くの奴隷を所有していると言うことだ。
マーヤ王國の奴隷の七割がここにいるらしい。
是非とも、攻略しなければいけない。
砦の作戦会議室にて、私、エインズワース、各部隊の隊長格が、顔を揃えている。
「次の対ガロナ侯爵領戦では、地形を利用しようと思う。」
今回の作戦は、こうだ。
ガロナ侯爵領は、高い山々が連なっている。
それは防衛に関して、とても強固で、自然の要塞と言っていい。
だから今回は、それを利用する。
山から、侯爵領の要所に向かって流れる川がある。
それほど、川幅が広いわけでもない。
大雨が降っても、氾濫など起こらない穏やかな川だ。
その川は、領主邸を囲っている掘りにも繋がっている。
また、領民の生活にも欠かせない川だ。
けれどその川が、氾濫すればどうだろうか?
一度も氾濫が起こったことがない、穏やかな川。
誰も、想像すらしないだろう。
川が氾濫するなんて。
だから、氾濫の対策など取っていない。
川が氾濫すれば、街はもちろんのこと、領主邸も水没する。
そうなれば、まとめて水が綺麗に流してくれるだろう。
「私は、事前に水の精霊に人間以外の他種族を守るように通達しておく。水魔法が得意な者が、川の上流から一気に大量の水を流して、川を氾濫させる。」
「確かに、全て綺麗に流してくれそうですねえ!」
「面白い作戦だ。それで行こう。」
室内の全員の同意を、得る事が出来た。
作戦開始。