21.
二ヶ所目の部屋は、半精族が多いようだ。
しかも綺麗どころ。
嫌な想像しかしない。
私が目の前に転移しても、誰も反応せずに、ボーッとしている。
〈消失〉
彼らはなくなった異物感に、首や身体を触っている。
自分たちを縛るものがなくなったのがわかったのか、嗚咽を溢しながら涙を流した。
「報復をしたいなら、協力するわ。」
私の言葉に、緩く首を横に振る。
「ここに、居たくない。」
「わかった。あなt名前は?」
「エスピネル。」
「エスピネル、安全な場所、魔族側に跳ばすわ。彼方では、皆んなの事お願いできる?」
エスピネルは、コクコクと首を振る。
その返事を聞いて、私以外のこの場にいる他種族を魔族側の砦に転移させた。
エスピネルが頭を下げたのが、最後に見えた。
ーーーーー
マーヤ王国、コラン砦。
夕食を食べたあたりから、兵士たちの体調が徐々に悪くなってきていた。
そう思っていたら、すぐに動けなくなってしまった。
食中毒か、それとも毒か。
原因を見つけようにも、砦の人間が全て倒れている状態では、原因を調査することも出来ない。
ドカァァァァン
扉が、外から壊される音がした。
そこには、普段奴隷として使ってやっている獣がいた。
「な、何だ、貴様!」
「よお!散々こき使ってくれたなぁ。礼に来てやったぜ。お前ら全員、生きては帰さねぇから、覚悟しやがれ!」
そのと言葉と共に、意識が途切れた。
ローヴァインはその場の人間を全て葬ると、次の場所に向かった。
獣人たちが暴れているのは、何もここだけの話ではない。
そこかしこで、今までの鬱憤をぶつけるように、獣人たちが暴れ回っている。
彼らからしてみれば、散々こき使われた、正当な報復だった。
誰一人、人間は逃さない。
その決意を胸に、次々と殺戮を繰り返していく。
例え隠れても、獣人の鼻からは、逃れることは出来ない。
人間のせいで、何年も苦渋を飲まされてきた。
獣のように、物のように使い捨てられてきた。
その思いが、さらに獣人たちに火をつける。
止めるものは、もちろんいない。
そんな様子を、上空や周囲で、魔族たちが見守っていた。
万が一劣勢になったら、助けに行くつもりで。
だが、この様子を見ると、魔族の出番はないらしい。
見守っていた魔族たちは、お互いに目線を合わせ、苦笑いを浮かべあった。
その後、獣人たちの活躍によって、間も無く砦は陥落するのだった。