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ネメシスの天秤  作者: 氷桜 零
魔族侵攻編
19/25

17.


街を焼いている赤い炎が、夜空を昼のように明るく照らす。

 

作戦が終了した時点で、畑の幻影は消しておいた。

畑を本当に焼かずに残したのは、私たちにも食糧が必要だからだ。

保護する人数が増えれば増えるほど、場所も食糧も多く必要になる。

それなら、ある物を有効活用すればいい。

だから、幻影で済ませた。


人間の死体は燃やす。

 

多種族は頑丈とはいえ、無敵ではない。

怪我をすることもあれば、病気にかかる事もある。


死体を放置すれば、疫病が流行る可能性がある。

その可能性を潰すために、全て燃やしている。


ここには食糧、その他がある。

数日はここで身体を休め、英気を養う。

一旦砦に戻ってもいいが、砦から王都に行くのは手間になる。

ここで数日休憩し、そのまま王都に向かう方が効率がいい。


私は、ここで安心して休めるように、人避けと幻影の結界を張っている。

他所の街から、人が来ても困るからだ。

そしてもう一つ。

王都の上層部にのみ、ドラフ伯爵領陥落の知らせを送っておいた。

これが、新たな火種になればいい。

 

連続の、大規模な神術の行使に、皆んなに心配された。

だが、見た目は人間とはいえ、私は女神だ。

多少制限があるとはいえ、この程度は労力ではない。

心配は無用である事を伝えると、一様に何とも言えない表情をされたが、あれは何だったのだろうか。


まあ、休憩といっても、ここには娯楽がない。

飲んで、喋って、食べて、寝るくらいしかやる事がない。


けれど、皆の士気は高い。

これほどの勝利は、経験したことがないからだそう。

皆んな笑顔で、私も嬉しい。

皆んなと共に、一時の休憩を楽しんだ。



 

ーーーーー


ミルド王国王都。

 

国を動かす中枢にいる者たちにとって、その知らせは激震を走らせるものだった。


アインス侯爵領、ドラフ伯爵領 陥落

生存者 0


「まさか魔族が、ここまで早く動くとは。」


「重要なのは、そこではないだろう。引き篭もりの、突撃しか脳のない魔族が、兵が多い重要な領を落とした事だ!」


「どんどん王都に近づいている。」


「静まれ!」


口々に言い合っていた諸侯を、ミルド国王は黙らせた。


「王都の守備を固め、監視を強化せよ。それから、アインス侯爵領とドラフ伯爵領に偵察隊を送れ。少しでも魔族の情報を集めるのだ。」


「「「御意!!」」」


会議が終わった後、ミルド国王はただ一人、物思いに耽っていた。

魔族の動きが変わった事に、疑問を抱く。


何かが、起きようとしている。

世界を巻き込む、何かが。


その流れに、我が国は既に巻き込まれているのではないかと、不安を拭えなかった。




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