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ネメシスの天秤  作者: 氷桜 零
魔族侵攻編
17/24

15.


アインス侯爵領を攻略後、私たちは休む間もなく、ドラフ伯爵領に向かっていた。

馬で急いで移動したとしても、アインス侯爵領からドラフ伯爵領まで四日はかかる。

しかし、魔族の足なら、二日足らずで到着する。


何故こんなに急いでいるのかというと、アインス侯爵領攻略が知られる前に、ドラフ伯爵領を落としておきたいからだ。

アインス侯爵領の事が知られると、ミルド王国の重要な領地を狙っていると思われ、警戒されるからである。

実際、重要な領地を狙っているのだが。

 

警戒心が上がれば、それだけ攻略に時間がかかってしまう。

今回は、速度重視で行きたいので、急いで移動していると言う訳。


ドラフ伯爵領は、ミルド王国の食糧庫。

つまり、ミルド王国一の穀倉地帯を有している領である。

ここを潰すことができれば、王都に食糧物資が届かず、国民は飢えるだろう。

まあ、今回は兵糧攻めが目的ではない。

食糧危機を招いて、王都民を混乱させるのが目的だ。

まあ、今は王都は置いておいて、ドラフ伯爵領だ。


「で、今回はどんな作戦で行く?」


「食糧である畑を燃やす……フリをする。」


「ふり?」


「正確には、幻影を用いて、食糧が燃えているように見せて、反抗の心を折る。人間を殺すことに変わりはないが、心が折れれば反撃が少なくなる。つまり、時間も怪我も少なく済むと言うことね。」


「……(敵ながら、気の毒な)」


「どうかした?」


「いや、何でもない。」


「決行は、日が暮れてから。その方が、火がよく目立つからね。それまでの数時間、十分に休憩を取っておいて。始まれば、攻略まで一気に叩くよ。」


「「「了解!!」」」



ーーーーー


陽が傾き、今日も各々の仕事が終わった頃。

酒場や宿屋は、これからがほんばんである時刻。


「今日も一日終わったな〜。」


「最近は涼しくなってきたから、畑仕事も楽でいい。」


「一杯やっていくか?」


「今日はカミさんから、早く帰れって言われてんだ。また今度な。」


「残念だ。じゃあまた今度…?」


「どうした?」


仕事の相方が、不自然に言葉を途切れさせたのを見て、もう一人が首を傾げる。


「あれ見ろ、空が赤い?」


「そりゃ、日暮れなんだから、当然だろ。」


「馬鹿言ってんじゃねぇ。そんな赤さじゃねぇだろ。あれ、燃えてんじゃねぇか?」


「はあ!?」


他にも気がついた人がいるのか、赤い空を指差して騒めく。

そこに、慌てたように駆けてくる若者。


「も、燃えてる!!畑が全部、燃えてるんだよ!!誰か領主様に知らせろ!!!」


息を切らせて話した言葉に、誰もが凍りつく。

それは当然。

ここが燃やされれば、冬の食糧がなくなる事。

つまり、冬に餓死する事と同義であるのだから。




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