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ネメシスの天秤  作者: 氷桜 零
魔族侵攻編
12/30

10.


作戦決行日、深夜。


砦の灯りが小さくなり、辺りが虫の声が聞こえるほど静かになった頃、私と第四部隊は、密かに砦に侵入していた。


第四部隊は、隠密行動が得意な部隊。

灯りがなくても、自由に暗闇の中を動き回れる。

 

私以外は、二人一組で行動する。

目標は、奴隷の発見と解放。

奴隷が見つかれば、私の所に合図が来る。


リトヴェルクから、分かる範囲で砦の構造を聞いている。

そして、奴隷がいそうな場所も。


私は今、一番奴隷がいる確率が高い場所に、来ている。


日当たりがなく、ジメジメした地下。

音を立てずに、入り込む。

 

血の匂い、汚物の匂い…。

色々な匂いが混じった、環境の悪い場所。

そこに、彼らはいた。


できるだけ身体を縮め、丸くなって寝ている。

怪我や病気をしている者もいるようだが、治療も手当もっしてもらえていない。

彼らの身体はろくに食べていないのか、痩せ細ってガリガリである。

本当に酷い環境だ。


まずは、音が漏れないように、空間を隔離する。

気配に敏感な一部が、目を覚まして警戒する。


「こんばんは、初めまして。私は魔族側の者よ。今からあなたたちの首輪と奴隷紋を消すわ。静かにね。」


流石に私が言葉を発すれば、全員が目を覚ました。

私の言葉を理解すると、困惑した表情で、仲間と顔を見合わせている。

彼らが落ち着くまで待っていたいけれど、そんな時間はないので、さっさと行動に移す。


〈消失〉


首輪と奴隷紋がなくなると、彼らは自分の身体を触って、何度も確認している。

声もなく、涙を流している者もいる。


「今から全員を、魔族領に送ります。そこには、先に保護された者たちがいるから、安心してちょうだい。」


〈転移〉


これでまず一ヶ所、完了。

万が一のことを考えて、幻影で奴隷がいるように見えるようにしておく。

明け方まで、保てればいい。


次は、魔族から連絡が来た場所へ向かった。


二ヶ所目。

一ヶ所めとそう変わらない、環境の悪さ。

一ヶ所目と同様に対処する。


その晩、合計四ヶ所の奴隷を解放した。

最後に、漏れがないかもう一度確認する。


そして、バルシュミーデに、任務完了の合図を送った。


第四部隊には引き続き、砦内に潜伏してもらっている。

私は戦況を確認できるように、見えにように姿を隠しながら、上空に待機している。


もうすぐ、夜明け。

戦闘、開始ね。




後に、この日の出来事は、魔族側の最初の侵略行為であり、歴史を大きく変えた出来事として、人々の記憶に、恐怖と共に強く刻まれるのだった。




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