08.
竜と人の姿を持つ、竜人であるバルシュミーデの背に乗って、魔王城にやって来た。
先ぶれを出していたため、スムーズに謁見することが叶った。
保護した多種族は、取り敢えず砦に居てもらっている。
話し合い次第で、どこに移動するかわからないからだ。
人間側を壊滅させたから、当分は追撃してこないだろう。
あれだけの被害を出せる存在がいるのだ。
慎重に慎重を重ねるだろう。
一応、念の為、砦を含んだ一帯は、結界で人間が入れないようにした。
魔王城は、人間の城とそう変わらない外見だったが、それよりも更に大きかった。
内装は、黒を基調としているが、重厚な上品さがあった。
どこの扉も、多種族を考慮しているのか、見上げるほど大きい。
魔王城の謁見の間には、玉座に座る魔王と、数名の魔族がいた。
好意的でもなければ、敵対的でもない、そんな雰囲気だ。
協力してもらえなければ、それはそれで動くだけである。
魔族の許可は必要ない。
「よく来られた、あなたのことは何とお呼びすべきか?」
「セレフィレーネと。最高神の命で参りました。バルシュミーデから話は聞いていますか?」
「凡その事は把握している。詳細を聞いても?」
「ええ。最高神より命じられたことは二つ。人間以外の多種族の保護と人間の裁定です。それらをなすために協力いただければと。」
「保護した他種族を、フリューゲルで受け入れ、フリューゲルの領土を取り戻すために、戦争に協力したい。とのことだったな。こちらとしても、手をこまねいていたところがある。ご協力いただけるなら、助かる。」
協力してもらえるようだ。
これで、動きやすくなった。
「まずは先の戦闘があったミルド王国からだな。今回の助力で壊滅状態とのこと。この機会に戦線を押し返し、静かにさせたい。バルシュミーデと協力してくれ。」
「わかりました。」
無事に、魔王との会談は終わった。
来てすぐではあるものの、再びバルシュミーデに乗って、砦へと帰還した。
帰ってきた私を見て、リトヴェルクはホッとした顔を見せた。
どうやら心配をかけていたようだ。
何はともあれ、魔王との会談は成功したと言って良いだろう。
会談での事は、リトヴェルクたちにも共有した。
保護した者たちも、やっと落ち着けるので安心していた。
明日は、ミルド王国攻略のために作戦会議を行う予定だ。
そこに、私とリトヴェルクも参加する事になった。
今日はこのまま砦に泊まり、明日の作戦会議に備える事になった。