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調査対象

作者: 雉白書屋
掲載日:2025/01/05

 宇宙空間を航行する、とある宇宙船。その任務は惑星の調査だったが、今、船内は未曽有の恐怖に陥っていた。


「せ、船長! ああ! い、い、ばばばっばばばば!」


「ど、どうした! まさか、お前もなのか……!」


「いえ、違います。ただ怖くて震えているだけです」


「紛らわしいことをするな!」


「す、すみません。でも、いったい何が原因なんでしょう……」


「わからん。ただ、悠長にはしていられん。もう三人もやられている。解剖の結果、ウイルスではないようだ。あの惑星に何かあったとしか考えられないのだが……」


「そうですね。騒ぎが始まったのは、調査船があの惑星からこの母船に戻ってきてからですから」


「そうだ……ああ、思い返してみれば、妙な点がある」


「え、何がですか?」


「現地の生物を捕獲して調べるはずだったのに、調査隊は何も捕まえてこなかっただろう。何か関係があるのかもしれない……」


「いえ、私が聞いた話では、確かに捕獲したそうです」


「なに? それは本当か?」


「はい。ただ……いつの間にか、消えてしまったとか」


「馬鹿な、見失うほど小さい生物ではないだろう。規定通りの対象を捕獲したんだろうな?」


「そのはずですけど……詳しく聞いてみますか? まだ無事な調査員がいるはずです」


「ああ、急ごう。自分の手を喉に突っ込む前にな」


 二人は慌ただしく船内を走った。そして、生き残りの乗組員の元へたどり着くと、船長は膝を抱えて震えるその乗組員に問いかけた。


「君だね、あの星に行ったのは。詳しく話してくれ。捕獲対象をどう発見し、どう捕まえた?」


「は、はい……わ、我々はあの星の夜、上空から捕獲対象を捜索していました。規定通り、都市部から離れた場所で。しかし、見つからず、移動しようとしたそのときです。古びた住居に現地生物を確認し、急いで捕獲装置を作動させました」


「待て。その生物は住居にいたのか? どうやって外へ誘い出した?」


「それはその……急いでいたので、住居ごと……」


「なんだと? 建物を解体しながら吸い上げたというのか? 確かに迅速な捕獲は求められているが、規定には目立つ行動を禁じるともあったはずだぞ」


「す、すみません。ですが、周囲に生体反応はありませんでした……そう……」


「なんだ?」


「……いえ、なんでもありません。それで、その生物を捕まえたのですが、突然……ふっと消えてしまって……」


「消えた?」


「はい……」


「だから、そんな馬鹿なことがあるか」

「船長、立体映像の類だったのでは?」


「あの星の文明レベルを考えれば、それはありえな……ん?」


 船長は不意に天井を見上げた。部屋の照明が突如として点滅を始めたのだ。そして――


「あ、あ、あああぁぁぁ!」


 乗組員の一人が白目を剥き、自分の手を喉の奥に突っ込んだ。まるで滑り込むように、その腕はみるみるうちに奥へ消えていく。二人は恐怖を感じつつも何とか正気を保ち、止めようとした。


「やめろ、やめないか! おい、力ずくで止めるぞ!」

「せ、船長! あなたの後ろに!」


 悪寒が船長の背を駆け上がった。その直後、耳元で何かが囁く声が聞こえた。 

 しかし、それは聞き慣れない異星の言葉だったため、船長には理解できなかった。


『帰して……帰して……私を地球に帰して……』

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