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ダンジョン作りにはSayがいる!!  作者: 西井シノ@『電子競技部の奮闘歴(459p)』書籍化
{転生編}☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
7/28

俺のイモムシ

「何よ、閃いたって。」


呆れたような視線へ

俺は幼い人差し指を向ける。


「ルタルちゃん。モンスターを誘導し、餌を与えることは出来るんでちゅよね?」


「まぁ。」


「それなら....第三層中のイモムシなりミミズなりをここに集めて欲しいんでちゅ。そして、集めた虫たちをモンスターのように育成するんでしゅ!!」


「えぇ...まぁ出来るけど。どう育成するのよ。」


ルタルちゃんは引き気味に問う。

待ってましたその質問。

俺は満を持して彼女へ答える。


「第3層を{食用土壌動物ダンジョン}にするんでちゅ!!」


「えっ......えぇ、なんて?」




――――――――――――


{一か月後}


「出来たわよ。」


「やればできるじゃねーでちゅか!!」


「なんか上からね....」


「凄いでしゅ!!流石ダンジョンマしゅター!!」


「そ、そりゃあ、虫程度ならモンスターよりは簡単だもの。......でも、中級冒険者の残していったマナは全て使い切ったわ。穴を掘ればマナは減る。虫を鍛えてもマナは減る。手作業と魔法を織り交ぜて作った努力の結晶、やれる範囲の限界よ。」


なんとも勇ましい親方だろうか。

俺なんて木のシャベルすら重くて重くて。

さて、

残る離乳食は二か月分。

しかしこの完成度なら、

それを食べきることも無いかもしれない。


「完璧でちゅ!!」


一か月前、俺がルタルちゃんに提案したダンジョンは、

層のように積み重なる4畳半×4つ分の空間で完成した。


― ―【食用土壌動物ダンジョン概要】― ―

場所:第三層中央部・ダンジョンコアの隣。

構成:4つの小さい区画が縦に接続。

   生態系が完結するように四面の壁がある。

広さ:4畳半

高さ3m10cm

消費ポイント:-100


{区画説明}

区画1「バイプッシュ有機物ルーム」

一言コメント

「ザックリ言えば、トイレ。ザックリ言えばね。」

・広さ4畳 

 高さ1m程度

・4区画中もっとも広い。

・1歳児の糞尿や中級冒険者の遺体など有機物と水分を捨てる空間

・階段で少し登り、ボットン便所の様にゴミや糞を投下する。

・投下口には虫を寄せ付けない蓋がある。

・臭い。

・他の虫が集まる程度の通気口あり。

・通気口には一度入った虫が出られない返しが付いている。


区画2「分解層」

一言コメント

「ザックリ言えば、微生物たちの家。」

・広さ4畳半

・高さ10cm程度

・区画1の床部分の土である。

・ミネラルの石が散らばっている。

・微生物たちも調整済みで分解速度がかなり速い。

・微生物たちは四方へ動き回る習性を獲得している。


区画3「選別の間。」

一言コメント

「ザックリ言えば、モンスターたちの家。」

・広さ4畳半~半畳

・高さ1m程度

・ルタルちゃんが配合と調整を繰り返して生み出したイモムシが住んでいる。

・接続させた土壁より僅かに地下水が染み出している。

・区画2で栄養価の高まった分解者を捕食。

・特殊なサラサラ砂で出来てる。

・10cm程に太ったイモムシは自重で下へと落ちていく。

・下方には下に落ちたイモムシが誘導される丸い隙間がある。

・メスは太らず世継ぎを産み出す傾向に調整。


区画4「採集層」

一言コメント

「ザックリ言えば、滑り台。」

・広さ半畳

・高さ 最高1m~最低30cm

・ツルツルしていて清潔な床。

・イモムシは丸い隙間からニュッと顔を出す。

・斜面になっており、イモムシが転がる。

・地下水の通路を併設。ちょろちょろ流して土を落す。

・採れたイモムシは生でもイケる。

・規格外品は区画3へ。

・人間が食べたら、区画1へ。


― ― ― ― ― ― ― ―


{数日後}


――ニュッ........ポト


「む。」


俺は転がり落ちてきた試作品1号を手に取る。

少し洗うと真っ白で丸々とした身体がぷにっと弾んだ。

表面はツヤツヤではち切れそうなほどプリプリしている。

体長は10cmほど。

正直に言えば、


「食べたくは、無い....」


「折角、頑張って作ったのよ?!」


「分かってまふ!!」


欲を言えば

食欲をそそる見た目にしてもらいたかったが

どう足掻いても芋虫だ。

デッカイ蜂の子とでも言おうか。


「生でイケるんでちたっけ?」


「貴方がオーダーした生食って、要は人間の人体に害が無いようにってことでしょ?一応そのために第3区画は殺菌効果のある砂と土の混合――」


『ガァブッ....シュ....!!』


「ヒィ、喰った???????」


――アレ、またなんかやっちゃいました?

というわけで、イモムシ討伐。


「キッモー、ウゲェー。いやいや、そもそも食べるために作らせたんでしょうけど、それは知ってるんだけど、いざ生きてるイモムシ生で食ってんの見るとマジでキモいというかそこまでするかっていう感覚にさいなまれるっていうか、ひくわー。」


俺は乳歯で必死に肉を磨り潰して、

トロトロにしてから喉に流し込む。

正直言って味なんてどうでもいい。


イモムシダンジョン案が脳裏に浮かぶ前は、ルタルちゃん製の滅菌された土砂をクッキーみたいにしてそのまま食べようかとも考えていた(旧:ラング土砂案)。

そのくらいただ生きるための光明が見えれば、それだけでよかった。差し迫る食糧問題を解決できればそれでよかった。不味いキモいはその他の副産物だ。だから味なんて何でもよかった。食感なんて何でもよかった。けれど....


「美味い......」


久々に食べる大量のたんぱく質が本能に訴えかける。しかしそれ以上に、素材が旨い。生前食べた蜂の子なんかは「甘くてクリーミーな味」「ナッツのような風味」「ポップコーンのような味」と評されていたらしいが、このイモムシは例えるならば熱を通した『肉厚の牡蠣』。それでいて海臭さが無く、鼻に抜ける香りは濃厚なピスタチオに近い。


「美味い....でしゅ....」


「な、泣いている....?」


このイモムシを焼きたい。桜のチップで燻したい。甘辛い味付けをして炭水化物でかき込みたい。タバスコかチーズソースに絡めて、シュワシュワのドリンクと合わせたい。幼児の舌にも合うこの珍味を最高の状態で堪能したい。たったそれだけのためにも、この地下ダンジョンから脱出する価値がある。


「そ、そんなに美味しいの....?」


小松シェフゥ....じゃなくて、ルタルちゃん。このイモムシは.....ほっぺたが落ちるほど、美味しいでしゅ......ありがとうございましゅ.....」


しかも、捕獲レベルが0.01くらい。


「そ、そう。喜んでもらえて何よりだわ......」


大きくなりたければ喰らえ。

そんな言葉を思い出す。

このイモムシは栄養だ。

味覚が俺にそう告げる。


遂にマナは枯渇したそうだが。

何はともあれ

重要な事実がある。

食糧問題、一応解決です。


そう言えば余談ではあるのだが。

トイレをしている時に気付いたことがある。


俺。

チンチン、付いて無かった。
















{ダンジョンステータス}

内部コア

DP(ダンジョンポイント) :0   ー100

MP(モンスターポイント) :50  +50

RP(リソースポイント)  :56  +50(変換)+5(外部流入)

タイプ:多層城地下型

構 成:全6層  

状 態:廃ダンジョン、???

称 号:???

危険度:レベル1(G級)


挿絵(By みてみん)

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