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ダンジョン作りにはSayがいる!!  作者: 西井シノ@『電子競技部の奮闘歴(459p)』書籍化
{転生編}☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
6/28

ステータスウィンドウ

俺達が今いる場所は、

第三層、ダンジョンコア。

全六層中三番目の層に存在する小さな小さな

ルタルちゃんの居住区みたいなところらしい。


大木の根が垂れ下がり、

唯一のインテリアとして機能する。


ダンジョンコアと言うからには、

もう少し小さくて丸い、

コントローラーのようなものを思い浮かべていたが。


実際には、

小さくて丸い土の区画だった。

同居人として、たまに芋虫が転がっているが

貴重な栄養源として採集している。

一歳児ワレながらワイルドだ......


第一層と地上へ繋がる通路は、

ルタルちゃんが中級冒険者を閉じ込めた際に

ダンジョンの魔力が枯渇して崩落したそうだ。


今は背が低くて登れないが、大人用カウンターのような机の前面には、

ひび割れたディスプレイとスピーカーが見える。

地上から持ってきたジャンク品の備え付けだろうか。


その他は土塊で出来た家具ばかりだ。

グノームはあんまり物欲がないのか。

それともこの娘がミニマリストなのか。



どちらにせよ長居は無用だろう。

それじゃあいっちょ、何が出来るかを確認しますかね......


俺は右手を前に突き出し虚空に唱える。


「しゅてーたす、おーぷん!!」


「な、な、な、なんなのよそれは⁉」


ルタルちゃんの驚きを隠せない顔を尻目に、俺は目の前に現れたステータスウェンドウを触り、残された100ポイントをルタルちゃんの知らない方法で都合よく、上手にやりくりして、なんだかんだで古今東西の最弱勇者から最強勇者までをこのダンジョンに集め、トントン拍子で世界に轟くようなダンジョンを構築。そして最終階層で待つ師匠と再会。あの日追い詰めた犯人の野望を今度こそ暴き、師匠と共に現世へ帰ってハッピーエンドを向かえたとさ。おしまい。


「ちっ。――ぺッ!!」


なんてことを妄想しながら、

俺は地面に唾を吐き付ける。


「本当になんだったのよ、今の時間......」


「俺なりの消去法でゆ。ここは甘くないタイプの異世界でちゅ。めんどくせー。」


「はぁ......」


これでも生前は探偵助手としての推理力を磨くために、

あらゆる分野の本を読んできた。

もちろん異世界ものの転生ファンタジーも

守備範囲としてカバー済み。


「ところでルタルちゃんは、どうやってダンジョンを管理してたんでしゅか?」


俺がそう言うと、ルタルちゃんは地面に沈み込み

顔だけを半分覗かせた状態で見せつけるように止まる。

それから身体全てを地面に沈ませ、

最後には逆さづりの状態で天井から顔をのぞかせた。


「私達グノームは土の精霊。土にまみれた自身のナワバリを透過で移動できるのよ。すなわち、ダンジョンマスターなら自分のダンジョン内ならすり抜けて移動したり、壁越しに監視できる。あと、土に含まれたマナを使い放題。」


「なるほど、それがダンジョンマスターの権能ということでちゅか。話が読めてきた。ルタルちゃんはダンジョン作りに失敗して人間に力をかしダンジョン復興を達成させようとしている。よぉ~し、ルタルちゃん。その権能を僕に与えて.....」


「無理よ?だってアンタ、人間ヒューマンじゃない。」


ルタルちゃんは困り眉をまた作る。


「無?...じ、じゃあ、ダンジョンマスターとしての権限ってなんでちゅか?」


「え、いや普通に。私のダンジョンを勝手に『イジって良いよ』っていう権限だけど?」


――まさかの、許可オンリー!!


俺は衝撃で身を仰け反る。

ついでにちょっと鼻水も出た。


「ただの許可だったんでちゅか!?」


「あ、当たり前でしょ。......あ、もしかしてアンタ。他人の家に勝手に入ってお風呂沸かしたり、勝手に冷蔵庫開けたりするタイプ??で、中のケーキまで食べちゃったりして。うーわ、いるのよねそういうの。友達の家だからと言って、自分の家と勘違いしちゃうタイプ。」


「そんなスケールじゃにぇーじゃん!!」


襲い来る、足元が崩れていくような落胆。

ルタルちゃんの困り眉が野沢温泉のゲレンデ並みに傾く。

困ってる困ってる。凄い困ってる。

大丈夫、俺も困ってる。

というか絶賛奈落へ滑ってる。

滑ってると言えば雪、雪と言えば今年の冬は物価の高騰からクリスマスケーキはご家庭で作った方が外で買うよりも安上がりになるそうです。ちなみにショートケーキの材料費の半分はイチゴだって知


「おーい。戻ってこーい。」


「......ってたカナ。......なんか、思ってた経営やつと違う......」


「と言われましても。知り合いのダンジョンマスターもそんなもんだし。ダンジョンマスターなんてみんなこんなもんよ。地道に地道に土壌整理して、種植えて、モンスターの肉柔らかくする飼料を与えて、あっちへコッチへ誘導して。」


「農家シュミレーターかよ......!?」


「農家?.....ねえ。モンスターは家畜じゃないわ、大切な家族よ!!」


「それ愛情が深すぎる農家が言うやつ!!」


い、いいや、しかし......

確かにダンジョンメイクファンタジーには矛盾点が多い。

そんなこと出来るならあぁすればいい、こうすればいいが堪えない世界。

もしも融通が滅茶苦茶効くなら、

よほどのバカでない限り、廃ダンジョンになんてなりやしないだろう。

否、そんなものはファンタジー全般に言えることだが。


「何よ。文句ありげな目して。」


「うん。転生とは言うけれど、とんだ場所に転び生まれてしまったでしゅ.....」


なんだろう。ムズムズする。

ハガレンが始まると思ったら銀匙が出てきた気分だ。

面白いんだけどね。銀匙も。


「転がって泥だらけになりながら生きる。それが転生でしょ。」


クソかっけぇや。

こいつ、めちゃくちゃニートなのに。


「ほ、他に出来る事はないんでちゅか......?」


とかく喫緊の課題は底を着きかけている俺の食料だ。

これを解決しないことには俺のゼフが浮かばれない。


「そ、そうね......あとは、ダンジョンのマナを利用して広範囲の土を柔らかくしたりできるわ。そうやって崩落を引き起こし、中級冒険者は閉じ込めたの。あとー、土壌の栄養価をイジれたり、ダンジョンに居る生物の場所が分かったり。鉱物の場所が分かったり、水源を探すのが得意だったり......アンタ、本当にグノームについて無知なのね。」


「えぇ....俺は無知で無能な若人でちゅ....」


「えー、なんか期待外れだわ。」


「一歳児への期待値バグってりゅだろ。」


ルタルちゃんは呆れたように溜息を吐く。

こぉれ分かった。

ダンジョンマスターがグノームなんじゃなくて。

グノームがダンジョンマスターをしているんだ。


そしてこの世界のダンジョンマスターは、

きっとサンボマスター的な勢いで命名されている。

ダンジョン×マスター。え?強そうじゃね?

的な。


「まあ、一歳児でもなんとか私に貢献できるでしょ。あと、何日で離乳食が尽きるか分からないけど、できっこないをやらなくちゃね。」


ドンピシャで――グ~ッ!!っと腹が鳴る。

無理矢理、消費予想日数を増やしているが、

正直一日あたりの量すら少ない。

腹が減った。。。


あと、

ちょっと寒い。

え、もしかして俺。

詰んだ?


「世界はそれを「投げやり」と言うんだぜ。」


「レッツ、ヒューマニティ!一人で頑張れ♡」


「ミラクルを、キミとおこしたいんでちゅ。」


「うーん。NO!!」


そしてそして、

俺はきっと、もうじき餓死で死ぬのだろう。

絶望的密室ダンジョン。

ある意味、探偵らしい最後なのかもしれない。


......って。


「――ふぁあああ!!」


「な、何よ急に....」


「......閃いた。」


この窮地を脱する糸口が。


















{ダンジョンステータス}

内部コア

DP(ダンジョンポイント) :100

MP(モンスターポイント) :0

RP(リソースポイント)  :1

タイプ:多層城地下型

構 成:全6層  new!!

状 態:廃ダンジョン、???

称 号:???

危険度:レベル1(G級)








挿絵(By みてみん)

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