ダンジョンマスター
{旧 章題:廃ダンジョン脱出編}
{???}
誰が捉えた現の景色か
はたまた夢か幻か
彼の地に穿たれ拓いた大穴は
廃れた世界に光を墜とす
緞帳を開いた、舞台が如く。
―――ダンジョン作りにはSayがいる!!
{転生編}
ほぎゃあぁぁぁぁ・・・!!
――――ほぎゃあああぁぁ・・・!!
・・・ほぎゃあああああ!!
―――――――――
私はダンジョンマスター。
伝統あるこの地下ダンジョンの支配者だ。
名前はルタル・グノーム。
身長は100㎝とちょっと。
体重は22kg。
チャームポイントは円錐の三角帽子。
種族で言えば、まんま『土の精霊』族である。
「ほぎゃあああああ!!ほぎゃあああああ!!」
「・・・」
・・・さ、さて。
私とこのダンジョンの
ざっくりとしたプロフィールを説明するならば、
1000年は遡る必要がある。
長いぜ。
(さぁ、ルタルちゃんの~?楽しい!?年表コーナー!!)
友達がいないので、今日も心の中でひとり呟く。
☆ ☆ ☆
【年表コーナー】
1000年前 大きなお城が誕生。その地下に巨大牢獄や、王様専用の秘密の脱出口が作られる。
|
{カナビ狂王の独裁時代など。圧政。}
|
800年前 市民革命
|
{お城が魔術学院になる。}
|
700年前 お城の地下がダンジョン化
|
{モンスターなどの無法地帯に......}
|
600年前 初代ダンジョンマスター誕生
|
{???(空白の100年間)}
|
500年前 二代目ダンジョンマスター誕生(わたしの祖父)
|
{パクス=ドミナス(400年間の繁栄期)}
|
100年前 三代目ダンジョンマスター誕生 (わたし)
|
{なんか、急に人間に攻略され始める。}
|
現在 廃ダンジョン化 ルタルちゃん、メンタルブレイク。
☆ ☆ ☆
・
・
・
というわけで......
意気揚々と祖父から継いだダンジョン経営という生業を一代で廃ダンジョンに追い込んだ絶世の無能というのが、ザックリとした私のプロフィールである。
「えへへw」
でもでも.....
私だってただの出来損ないじゃない。
最初は叔父の言う通り、
オーソドックスなダンジョン経営を心掛けたんだ。
ダンジョンの一番奥には、
人間たちが喉から手を伸ばしても欲しがるようなお宝を。
ダンジョンの端々には、
旅路に見合う様なほどよ~く嬉しいお宝を。
こうして、
人間の冒険者が訪れたくなるような
目的を作ってやった。
それに、
モンスターたちにも人間たちにも、
互いに争わせやすい環境を作った。
ゴブリンのような知能の高いモンスターらはその典型だ。
ゴブリンらは輝かしい鉱石を身に纏い、
自分の権威をまわりにアピールしている。
ボスゴブリンの{ポゴ}なんかは、
たくさんのネックレスや指輪でいつもギラッギラ。
いっぽう人間たちも、
ダンジョンの宝石や装備などは
ギルドで換金できるために欲しい。
そして両者は互いに、
倒せば道具や輝かしい宝が手に入るという
対立の相関関係で睨み合う。
そして!そして!
モンスター同士にも
互いに争わせやすい環境を作ってやった。
腐敗したゾンビ族のモンスターが放つクッサイ臭いは、
ダンジョン外部から来る虫系のモンスターを誘い招く。
もちろん内部でも。
草食モンスターの餌となる木の実や牧草を増やして
彼らの身体が美味しく育つように調整。
戦いが起きる理由を作ってやった。
.....ん?
なぜそんなことをするかって......?
理由は簡単だ。
ダンジョン内のポイント(=マナ)が増えるからである。
当時の私には老齢だった叔父の話は、
よく分かってはいなかったが。
どうやらダンジョンとは、
大きければ大きいほどイイ。
.....というワケでは無いようだった。
重要なのはマナによる損益分岐点。
すなわち、
コストをリターンが下回らないようにする采配である。
大前提。
ダンジョンのような超自然的空間を
ダンジョンたらしめているのは
冒険者が使う魔法だったり、
モンスターが使うマナたっぷりの攻撃だったりするわけで。
それが無ければ、
ダンジョンはお宝や鉱石、薬草を生成せず、
ただの洞窟以下になってしまうどころか、
ダンジョンそのものの形を維持できず、
崩落してしまう可能性すらあるのであるのであるのである。。。
そして私は土の精霊。
このダンジョンにあるマナが増えれば増える程、
私は高位の存在へと崇め奉られ、
その噂が広まれば信者が集い、
上手くいけば土地神様として
何もせずともマナがあつまる好循環が完成!!
するわけなのであるであるであるである。。。
そんな漠然とした期待と希望を胸に
ダンジョンマスターとしての権限を引き継いだのだが、
私が設計したダンジョンは普通に【崩壊】した。
【停滞】したのではない。
【崩壊】したのである。
「・・・ふへッw」
{600年の歴史を誇る伝統あるダンジョンを、20年で崩壊させた!}
この事実にルタちゃんはメンタルブレイク。
......でもね?
私の名誉のために補足するならば、
私がダンジョンマスターになってからしたことと言えば、
マジで普通のことをしただけ。
1~3層のモンスターを育成する。
↓
1~3層に新たな宝を設置する。
↓
外から人間を呼ぶ。
......たったそれだけ。
だのに!
たったこれだけであるのに崩壊したこの世界は、
もはや誰がやっても崩壊したんだと思う。
最後の方は、
ちょ~っと焦って
ポイントを無駄遣いしたけども......(反省)
しかし最盛期から緩やかに衰退していたとはいえ、
6階層にも及ぶ権威も伝統も価値もある、
そんなダンジョンを崩壊させたショックは大きい。
以後。
以降。
以来。
それから。
その後から。
私は80年くらい穴倉ニートをしてきたわけだが。
ここ最近。
廃ダンジョンの一部が
人間たちの倉庫の様に使われ始めた。
そこで私は最後に残った
残りカスのようなポイントで
人間を拉致することにした。
当てつけではない。
微精霊たちの間でも、
「人間がダンジョンマスターをした」
という話も囁かれているし、
それが成功しているという話も(盗み)聞いている。
どうやら遠くから召喚するという方法もあるみたいだが、普通に向こうからノコノコやってきた人間を拉致ったほうがコスパがいい。
正直、80年前のことがトラウマで今でも夢に見るほどなので、この際、人間に権限を与えてやるというのも面白いと考えたわけだ。
久々にダンジョン外部の事情も知りたいし。
冒険者目線のアイデアも欲しい。
それに。
もしも使えないなら、殺せばいい......
それから私は計画を実行に移し。
―――――――――
そして今に至る。
「ほぎゃあああああ・・・」
明かりの無い土塊に、
「おい。」
赤子が一匹。
「ほぎゃあああああ!!」
「うーん。」
「ほぎゃあああああ!!」
「・・・」
「ほぎゃ師匠ォオオオオオ!!」
「うお、喋った。キモ。」
閉じ込めたのは経験値の高そうな中級冒険者1匹だった。
......しかし。どうしてこうなった。
{ダンジョンステータス}
内部コア
DP(ダンジョンポイント) :0
MP(モンスターポイント) :0
RP(リソースポイント) :0
タイプ:城地下型
状 態:廃ダンジョン、???
称 号:???
危険度:レベル1(G級)
TIPS
『TIPSコーナーとは?』
・シリーズ恒例でゲームのヒントのようなTipsを後書き欄に載せることがある。これは作品の世界観を紹介しきれないところ、なおかつネタバレの無い範囲で補足紹介していくコーナーである。
基本的には主人公たち主要人物が、その作品の中で(ここで言う『ダンジョン作りにはSayがいる』)既に見聞きしたであろう内容を読者にも共有する程度の紹介をする。』
創作の励みになります。
評価・ブックマークをお願いします。