コボルト編
{ウェスティリア魔術学院ギルド}
額縁に飾られた写真には歴史が宿っていた。
この街の、ザ・ウェストの歴史である。
この歩みが、積み上げたものが結果になる。
故に歴史がどうであれ、忘却は罪であろう。
捏造や改変は、ともすれば大罪である。
だから俺は心の墓石に名を刻む。
「リエラ.....テルン.....」
レイチェル・アレクサンドロスの遺体は、ジン教授の手によって運び出された。
故郷で埋葬されたとのことだ。
つまり俺たちの歴史は伝えている。
あれだけの死闘を経て、ダンジョンポイントの見返りはほぼ皆無であったと。
「小僧は勇敢だなぁ。」
ワシワシと、俺の短髪へ帽子のように大きな手が被さり動く。
「あれだけの事があったってのに、保健室を抜け出してここに来たってか。」
「・・・連れて帰るの?」
「お前の気が済んだらな。あるいは、今の俺なら返り討ちにされちまうかもな!!なはは!!」
ウェスティリア魔術学院ギルド本館には、大商人トレイダル家から武器を卸売する武器屋がある。店主の名はエンジ、冒険者の端くれである。
隆起した上腕に胸筋。
包帯に包まれたボロボロの身体。
手の平のタコ。
数多ある武器や魔道具を使いこなし、手入れまで出来る冒険スタイルは貴重な存在である。
どうやら店番のくせに数多あるパーティーへの誘いが後を絶たないとのこと。
つまり彼は学院からのクエストを受領したのだ。
タイトルは恐らく――脱走した生徒を連れ戻せ。とか。
「なははは!!!なはっ!!」
俺はその大きな手を払いのける。
昨今の戦時下においてギルドに残る登録冒険者は、概ね4パターンしかいない。
①愛国心の無い者。
②傭兵稼業に興味の無い者。
③自警を兼ねて街の経済に寄与するもの。(先生たちはココ。)
④そして怪我人だ。
「あれは何?」
暇そうな受付嬢が立つカウンターの上。
大きな木のパネルがカラカラと回る。
初めて見る掲示板。
「あぁ、あれか?――ダンジョンランキングだ。」
「ダンジョンランキング?」
「あぁ。ダンジョンギルドの多くがアレを設けてるんだ。発行してる大元が秘密主義のノスティア領にあるギルドなもんで、不透明な部分も多いが。。。」
ノスティア王国。
情報統制の激しい独裁国家と聞いている。
「しかし物は使いよう。ネコの手も借りたい。あるいは、、、何にせよ故郷に帰る冒険者達は参考程度にアレを見ながら、次の目的地を決めていた。風の噂によれば土の精霊たちが視察した情報の開示らしい。如何せん不具合が多いもんでな!間違った情報を伝えない為に、メンテナンスが出来る武器屋か道具屋がいる時にしか回さねぇのよ。」
へぇ、土の精霊たち。。。
退院したら.....ルタルちゃんに聞いてみよう。
「実際、ランキング上位に位置するダンジョンにはより多くの冒険者が集っていく。流行りってやつだな。なんせ換金額の高いもんが多くあるんだと。無いこともあるそうだがな。。。なはは!!でも確かに調べて見れば、上位に位置するダンジョンには人々を惹きつけて止まない魅力ってやつがあるんだよな。例え人が多く死んでたとしても。.....まぁ今はこんな世の中だからなぁ、誰も目もくれねぇ訳だが。」
「魔術学院の地下ダンジョンもあるの?」
一見すると見当たらない。
無さそうである。
「無ぇな。昔は載ることもあったらしいが、最近は規模に対して見返りが少ないと評価されている。長い距離歩かされて稼げて1000イェル。今や遊び半分冒険半分で行くお前みたいな子供たちくらいしか足を運ばんよ。」
「へ、へぇ。」
「ウェスティリア魔術学院ギルドっていうのはそういう意味じゃあ、旧館の時と変って、学院地下ダンジョンの攻略だけを主目的に置いたギルドじゃなくなったってわけだ。まぁ詳しいことはママにでも聞いてみな!!」
ママ。。。
ルタルちゃんに聞いてみよう。
「しっかし、ウェスティリア領の有名どころで言えば第5位のアミテイルとかか。」
「アミテイル?.....スゴイの?」
「あぁ、あそこは間違いねぇ。多層型ダンジョンで確か6層以下まで小屋があったはずだ。ここら辺まで来るとギルド街ってのは、そのダンジョンの攻略だけに精を出すようになる。数多の大御所クランが攻略目的で訪れるからな。攻略用の武器や道具を一から作れる鍛冶屋がいて、遺物を鑑定できる道具屋が立ち並び、それを加工できる技師がいる。荷運屋の需要も増えてくる。ダンジョンで取れた魔物を専門的に調理できる料理人もな。」
魅力があれば需要が出来る。
需要があれば供給が要る。
あとはそれの繰り返し。
経済はダンジョンを中心に連続する。
「じゃあ、学院のダンジョンが人気になれば、ザ・ウェストもそうなるってこと?」
エンジはパァっと笑顔を作った。
「あぁ、いまでも優秀な交易所として栄えてはいるが、少なくとも今よりも攻略のための建物が増えるだろうなぁ。なげぇ夢物語だけどなぁ!!」
俺は少し考える。
さてそれは良い事なのだろうか。
モンスター目線で。
いや、おれモンスターじゃない。
.....じゃない.....けど。
俺は少し考える。
「なはは!!はぁ......小僧は凄いな。これだけの傷を負ってまだ前を向いてやがる。俺はもう..........」
「ん?」
「あぁ!?なんでもねえって、んなはは!!お前もこんだけ怪我してんだ。さっさと学院に戻るぞ、ったく。大した小僧だ!!なはははは!!!!」
・
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{第三層・居住区}
「パチモンよ。」
「全否定系ママ。」
「・・・ママじゃねぇよ。今人間たちに共用されているのはね、土の精霊のコミュニティだけで創られた”ダソジョソランキング”っていうパチモンなのよ~。」
「ダソジョソ.....」
偽物過ぎるネーミング。
騙す気無さ過ぎてグノームっぽい。
「凄いわよ~。ホンモノのダンジョンランキングには、空から海まで大陸中の様々なダンジョンの名前が順々に刻まれている。それは土の精霊だけで成せる業ではなくて、人間の手までも借りなくてはいけない。故に土の精霊だけじゃあパチモンしか作れない。」
「それでも使われているの?」
「そうよ。でも今はそれでいいのよ。アレは土の精霊族の掟で情報の正確性が担保されているもの。モンスターの数、DP、MP、RP。存在する情報、意味、価値遺物の数。全てにおいて嘘を吐いちゃいけないから、ダンジョンの評価を測るのに優秀な指標であることには間違いないのよ。」
「嘘つきがいたら?」
「いないわ。調査員もいるから。」
調査員。
ミシュランみたいなものか。
「それ故に人間たちが今、疑い半分で使っているその”ダンジョンランキング”の上位に入ることが、多くのダンジョンマスターたちの代々続く目標なのよ。」
「なーんだ、教えてくれればよかったのに。」
「いやいや、私たちは戦える土俵にすら立っていないわ。」
「じゃあ、どうすれば順位が上がるの?」
「はぁ......」
ルタルちゃんは腕を組む。
俺はジッと見つめながら。
・・・
溜める。
やけに溜める。
・・・・
間 を
「まずはモンスターを寄せ集め、住まわせる。」
「――あはは!ルタル様が失敗なされた過程ですね!!」
キューちゃんは飛び出すように手を挙げて、元気よく解説を挟んだ。
ルタルちゃんは寛大な心でその解説に
『シグマッ・・・』
「ステイッ、ステイッ――!!」
消える。
積み上げてきたものが。
全てのDPとキューちゃんが………!!
「やだなぁ~、冗談じゃないスカ、冗談ッ。」
「このやろ.....」
地雷を踏み抜くスーパーAI。
手を振りかざすブチ切れ精霊。
その脇を抱えて抑える9歳児。
プライドが凄い。
ダンジョンの話になると、
ベジータみたいになっちゃうんだから。
「でで、でさぁ。そっからど、どうする――わけ??」
「文化圏や生態系を作るんです。モンスターたちの街を作るように。」
「街?」
「街です!!」
――ほほう、これは・・・アレな展開ではないですか。。。
①モンスターを仲間にして
②労働力を確保して
③便利な建造物や畑を作り
④可愛いモン娘の側近でハーレムを形成
「なるほどね。国作り系ラノベみたいなもんか…(ボソ)」
「国作り系ラノベ??」
待ってましたキューちゃん。
そのオウム返し。
誘導だって??
なんとでも言え!!
こっからだ。。。
こっから俺の【王道なろう系まったり異世界ライフ】が始まるんだっ!!
「知らないんだ?」
「知らないです。」
「ルタルちゃん。」
「知らないわ。」
パァーパラパパパッ♪
パパパパパパーン♪
オープニングのファンファーレに脳内タイトルがデカデカと掲げられる。
【俺の異世界ダンジョンがどうやら[国レベル]だった件について~season1~】
主演タンテ・トシカ
助演ルタル・グノーム
監督キューセラ・チャン
「はぁ(歓喜)」
今までは散々生身の肉体労働から、血なまぐさい戦闘ばっっかり。
もういや!!
俺は自由自適な生活を手にし、やりたいことをやるっ!!
これはそのための布石。
久方ぶりの……現代知識講釈垂れタァイムッ!!!!
タァイム・・
タァイ・・
タァ・・
タ・・
『説明しよう!!国作り系ラノベとはっ――』
{カクカクシカジカ………(3分後)}
―――・・・
『んなのであrrrッ!!』
「無理ね。」
「どひゃーwww」
くっそ。
俺が体験した異世界あるある発表ドラゴン。
俺のアイデア大体無理。
「く.....苦しい。この異世界、身動きが取れない。」
「ようこそ、抑圧された地下世界へ。私のために一生働きなさい?――これが現実よ。」
ルタルちゃんは両手を広げて俺を見下す。
毒親?
なにここ子供部屋?
なんかいつもより暗くね?
心なしか気分が落ち込む。
鬼嫁とかも該当。
なんてネガティブ。
あぁ、人生人生。
「どこも一緒なのかぁ.....?」
「本人次第よ。」
「なんだぁこの前向きニート。」
「ニートじゃないわ。人間使いのダンジョンマスター。」
「じゃあその人間めは、どうすればよいのですかね。。。」
俺はへこたれながら腕を組むルタルちゃんを仰ぎ見る。
なんだろう。
ちょっと太った?
学院のデザートいっぱいちょろまかしてるから.....
「ルタル様、太りましたか?」
思ったこと全部言うじゃん。
「ふん。シュークリームの研究には代償が要るのよ。」
デブルタル。
幸せそうで何よりだ。
「で、さっきの反論だけど。大前提から話すわ。まず、アイツら話通じねぇから。」
この世界マジでおもしろいな。
ハードモードのクソゲーにしては。。。
「モンスターっていうのは根本的に知能が低いのよ。知力という土俵なら人間に廃されるから自ずと気性が荒くて野性的な子が増えていく。多くは仲間に成り得ず、立ち位置としてはペットに近くなる。これがタンテちゃんとの大きな認識の違いの1つ。モンスターにとってはそっちの方が生存しやすいのよ。」
「獣って感じだ。」
「そうね。つまりモンスターを労働力にするには、知能が高くて、身体能力が高くて、洞窟に適応できる子が必要になる。それだけでもかなり条件は狭まってしまう。そして形成には長い時間を要する。キューちゃん?説明してくださいな。」
「は~い。」
呼ばれて飛び出たスーパーAIは、
眼鏡越しの拡張現実に図解を写す。
「管理型ダンジョンの統治制度パターンは大きく分けて3つあります。
①放置制(HOUCHI SAY)
→自然に身を任せるサファリパークのようなものです。基本的には放し飼いをし、モンスターをコントロールします。自然体なので制御もしやすく管理も容易。最もオーソドックスなダンジョン創りのSAYです。(ルタル様が失敗なされたのはこのパターン。)
②奴隷制(DOREY SAY)
→モンスターを徹底的に教育します。痛みと恐怖がダンジョンを急進的に育てあげるでしょう。進むべき方向性を定めダンジョンをマスター好みに創造する際には、最も選ばれているダンジョン創りのSAYです。
③協力制(KYOURYOUKU SAY)
→知能の高いモンスターとダンジョンマスターが家族のようにコミュニティを築き上げます。ルールを作り文化を作る。数十年、数百年とかかる超大器晩成型でダンジョンを育てます。モンスター各々がクリエイティブな発想を可能としますが、統制が難しくあらゆる側面からリスクがあります。最も労力と時間を費するダンジョン創りのSAYです。」
認識の違い。
俺はモンスターを人間の亜種とも捉えていた。
しかし確かに。
ルタルちゃんの言う通り。
そこまで知能が高ければ既にモンスターと人間は共存しているはずだ。
実際エルフやドワーフ、鬼族なんかは人間と近い距離にあると授業で習った。
知能の高い竜が人間と手を取った例もある。
ともすれば。
協力出来ていないモンスターにはそれなりの理由がある。
俺のイメージではそういうモンスターをある種言いなりにする、使役するような扱いをしようと考えていた。
あわよくば仲良くなろうっていう③のパターン。
でもそれは難しい、あるいは無理だって話なんだろう。
やるんだったら①か②を狙うしかない。
「キューちゃん。パターンに即して、連れてこれそうな近隣のモンスターを教えて。」
「かしこまりました。我らがダンジョンに適応できる近辺のモンスターをリストアップしました。
①ゴブリン
②コボルト
③オーク
④リザードマン。近辺に生息しており、条件の対象となるモンスターはこの4種族のみです。」
「思った以上に.....」
「少ないでしょ。」
「うん。」
「呼び込むモンスターの種類によって、大方ダンジョンの方向性が決まります。①放置制なら手当たり次第にモンスターを呼び込むことが出来まして、我々のような多層型であれば生態系ピラミッドを各層に割り当てていくことが出来るので環境には恵まれています。パターンとしては、本来②③を試そうとしたけど、モンスターの組み合わせが悪くて失敗、混沌とした場合にも①に転化分類されます。①は特にモンスターテーブルを幅広く構成出来るのが強みですね。」
なるほど。
無政府主義が自然な姿である。
そういった趣を感じられる。
もちろん深い事は言っていない。
俺はいつでも浅い所が好きだから。
しかし確かに層ごとの棲み分けが出来るというところには、ある種ダンジョンのポテンシャルというか先天的な優位を感じさせられる。
「へぇ。いいね、とっても。」
俺は土の壁をそっと触った。
広さ。リソース。多層型。
このダンジョン。ベースは良い物を持っているということか。
「でも②③なら単層型の方が良いわね。なんか仲悪くなりがちって聞くわ。」
「ルタル様の仰る通りで、そういう傾向にあるのも確かです。知能が高ければ階層ごとの住み分けに疑念を持つモンスターが出てきます。上は下へ不安を抱き、下は上に対し不満を蓄積していく。隣の芝生は青いという奴ですね。」
「そんなのもあんの?」
リムワールドみたいなストレス管理ゲームになったらどうしよう。
そしてゲームオーバーは許されない。
総合的に見れば、現実はやっぱり①なのか?
「①放置型の極致として挙げられる例が、西方領内のダンジョンにあります。ダンジョン・アミテイルです。」
「アミテイル.....」
「ここだけの話ですが。。。面白いことに、彼のダンジョンでは人間の子供が生まれています。つまり、モンスターにも分類できる人間がいます。そして人間はダンジョンに独自の文化を作り、時に派閥抗争を繰り広げながら生息しているのです。①放置制の極致としてダンジョンマスターの手ほどきを必要とせずに、限りなく③協力制に近い自然を作りだしのがダンジョン・アミテイルなのです。」
「興味湧いてきた、今度行ってみようかな。
「危ないけど許可するわ。社会科見学ね。」
「割と気抜いたら死ねますよアミテイルは。お土産はアブラトリガミで。」
「本当に危険だから気を付けてね。お土産はシュークリームとかが良いわ。甘いので。」
「心配と欲望が同居してやがるッ......!!」
でも、良い場所なんだろうな。
物で溢れてそう。
怖いけど。
「さて、②奴隷制に話を戻しましょう。多くのモンスターの性格から見て、労働力を欲するタンテ様の欲望を叶えるのが②奴隷制でしょう。②奴隷制の場合には多層型も有効に作用することがあります。上下関係を分からせられますから。」
「なんか怖ぇよ。」
「最も現実的な話ではあるのです。モンスターを敵対する侵入者にも当てられ、労働力にもすることが出来る。壁も掘らせ放題です。セオリーとしては、元から数が多く繁殖力の高いモンスターを少量から使役するのがオススメです。」
「セオリーがあるんだ。」
「あります。②奴隷制はモンスターのパラメータが【強い・多い】に比例して制御が難しくなります。西方領に生息するモンスターから実例を出せば、
リザードマンは【強い・少ない】
ゴブリンは【弱い・多い】
で、どちらも使役が難しい。
故に最初はゴブリンを少なめに拉致し繁殖しすぎないように制御していきます。【弱い・少ない】から始めるんですね。
この時、例えばゴブリンに魔法を覚えさせバンバン繁殖をさせたとしましょう。
メイジゴブリン【強い・多い】
となり、最悪の場合ではダンジョンマスターに牙を向いたり。ダンジョンから勝手に脱出することが考えられます。
だから子供のゴブリンを捕まえて【弱い・少ない】から始めるのが王道だと計算には出ています。
調教の仕方については、良くない事をしたら痛めを与える。良い事をしたらゴハンを与える。あるいは信仰心を利用したり、魔法で精神操るのも効果的です。」
「なんか、アレだね.....」
「統制が出来れば効果は抜群よ。ダンジョンランキングの上位帯、33位以上も届かぬ夢じゃない。でも、心が痛むようなら考え直すことね。」
「いやー、たはは、本当に甘くないのね。。。」
俺は乾いた笑いを声に出す。
家畜は正義か。
蚕は正義か。
モンスターを奴隷にするのは正しいのだろうか。
あるいは言い方が悪いだけで、これが俺の求める奴隷なのかもしれない。
「甘さは大事よ。楽観だろうと、理想を掲げるのは大事だもの。」
「キューちゃん。夢ってどういう意味?」
「はい。現実の反対です。」
「ありがとう.....」
少し悲しい。
悲しくなった俺には目もくれず。
腕を組んだルタルちゃんはどこか遠くを見つめながら言った。
「彼の日に味わった挫折から、ようやくここまで来たわ。スタートラインね。」
しかしどうだろうか。
俺の目的は深層コア。
そこにあるかもしれない探偵の情報である。
そのためなら、俺は悪魔にでもなれるだろうか?
答えはノータイムで出る。
余りにも分かり切っていた。
「さぁ。モンスター集め、開始よ!!」
・
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{西方領 / 魔物の森}
伝え噺である。ウェスティリア魔術学院の裏手には魔物の森と呼ばれる樹海が在った。魔術学院の生徒達から恐れられたその森には、啜り泣き、甲高く叫ぶ声が時折聞こえた。恐怖の足音。多様な足跡。夜に成れば、月明りすら届かぬ樹海。フクロウの鳴き声を聞き、狩りを行う狡猾な瞳。涎の垂れた鋭利な歯列。生きては戻れぬ野獣たちの故郷、魔物の森。
しかし、多くの魔獣たちが巣食うその森に置いて魔物と呼ばれたバケモノはかつて、唯の一体だけであったとされている。
―――
「ところで、なんで私たちなの?」
金髪の同行者が首を傾げる。
「土の精霊を知っている数少ない人間だからね~。」
「そうなの?」
同行者たちの顔ぶれは随分と頼もしい。
余剰戦力に感じているほどだ。
同行者①アリス・キングスレー
同行者②ルダム・トゥイード
同行者③ルディ・トゥイード
同行者④チェシャ・ビオラユーレ(高等科4年生)
同行者⑤アズナ・アブソレム(現、騎士寮助教授)
同行者⑥ヤマネ(チェシャの肩に乗るアライグ.....タヌキ?)
俺含め六人と一匹態勢。
なんか一塊に出来そうなグループもあるが。。。
実際にはこう⇩か?
同行者①アリス・キングスレー
同行者②ルダム&ルディ
同行者③チェシャ&ヤマネ
同行者④アズナ・アブソレム
うーん。
実質、5人パーティーといったところか。
それでも彼らはアザナンファミリアの殺し屋たちである。
余剰戦力に変わりない。
「こんなに集まる必要あるのかしら?私だけで充分じゃない?――ねぇもしかして私、信用されてない?」
「 「 分からな~い!! 」 」
幸せだ。
俺はこの元気な双子を見れれば充分です。
「アリス。いや、ここはジャバちゃんに聞こうか。君はこの森がどれだけ危険か知っているのかな?」
背中越しのチェシャの声。
俺は振り返る。
彼女はよく双子に懐かれている印象だ。
ルディとルダムに両手を引っ張られ。
依然見た時はアライグマだったタヌキを肩に乗せた、魔女帽子のお姉さんが俺に問いかける。
なんだろう。
エグソディアみたい。
「エグソディ.....じゃない。三種族の魔物がナワバリ争いをしているっていうのは聞いた。ゴブリン、オーク、ケンタウロス。その中でも、特にケンタウロスが危ないって。」
「あぁ。」
チェシャはフッと笑う。
「その程度の脅威ならば、アリスとこの二人でこと足りるだろうね。群れで来られたら心配だから、追加で私も付けよ~っと。これで万全。あれれでも今日は.....アブソレムまでいる。なぁ~ぜだ?」
「 「 分からな~い!! 」 」
「ふふ、私も分からな~い。」
「.....」
「え?」
「 「 チェッ、チェッ、チェーシャ♪♬ 」 」
「ふふふ.....」
え、おわった?
会話終了??
急にルディ&ルダムとじゃれ始めた。
おーい、めんどくさくなっちゃったのかな?
なんなんだこいつ。
「ロルタ・ヴェイル禁林。」
呆れたようにアブソレムが口を開く。
「三種族のナワバリの真ん中にある中立地帯、禁域さ。ロルタ・ヴェイルのトロールに鉢合わせれば、アリスじゃ足りない。」
「何よ。敗けるってこと?」
「手いっぱいになるってことさ。目的を履き違えるな。」
アズナ・アブソレム。
学院に籍を置く者だけはフルネームが開示されている。
ジン・アレクサンドロスが去ったのち、騎士寮助教授の座に就いた彼女の名前。
偽名で無ければ、アザナンファミリアのリーダーと疑われる。
和装に煙管。戦闘用の刀。
堪え切れない圧のある魔力。
その風格は確かだ。
「このチョーカーで。もし、君がトロールをテイムしてくれと言うのなら。アリス、君に務まるだろうか?」
アブソレムは俺を追い越して、アリスの隣を歩く。
「あっ、おい。いつ盗った!!」
それは紫と臙脂色の首輪。
奴隷制を導くための、ルタルちゃんの秘蔵の品であった。
「これ、君に付けたら。どうなるんだろうか?」
アブソレムは鋭い目つきで俺を見る。
そう言えばそうだった。
こいつらは殺し屋であり、対象は俺だ。
それも悲願の殺しの対象。
「冗談さ。.....君は最高傑作なんだろう。傷付けることは出来ない。」
俺は生唾をゴクリと飲み込む。
ピピピ・・・
[――大丈夫です、タンテ様。レッドテイムチョークは人間にも有効ですが、私のロック解除が無ければ機能を発揮しません。愛しのあの子にあんなことをやこんなことをしたい場合には、私に一言断りを入れてください。by キューちゃん a.k.a 絶対ママに報告するマン。]
キューキューブからコンタクトレンズに文字が映る。
送信元は、キューちゃん a.k.a 絶対ママに報告するマン。だ。
やかましいわ。
「それはそれとして、君。その大鎌は何処で手に入れた?」
俺は背中に担ぐ武器を一瞥する。
「大鎌じゃない。つるはしだよ。」
レイチェル・アレクサンドロスとの戦闘以来。
俺はいくつかの武器を試していた。
大鎌だけは使わないで欲しい。
それがリエラの遺言だったらしい。
しかしながら、結局最後に一番手に馴染んだのが大鎌だった。
死闘を乗り越えた経験が身体を器用に動かしたようだ。
「ジン教授に奢ってもらったんだ。ダンジョンに落ちてた大鎌を鋳造して、アレクサンドロス家御用達のの鍛冶職人にツルハシを作って貰った。費用は全てジン教授持ち。」
大型のつるはしならば大鎌ではない。
重量はかなりあるが、土魔法を織り交ぜれば大鎌と同じように振り回せる。
速度良し、威力良し。掘削良し。
「へぇー、ジンが。えらく恩を売ったのね。」
アリスは感心した顔をする。
アブソレムもドン引きといった表情をしていた。
「「 変なの~。」」
「ふふふ、ユニークなのは好きだよ。」
思わぬ角度からの擁護。
チェシャはニヤリと笑う。
「 「 ゆにーく!! 」 」
「メイン武器をつるはしにしているやつ、炭鉱夫以外にいたんだね。」
「ははは.....ほぼ炭鉱夫みたいなもんですから普段は。」
「ふ~ん。」
もしかしてダサかった?
残りの人生、割とこれ一本でいこうと思っていまして。。。
あれ、なんだかむず痒い。
髪型を変えた時みたいだ。
・
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{ダンジョンステータス}
Qキューブ(搭載OS:Que Sera Artificial Intelligence)
研究レベル:0
DP :0
MP:0
RP:0
状 態:地上(ダンジョン外)
TIPS
・{ロルタ・ヴェイル禁林}
『{禁域}その言葉には多様な意図が存在する。
ウェスティリア王国指定禁域である{ロルタ・ヴェイル禁林}は、
A.学生の多い魔術学院が近く該当領域では急速な危険度の上昇が見込まれること。
B.人間の立ち入りにより自然生態系への悪影響が懸念されること。
という2つを理由として国から{禁域}に指定をされた。
当然の如く普段は国が定めた法律など、暗殺屋アザナンファミリアの憂慮する所ではないが、今回は魔術学院の助教授と生徒という名目でギリギリ公の許可(騎士寮助教授、アズナ・アブソレム、魔導士寮高等科4年生、チェシャ・ビオラユーレ 2名分のみなので他は不法侵入扱いとなるが、バレたらはぐらかす予定。)を降ろしてから出発している。』




