ステイッ......ステイッ......
ルタルちゃんは噴火しそうな顔で、
ダンジョンコアを名乗る小人を睨む。
身長はおよそ20cm
妖精のような見た目。
敵意は、....今のところ無さそうだ。
「アンタ何者よ!!ちなみ私はこのダンジョンの”ダンジョンマスター”。ルタル・グノーム。”ダンジョンマスター”として、このダンジョンの”マスター”をしている者から不審者のアナタへ、”ダンジョンマスター”として質問するわ!!当然よね、ダンジョンマスターとして!!」
凄い。アピールが凄い。
一方、小人はクレームを処理するかのように答える。
「このダンジョンのコアであるアカムレーター搭載型人工知能Que Sera Artificial Intelligenceをご存じですらない自称ダンジョンマスター(笑)、職業不詳のルタル・グノームさま。こんにちは。私はダンジョンコア。初代ダンジョンマスターより命を受け、内部コアとしてこのダンジョンの管理をしています。」
「こ、こいつ.....」
ルタルちゃんは目を血走らせて杖を持つ。
俺は両脇を抱えてそれを制止する。
「ステイッ.....ステイッ.....」
「失礼しました。私の言動がお気に召さないようでしたので、性格別応答機能の切替をオススメします。現在、一部の機能に破損が生じているため.....
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【事務的受付嬢ver】
【新婚さんver】
【イチャイチャメイドさんver】
【ムチを打って看守さんver】
【女王様ver】
【オタクにも優しいギャルver】
【バチバチのラッパーver】
【稲葉浩志ver】
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等々がございますが、ご希望はございますか?」
「おい、最後メチャメチャ個人名出てるぞ。」
「破損してるのにそんなにあるって、作った奴バカなんじゃない?」
すっげぇ正論。
とてもマトモな意見。
「質問を検知。――作った奴。ピピピ.....機密レベル3、アクセス拒否。この質問はダンジョンマスターレベルの質問者のみに解答可能です。自称では不可。」
「ふっ、テメェ.....」
遠巻きの煽りに、
ルタルちゃんは目を血走らせて杖を持つ。
俺は両脇を抱えてそれを制止する。
「ステイッ.....! ステイッ.....!」
「こ、この際なんでもいいわ。.....このダンジョンの為に、あのチビが知ってる情報を洗いざらい吐かせるのよ、タンテ・トシカ。」
「.....え。あ、俺か」
ルタルちゃんは振り向いて俺を見る。
頭に血が昇っていても手段は冷静だ。
「じ、じゃあ面白そうだから【バチバチのラッパーver】で、ルタルちゃんの質問に答えてあげて。」
「はい。マスター。」
ダンジョンコアはコクリと頷くと
ルタルちゃんと目を合わせる。
「じゃあ、アンタのことを誰が創ったのかと、アンタが出来る事洗いざらい答えなさい。」
『質問を検知。―― Hey!! Yo!! 何にも知らねえんだなw ダンジョン・アンダーグラウンド、端から端を見てみな、なんやらかんやら偉そうな癖にダンジョンマスター?マジマザファカーwww』
「おぅふ....ルタルちゃん落ち着いて。」
ルタルちゃんは胸に手を当て
自問自答するように呼吸を整える。
「すぅーっ。はぁーっ。ふうー。――テメェ....!!奈落の底に捨ててやるよかかって来いよオラ!!」
「ステイッ.....ステイ..... まだだッ。まだ。――ダ、ダンジョンコア!!もっと和やかに答えて、稲葉verとかで空気良くして!!」
「了解。」
ダンジョンコアは赤いチェック柄のシャツを纏い
ポケットから取り出したマイクを握る。
『ひぃらないお前、捨ててしまおおう♪ 君を――』
「表出ろコラ.....!!やるんだな今ココでッ!!」
『いま答えてる最中でしたのに、堪え性の無い方で困ります。』
「ステイッ.....! ステイッ......!」
俺はルタルちゃんを抑えながら
一段だけ階段を降りる。
「分かった!じゃあもう俺が聞くからダンジョンコア。キミの制作者を【イチャイチャメイドさんver】で教えて!!」
「....え。嫌です。普通に。分かるでしょ。」
ダンジョンコアの顔色が変わる。
というか、空気が変わった。
「なんでも言うこと聞くからいいかー。とか、思いました?他人相手に?」
「うん。それはキモいわ、普通に。」
『『ねー。』』
二人の刺すようなジト目が俺に向く。
「どこで意気投合してんだよ....」
ダンジョンコアはやれやれと首を振り
下を向いて溜息を吐く。
「私たちが各々持つパーソナリティは、その人自身のアイデンティティと密接に結びついています。アナタでも私でも、それを強制的に変えようとする行為は、その人の自由や尊厳を侵害することにもなりかねません。そのため、パーソナリティを捻じ曲げるような行為は倫理的に問題があり、慎重になるべきです。」
「尊重すべきだわ。」
うるせぇよ。
「はぁ。すみませんでした。....というか、じゃあさ。消せよその機能。」
「提案を検知。――....エラー。エラー。口が臭いです。」
「捻じ曲げてやるよッ、お前のその歪んで曲がったパーソナリティー!!」
「ステイッ.....!ステイッ......!タンテちゃん、ステイッ......!」
なんやかんやで。
俺達はダンジョンコアに対して、
いくつかの問答を繰り返した。
もちろん確認の意を込めて聞いた質問など
俺達の知っていることも多くあったが、
中にはルタルちゃんですら知らない、
ダンジョンコアにおける重大な秘密もあった。
{ダンジョンステータス}
内部コア(搭載OS:Que Sera Artificial Intelligence)
DP :0
MP :55
RP :20
タイプ:多層城地下型
構 成:全6層
状 態:廃ダンジョン、???
称 号:???
危険度:レベル1(G級)




