プロローグ 勃発した世界大戦で死に損なった兵士たちが辿り着いたようです。
2025年1月14日 追加した新プロローグ。
本篇は、ep4『ダンジョンマスター』より
【目次】(随時更新中)
第一章 回生編ep1(プロローグ)
第二章 現世編ep2~ep3(プロローグ)
第三章 転生編(旧:廃ダンジョン脱出編)ep4~ep12
第四章 蘇生編ep13~ep21
第五章 寮生編ep22~
第六章 ???編
第七章 ???編
最終章 ???編
A spin-off work of the novel "Noah's Traveler".
――ダンジョン作りにはSayがいる。
―――ヒュィィィィィィィ・・・ン!!
Que Sera Artificial Intelligence
『ダンジョンコア起動。』
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侵入者を検知
RP・・・
MP・・・
DP・・・・
タイプ:・・
構 成:・・・
状 態:・・・・・
称 号:・・・
危険度:・・・・・・・
【STAGE 1ー1 そして かれらは 来た・・・
よごれた雑兵 ああああ Lv⁇ 】
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『――ダンジョンとは……人が死ぬところで、ある。』
大きな2本の牙が凶悪な獣。
悪知恵の小賢しい4つ足のケンタウロス。
6つの夜目が効く大毒蜘蛛の縄張り。
そして今日も。
暗闇の中で5つの目が光る。
「はぁ……はぁ…… 皮肉なものだ、な。」
「えぇ。……でも、こんな所では死ねません。」
ダンジョンに響く5つの足音。
3つの口からは血の呼気が吐かれていた。
反響する唸り声。
すっからかんになった胃袋。
興奮で逆立つ体毛。
獰猛さを表すような数多の裂傷。
そして、荒れきった汚い皮膚。
「さぁ、頑張って生きろ。テディ。」
「……はい。」
全くもって皮肉な話である。
ダンジョンとは、人が死ぬところである。
しかしながら....
いまや、
どのダンジョンにも勝るほど多く、
地上では人が死んでいた。
「こっちで正しいな、アーロ。」
戦いで左脚を欠損したテディを担ぎ、隊長が俺に聞く。
3人とも満身創痍。
「えぇ。……ここは昔、モンスターすら居ない廃ダンジョンだったはずです。」
汗が揮発し、重たい鎧の中に湿気がこもる。
土が擦れて肌が傷付く。
そして何よりも、寒かった。
俺達は足を引きずりながら歩みを進める。
一寸先は闇だ。
夜目が効く方では無かったが、
片目を斬られた隊長よりはマシだろう。
おまけに俺には土地勘があった。
・
・
・
・
・
『よし。そこで休もう。』
「はい……」
かなり歩いた。
戦線から離れて2時間ほど。
ダンジョンの入り口からも数時間歩いた。
小川の流れる洞窟の本流から外れ、
巨大な穴倉の中に俺たちは入る。
――ピチャン。
「ん……? 止、まれ。」
隊長が水溜まりのようなナニかを踏んだ。
それに、ここはどこか湿っぽく。
湿度の高い空気に匂いが有った。
隊長は傷塗れのテディを俺に預けると、
すかさずしゃがんで水溜まりを触る。
俺もテディを担ぎながら足元の感覚を確かめる。
硬い。
水はけが悪く、平らで硬い。
「池……いや、温泉っ、だ。」
「え?」
俺は貴重な灯石を取り出し、辺りを照らす。
一歩先には硬い石を繰り抜いたようなフチがあった。
隊長に続いて、俺も水面を触る。
「あっ、本当だ。あったかい!」
「ウ……、アッ……」
――バッシャーンッ!!
「....む?」
「え?」
目を離すとテディが温泉にダイブしていた。
「「 テディー!! 」」
すかさず隊長はお湯に飛び込む。
俺は外から手を伸ばす。
「アーロ、貴様。なぜテディを……!!!!!」
「すみません。うっかり、うっかりして」
「テディ!!テディ!!大丈夫か!!」
「……早く温泉から上げないと、傷口に細菌が入るどころか出血多量でテディが死にます!!」
「あぁ、分かっている。分かってるのだがこのお湯、なんかヌルヌルしてて。凄、い!!」
「何言ってるんですか!!さぁテディをコチラへ!!」
2時間後・・・
「良い。っすね。」
「う、ん。」
北方戦線は既に冬の気配を漂わせていた。
枯れ葉は散り行き、最前線では初雪が観測されたらしい。
そんな中。
俺達3人は、温泉を堪能していた。
「のぼせ、無い。っすね。」
「う、ん。」
「ヌルヌル。っすね。」
「う、ん。」
38℃程度のぬるま湯といったところだったが、底面にある泥の様な白いヌルヌルの元を攪拌させると、ジンワリと温かさが広がっていく。
これが何かは分からない。
しかしこのヌルヌルを傷口に塗る塗るしたら、ワセリンのように出血が止まったのだ。
それに止まったのは出血だけではない。
傷口に伴う痛みも、ヌルヌルしたら途端に止まった。
それはまるで麻酔薬のように。
痛みがピタリと治まったのだ。
「テディ~。容体はどお、だ~。」
「どうだ~?」
「はい……なんとか喋れるくらいには……」
「それは~よかっ、た~」
「よかった~。」
テディは温泉の横で傷口にヌルヌル泥を塗っていた。
「痛みは、どお、だ~。」
「どうだ~?」
「い、一か八か”飲んだら”止まりました。」
「ほう。飲、む?」
「これを飲んだのか、テディ?!」
「え....えぇ。隊長たちが入ってる手前、不衛生かとは思いましたが。喉がカラカラで、腹も空いていたので。」
「ほ~、お。まぁ、ノスティアには泉飲という健康法もあるらしいからな。で、どおだった?この薬湯。」
「苦かったです。クスリっぽいというか。」
「ほ~、お。」
隊長は溶けたように受け答えする。
俺もぐったりと腕を伸ばしながら、
灯石が照らす淡いオレンジ色の天井を
白い湯気の中から仰ぎ見ていた。
傷口が塞がり。
血行が良くなり。
グゥ~と腹が鳴り。
俺と隊長は天井を見つめる。
「腹、減ったなあ~。」
「減りましたね~。」
「………。」
「………。」
いかん。
飯のことは考えてはいけない。
俺はすかさず話題を変える。
「しかしこの温泉。なんで、傷がみるみるうちに治るんですかね~?」
「それはそういう効能ですからな。」
俺の前には良い匂いがする湯気が現れる。
俺はそれを掴んで汁をすする。
「うん。美味い!!コレは?」
「それは、牡蠣。ただ牡蠣汁と伝えるよう聞き及んでますな。」
なにこれ。
美味すぎる。
「なるほど。隊長。俺たちはきっと、死んだに違いないです。きっとここはモンスターの腹の中で、俺達は今、幻覚を見せられながら溶かされているのです。」
「半分は正し、い。ようだな?」
隊長はお湯の中で剣を抜いていた。
下ネタ的な意味では無くて、
銀色に光る刀身を
まごうこと無き真剣を抜いて、構えていた。
俺は隊長の標的へと首を振る。
目の前には、白髭に三角帽子の、オッサン……?
「せ……精、霊。」
「せ、精霊だって……!?」
戦場でも
いついかなる窮地でも
最後まで凛々しく伸びていた隊長の剣が震えていた。
俺は水飛沫を上げながら
牡蠣汁の器を手に持ち距離を取る。
足元がヌルッと滑りそうになったが、
すかさず俺も置いていた剣を抜いた。
牡蠣汁を持ちながら。
「そんなに美味いのか....そ、れ!!」
「えぇ。正直手が離せません。誰かに喰われるくらいなら、この温泉に投げ入れます。」
精霊とは魔法の祖や神々の手前にいる存在とも言われており、通常、最高位の魔法魔術をも操る魔法使いであると言われている。そして人類は長い歴史の中で、幾度となく精霊を裏切り、利用してきたと言われている。故に精霊たちは人間を嫌っており、出会えば五秒で抹殺される。
「むぅ。危急存亡、泥船渡河……」
「まぁ、まぁ。」
オッサンは宥めるように両手を下へ向ける。
しかしそこに隙は見えない。
鎧を着ている暇は、無さそうだ。
「戦う気なら。毒、入れてますな。」
「たしかに。――ズルズルッ。」
「そんなに美味いのか....そ、れ!!」
俺達が会話を続ける傍ら、
後ろのテディが動き出す。
腐っても軍人だ。
それも、今しがた殺し合いをしてきたばかりの。
「それで、何故ここがバレた。答えろ~。」
「ここはダンジョン。深淵を覗くとき、また深淵も覗いているということですな。」
「なんでこの美味しいスープを俺にくれた~?」
「渡せと言われたから、ですな。」
親切心も道徳も倫理観も。
全て戦地に捨ててきた。
仲間の死体と、
血の雨が降る最中で。
「じゃあ最期、どうして俺たちを殺さない?」
「それは・・・
『”伏せろ”!!』
テディは杖を構えて魔法を放つ。
敵も味方も屠り散らかした、
誰が創ったか知り得もしない、
歴史上最悪最低の、死の魔弾を。
『 ――スレイ。』
【スレイ】
系統:不明
等級:D級
属性:①物理
②不明
詳細:(有事には即席の戦力(一般人)を
殺人者に変える最も簡単な方法として、
魔法の扱いに乏しい庶民へ広く教えられる。
性質としては、
①速くて重たいモノ
②遅くて重たいが爆散するモノ
に、スイッチが出来る。)
――ドガァァァアアン!!!!!!!!!!!!!!!!
外壁が壊れ光が漏れる。
桃源郷。
そんな言葉が相応しい壮観な街が
ドデカイ横穴の下に、悠々と広がっていた。
「それは、お客人であるから。……ですな。」
土の精霊は余裕そうな顔で、
白髭を撫で降ろしながら言った。
「あっ、ぶね。」
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