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宇宙戦争時代の科学者、異世界へ転生する【創世の大賢者】  作者: 赤い獅子舞のチャア(実際の人物及び団体とは一切関係ありません)
冒険の旅

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聖女

 聖女

 ---クリス視点---

 エリーが無茶苦茶やらかして出て行った後、私達は勲章を授与されることになった。

 あんまり必要無いかなぁとは思ったけど、褒賞の方がとても魅力的だったので仕方なく叙勲を受ける事にした私達だったけど、エリーが王太子と話していた国王のご病気と言うのは、私的にはとっても気になって居る。

「以上を持って叙勲式を終了とする、皆のもの下がってよいぞ。」

 騎士団長らしき人が高らかに宣言した、直後・・・

「待て、勝手に帰すな。」

「しかし、叙勲式のしきたりで。」

「愚か者、先程のエリーの話を聞いて居らなんだか?

 ここに居る聖女クリスは父王を治療できる可能性が有るのだ、まだ帰って貰う訳にはいかぬのだ。」

「は、はぁ、しかしあのふざけた者の話等を鵜吞みになさっては・・・」

「黙れ! 我が良いと言って居るのだ! コアークよ、お前は王太子である前に国王代理としての我の命を聞けぬと言うか! であるならばこの場より出て行け!」

 うわ、王太子様ってばこんな歳で威圧スキル使ってる、凄いなぁ。

 本当にエリーの言う通り転生者の人なのかな。

 さっきのやり取りで転生者って言われた王太子様は笑って冗談っぽく返事してたから有耶無耶になってたけど、本当にそうなのかもね。

「く・・・失礼いたします。」

 そう言ったかと思うと騎士団長は本当に退室してしまった、これってあまり良くない奴じゃ無いのかな・・・

「さて、聖女クリス、我が父の寝所へ来てくれるかな?」

「はい、私目如きでお力に成れるならば。」

「クリスと所縁の有る者達も一緒に来るが良い。」

「は、では私が付き添いいたします。」

 とキースが名乗り出てくれた、ちょっと嬉しい。

 ザインはと言うと・・・

「私は・・・騎士団長、気になる、様子見てくる。」

 やっぱ何かやりそうな気がするみたい。

 ------

「さぁ、入ってくれ。」

 王太子に促されて王様の寝室へと入室した。

「し、失礼いたします。」

「父上、今日の謁見に聖女殿が参列されたので連れてまいりました、父上の病を診て頂こうと思って居ります、宜しいですね?」

「おお、そうか、聖女殿が、済まぬ、よろしく頼む。」

「はい、では失礼いたします。」

「おお、お若いのだな、少し意外であった。」

「では、見させて頂きます。

 診察・・・」

 診断結果は、肺炎球菌による肺炎、所謂重症の風邪、併発で、アレルギー性の喘息を伴って居た、恐らく肺炎球菌に対するアレルギーと思われる。

 これでは苦しいよね。

 歩けない程なんじゃないかな?

 エリーから貰った知識の中に、解決法とそれに必要な薬剤の種類も確認出来た。

 まず手始めに、エリーに電脳通信を送る。

 この薬を使用する旨を報告したかったからだ。

 何故って、そりゃ私が作るのは初めてになるからね、電脳接続で失敗して無いか確認して貰う為。

 まぁ、鑑定すれば成功か失敗かなんかすぐわかるから、私の気持ちの問題だけなんだけど。

 だって本来私にとって未知の薬を作るんだからその気持ちはわかって欲しい。

 作る薬は、先ずは気道を確保する為の気管拡張剤、メプチン。

 このメプチンを吸入する事で気管を広げて呼吸をしやすくする。

 そして、消炎剤にもなる、アドエア―、更に、抗ヒスタミン剤で消炎剤の錠剤薬、プレドニン。

 この三種で一時的に喘息の併発を抑えて、後は普通に抗生剤のスルファニルアミドか、メイアクト当たりのなんか飲んで貰えば肺炎球菌程度ならすぐに駆除できる・・・はず。

 電脳通信で返って来たエリーの返事は、「合ってるから自信持ってやってみ?」だった。

「それでは、薬の精製をしますね。」

 と言って席をはずそうとしたのだけど、王太子様だけでなく王様にもここで見せて欲しいと言われてしまったので、しぶしぶ製薬スキルを発動。

 エリーに教わった通りに発動してみると、目の前に球状の結界のようなものが現れた。

 エリーが電脳のついでに伝授してくれたと思われる錬金術スキルの一端らしい。

 凄いなぁ、これ、中は埃一つ無いんだね・・・なんか判ってしまった。

 でも、その後が出鱈目だった。

 メプチンエアーを調薬したら、何だか吸入器と言う名称の付いた、初めて見る初めて触る不思議な素材の道具が出来上がった。

 エリーに確認すると、この素材はプラスチックと言う物らしい事が判った、そして中に錫とかアルミの本体タンクが隠れてるとか言って居たけど、私も電脳にはその知識が有るは有るんだけど、何でこんなのが勝手に構成されて出て来るのか意味が判らなかった。

 エリーに聞いて見ても、「気にするな・・・・」

 気になるってばっ!

 でも一つ目の薬で足踏みしててもしょうがないので二つ目のアドエアーを作ると、また今度は形の違う吸入器が出来て来た、ブリスターと言う形らしいんだけど、これもエリーに聞いても気にするなと一点張り・・・、これって完全に私の知らないものだよね?

 なのに私の電脳は知って居ると言う奇妙な状況に混乱する。

 しかし、今は悩んでも仕方ないので次の薬に取り掛かる。

 今度はプレドニンなんだけど、ピンク色っぽい錠剤の薬が出来た、のは良いんだけど、やっぱり薬がなんか中が見える容器に入って完成、一錠づつ個包装されて居るので衛生的なんだろうけど・・・

 そもそも錠剤を私は知らなかったのだ。

 でもやはり電脳は知って居る、うん、諦めよう! もう悩んでも仕方ないわ。

 最後に、スルファニルアミドを作る。

 この薬は本当は割と原始的な抗生剤で、本来であればメイアクトやクラビットを作りたかったんだけど今手に入れられる材料では少し難しいようだったので、まぁこの世界で初めての薬だからそうそう耐性菌が出来る事は無いだろうと言う事だったのでエリーのお勧め通りに作って見た。

 そして、完成した薬を王様に飲んで頂こうと思って振り返ると、何故か拝まれた・・・

 そうだよねぇ、この部屋でこんなスキル使って薬を作った所見せてるんだもん、しかも何も無かった所から突然出て来たようにしか見えないだろうし。

「お・・・お待たせしました、えっと、あの、先ずはこちらの小粒の錠剤、プレドニンからお飲み下さい、飲んで20分もすると呼吸が多少楽になると思います。」

「う、うむ・・・」

 王様は戸惑いながらも私の言う通りに薬を飲んでくれる。

「つ、つぎに・・・えぇと、こちらのメプチンエアと言う吸入薬を・・・」

 王様の上半身を少し起こして支え、メプチンの吸入器を王様に咥えて頂き、深呼吸をお願いする。

「ではまず、目いっぱい息を吐いて見て下さい。」

 王様が息を吐くと、ゼヒューと言う吐出し音がする、気管支炎、喘息の典型的な呼吸音だ。

 メプチンエアをワンプッシュして薬剤を口腔内に射出すると私はもう一度王様に指示を出す。

「はい、目いっぱい吸って下さい。

 この薬は炎症で狭くなった期間を広げてくれる薬ですから、痰が出やすく成ると思います。」

 王様が息を吸うと、やはり喘息呼吸音、しかしメプチンで気管が広がった王様は直ぐに咳き込み、痰が出て来たらしいので、枕元に置かれて居た痰壷をさっと王様に。

 タンの色は緑色だった、肺炎球菌では無く、緑膿菌だったみたいだ。

 まぁ、緑膿菌にも感受性のある抗生剤と言う事も電脳は知って居たので、新しく薬を作る事は無いよね。

 王太子様が王様の咳き込みだした様子を見て怒ったような声を上げたが、王様がそれを制した。

 まぁ、薬を使って直ぐに咳き込んだりしたらそりゃそうなる気持ちも判るけどね、一応治療なんだし、あの製薬スキルを王太子様だって見てたんだからその辺はもう少し広い心で見て居て欲しいよね。次に、ブリスターの使い方を王様に教えて吸引して貰う。

 多少は呼吸が楽になったのだろう、王様の顔色がほんのり赤みをさす。

 でも、問題はここからだよね、問題の肺炎球菌と勘違いさせたほどの猛威を振るった緑膿菌は、既に肺の半分近くにまでその患部広げているようだったから、薬飲んでしばらくしたら暴れて吐血する可能性が有るんだ。

 エリーに、どう説明したら良いかと電脳で相談すると、簡単だと笑われた・・・

 なるほどなるほど、じゃあこの世界で通用しそうな表現でそのまま伝えたら良いよね。

「王様、このお薬を飲んで頂いてとりあえずの治療法は終わりです、が、このお薬は、多分初めてお飲み頂くと、悪い血が出ると思います、吐血成されても驚かないで下さい、出たのは悪い血で、その血に原因の菌がいっぱい含まれていますので、直ぐに拭きとって此方の香水瓶の薬で血の付いた所を除菌して下さい、と言って、戦争中の治療で使う為にエリーに貰ってあった除菌用アルコールと抗菌剤を含む薬液を噴霧する為の香水瓶を取り出してお渡ししてから、スルファニルアミドを飲んで貰った。

 5分もしないうちだと思う、早速スルファニルアミドが効き出したらしく、王様が激しく咳をし始めた。

 心配して近寄ろうとする王太子様を制止して、距離を取らせて様子を見る。

 あ、やっぱ出たね、王様は吐血をしたけど私の説明を丁寧に聞いて下さって居たのであまり驚く様子も無く、直ぐに私のお願いした処置を済ませると横になった。

「この一連の薬は、いつ服用すれば良いのかな?」

 王様に逆に質問されたので、丁寧にお答えする事にした。

「今は緊急性もあったのですぐにお使い頂きましたが、強い飲み薬ですので、朝昼晩の毎食後にお願い致します。

 全部でおよそ2週間分お出ししてありますので、かかさず毎食後にお飲みくださいませ。」

「あい分かった、先程から比べても、今は随分と楽になった気がする、聖女よ、何と礼を申していいやら・・・」

「いえ、私は聖女などではありません、ただの冒険者で、治療師です。」

「おお、一つ聞き忘れたのだが。」

「何で御座いましょうか?」

「食欲の無い時は如何したら宜しいだろうか?」

「そうですね、芋を焚いて砕いて消化を良くした物を、少量でも良いのでお飲みください。」

 この大陸にある芋はタロ芋だ。炊いたタロイモは少し紫がかっていて色見は悪いが、糖分やビタミンが豊富で病床の食事にはうってつけなのだ。

「芋、芋とは何だ?」

 ウソ、王様っておいも食べた事無いのかな???

「我々庶民の食べ物で安くてお腹に貯まるのでその辺の市場でもたくさん売られている主食になって居る物です。

 王様は召し上がった事が無いかも知れませんが、一度召し上がって見て下さい、見た目はあまり良くありませんが、ほんのり甘くて意外と美味しいですよ?」

 と、笑顔でお答えしてみると、枕元のベルを手に取った王様がそれを鳴らし、メイドを部屋に呼びつけた。

「お呼びでしょうか。」

「うむ、今、聖女より芋と言う食べ物を伺った、私の食事に出た事は有るか?」

「いえ、芋とは低級民の主食となって居る物で、下賤な物が食する物ですので、お出し出来ません。」

「それはいかん、下賤だろうが何だろうが、私とて元は低級貴族であったのを自力で王にまでなったのだ、庶民の食する物を食わんで何とする。

 これからは、出せ。

 そこで、だ。

 えぇと、何と言う料理ですかな?聖女殿。」

「芋粥、でよろしいかと思います。」

「左様か、ではその芋粥を今晩の食事としてくれ、食欲の無い時には消化も良く病の床で食すのにうってつけだと聖女殿が仰せなのだ、良いな?」

「は、御心のままに、では、そのように致します。」

「うむ、お主を朕の傍仕えにして良かった、前任者では頑なにダメだと言われて居る所だわ。」

 と言って、未だ苦しそうではあるが、確かに王様は笑った。

 その様子を見た王太子が、私を見て喝采をして下さった。

「見事である! 聖女クリスよ、我が父に代わって早急に世から何か礼をしたい、何か欲しい物は有るか?」

「でしたら、私の師匠、エリーと一緒に旅をして回る事をお許しください。」

「なんと、そんな事で良いのか?

 あ、いやしかし、そうか、お主がこの国よりいなくなるのは大きな損失ではあるな・・・」

「お願い致します、師匠にもっと教えを受け研鑽を摘む為にも、何卒。」

 すごいなぁ、エリーに電脳化をお願いして良かったと思う、私のつたない語力ではこんな敬語使えなかったし、王族の人達に対してこんなにハッキリと会話が成立する事は無かっただろうな。

 王太子様は、しばらく考えた後、決断をしたようだ。

「おぬしは、旅を終えたらこの王都へ帰って来てくれるかね?」

「いえ、私の故郷は、ここ王都では無くセドリック辺境伯様の納める、シーマの街です。

 ですが、エリーが、何処へでもすぐに行けるように転移魔方陣を完成させてやる、と言って居ましたので、私達が帰って来る頃までにはきっと完成して居る事と思います。」

「一日半も掛かるこの道程をそんなに直ぐに移動出来るようになると言うのか?」

「はい、実際、今日此方へ来るに当たって、シーマを発ったのが昨日の夕暮れ時近かったはずです。

 しかも、途中山を掘り、トンネルと言うものを作ったらしいので、馬車でも凡そ丸一日も有れば着くのでは無いかと思います。」

「トンネル?初めて聞く単語であるな。」

「はい、何でも山に穴を掘って、平地のように通れるように貫通したと言って居ました。

 舗装もしたので馬車も揺れないと豪語して居ましたが・・・」

「そうか、早速調査の使いを出してみよう。」

 まぁ、私もなんだか良く判って無いのだから突然そんな事言われても信じられないですよねぇ・・・

 傍から聞いて居た王様も、首をかしげて居たのを私は見てしまった・・・

「そうじゃ、聖女殿、今日の晩餐に招待されてくれまいかな?」

「め、滅相も御座いません、私など、食事マナーも知らぬ下賤なる者です、そのようなお誘いは大変嬉しいですが辞退させて下さいませ、私が恥を搔くのは構いませんが招待された王様の恥に成ってしまいますのでご容赦を。」

 と言って慌てて下がり、王様の寝室を後にした。

 外に出ると、キースが退屈そうに待って居てくれた。

「おう、終わったのか?」

「うん、何とか。」

「よし、ンじゃ帰ろうぜ、ってか、今日の宿取って無いんだよな、セドリック様が泊めてくれるっつーからセドリック辺境伯様の王都邸に行こうぜ。」

 ああ、なんかホッとした、ついて来てくれてありがとう、キース、やっぱこう言う優しい所が大好き。


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