尋問
尋問
とりあえず、身動きだけは出来ないようになって居るので安心して尋問が出来る。
相手の体勢がちょっと問題だけどね・・・
誰が天井からブラぁ~ンと吊るせと言った!
人間ペンダントトップにすんなぁっ!
とまぁ、マカンヌさんへの苦言はこの辺で抑えておこう。
「さぁ、尋問を始めようか?」
「く、貴様、こんな状態で何を話せと言うのか!」
「まぁそうなるわな~、だけどうちの縄師がどうしてもこうしたいと言って聞かないのだよ、我慢してくれ。」
「お前は次期皇帝の我に対しての口の訊き方がなって居ないのだ!」
「そんな恰好でブラぁ~ンとぶら下がって動こうとする度に廻っちゃってるあんたに言われても思わず吹き出しそうになるだけなのでそろそろやめて貰えますか?その態度。」
あ、思わず本音を口に出してしまった。
「なっ! 貴様さては我を笑いものにするつもりかっ!?」
「そんなつもりだったら初めから貴方の国の民衆の目の前にこの状態で放置した方が面白いでしょう?
私と二人しか居ねーんだからいい加減腹括って欲しいって言ってる訳よ、それとも、いっぺん死んで見る?この場合社会的にだけどね。」
「くそう、こんな辱めを受けるくらいなら死んだほうがましだ!」
「あっそう、そんな事言う子はこうだよ!」
と言って、くすぐってやることにした。
「ふ、うは、や、やめろ!き、貴様、卑怯だぞ!」
「卑怯と言われてもやめる訳にはいきません、それに、卑怯とかでは無く楽しませて頂いてるだけなので、私としては。」
「わは、な、何だとっ!?」
「だからぁ~、素直にならないでずっと頑張ってくれるとぉ~、私もぉ、楽しみが続いていいのよ~。」
皇子の耳元でマカンヌさん張りの口調で囁くように言って見る。
「ひ!辞めろ、辞めてくれ!わははは! 判った!判ったから! 態度を改める!」
「えぇ~、もう辞めちゃうの?詰まんねーな。」
「やはり楽しんでるではないか!」
仕方ねぇな、ちゃんと質問するか。
「んじゃ冗談は置いといてと・・・では質問します、貴方は第一皇子で間違いありませんね?」
「ああ、間違いない。」
「では、年齢はおいくつでしょうか。」
「間も無く、16だ、私も一人前の男として認められると言う物だ。」
「ふぅん、年下じゃん!」
「な!貴様未だ12~3位と思って居たが!?」
「ほら、その貴様とかそういう態度! 私の方が年上なんだからね、生意気言ったら本気で窒息するまでくすぐるよ。」
「わ、判ったって、もうそれは勘弁してくれ。」
「私の肉体年齢は、16なのだ、エッヘン。」
「肉体・・・年齢???」
「そうだぞ、肉体年齢で歳を言う事にしたのだ、私はすっげぇ年寄りだからな!」
「見た目は12~3だぞ、年寄って幾つだよっ!」
「735歳だけど何か?」
「はぁ?そんなに生きられる訳ないだろ。」
「私はな、この世界に連れて来られたのだ、自称神とか言うふざけたじじいにな。」
とうとうおっさんからじじいに成ったが気のせいと言う事で。
「く、そうか、御使いだったのか、お前、それならそうと、戦争を仕掛ける前に言っておいてくれ。」
「そんな事知らんがな、っつーかどうやって教えろと言うの?
私はこの世界に放り出される前にあのじじいが何か言って居た気はするがそんなもん憶えて居ない、つまり何をすれば良いのかも知らんまま、モンスターが出る森に放置されて居たんだぞ。
だから私は自分の好き勝手に生きるのだと決めたのだ、その私の前に立ちはだかったりするからこう言う目に合うのよ。」
「そうか、使命を知らぬのか、普通の転生者と言うのは使命を持って転生し、普通に人の子として生まれ、使命を果たす為に知識を蓄えて育ち、事を成すと言われている。
確か今の魔道具を広めた者が転生者であったはず。
だが異端扱いされて処刑されてしまったようだが。
しかしお主はいきなり森の中に居たと言うのか、いつ頃だ?」
「3カ月ほど前だね、勿論赤ん坊とかでは無く今の姿でね。
あ、私の場合、前の世界では違う姿をしていたけどね、まぁ今の姿は私の子供時代の姿そのものなんだけどさ。」
「そうか、前世で700年以上も生きて居たのであればばあさんになって居たのだな?」
「いや?男の姿だけど?」
「何?前世は男だったのか?」
「違うって、今の姿は私の子供の頃の姿と言っただろ?」
「お前の言って居る意味が解らない、子供の頃に女性だったのに何で男性の姿で生きて居たのだ???」
「人の肉体を捨てて人工的に作った体で生きていたからだ、そしてそのお陰で700年以上もの人生を生きたの、判んないかなぁ・・・」
「判ってたまるか!支離滅裂で何を言って居るやら。」
「どこが支離滅裂だ、順を追って説明しただろう?今。
義体と言う奴を見せてやった方が早いか?」
「義体? なんだそれは。」
「じゃあ特別に見せてやる、これが義体だ。」
マカンヌ用の製作途中の全身義体を収納より取り出してやる。
「何だ、これは・・・」
「これが全身義体だ。 未だ作っている途中だけどな。」
「これが完成したら、お前がこの姿に成ると言う事か?」
何故か少し顔を赤らめている気がする。
「いや、これはお前をこんな風に縛ったあの変態人妻用のだよ。」
「あんな危険人物に長寿命を与えるのか?」
「いや、あのな、実はああ見えて元勇者の奥さんなんだ、その勇者は既に全身義体に成って全盛期の強さを大きく凌駕して居るけどね。」
「それだとますますダメなんじゃ無いのか?タダでさえ化け物じみた強さの勇者に、化け物じみた強さの変態がくっ付いて回るって・・・」
「うん、私もその点を考えると下手な約束しちゃったかなぁとは思う、でもなぁ、あの酷い騒音の安眠妨害は奥さんも全身義体にしてケーブル接続して作った仮想空間でエッチしてもらわないと解消できないんじゃ無いかと思ってつい承諾しちゃったんだよねぇ・・・」
視線を斜め下に外しながら呟き、ため息をつく私を見て、皇子が同情的な視線を投げかけたのは秘密である。
って言うかいつの間にか私が色々喋ってる気がするな、何だか立場が逆だぞ?変な状況に成ってることに気が付いた。
「ってそうじゃ無くてアンタを尋問してるんだってば、何で私が色々喋ってんのよ! 私が相談してるみたいになってるしっ!」
「ああ、済まぬ、冷静に落ち着いて話してみると割と気さくで良い奴だと思ったら、つい、な。」
「う、うるさいっ! そんな事言って褒めたって、何も出ないんだからねっ!」
ついツンデレみたいな発言をしてしまった。
でもな、なぁ~んか似てるんだよね、この皇子・・・私の唯一の旦那に、雰囲気が、ね。
だからつい、話したくなっちゃうと言うか。
まぁ、態度は全然違う感じだったので、こっちに転生して居るとは考えにくいけどさ。
気を取り直して尋問を再開。
「で、あなたの名前は?」
「ランクル帝国第一皇子、プリウス・ラ・クラウン・オブ・ランクル3世だ。」
あ、割と国としての歴史は長そうだな、この3世とか付くってぇ事はさ。
「ランクル帝国ってのは歴史が長い帝国なのかな?」
「300年続く帝国だ、今の皇帝、わが父は13代目の皇帝だ。」
そうだったのか、ナノマシンは文献に乗ってる歴史までは調べて来たけど、言い伝えられている歴史までは調べられないからなぁ。
「あ、ちなみに今の皇帝って、もしかしたら死んでるかもしれないけどそうなると貴方が新皇帝って事で良いのかな?」
「普通にそうなると思うぞ、継承権第一位だからな。
それにしても、死んで居るかも知れないとはどう言う事だ?」
「それは、私が大魔法で城を分子レベルにまで粉砕したから?
足りなければ戦争やって他所から奪えば良いって言う盗賊の頭目みたいなやり方について行けないっつって離反する兵士も少なくはなかったみたいだから私の魔法で死んで無くて暗殺されてるって気もするし、もしかしたら私の大魔法の直前に脱出してまだ生きてるかも知れない所謂生死不明ってとこなんだけどね。」
「成程、そうか・・・って城が消えたのかぁっ!?」
「うん、アッサリとね。 なぁ~んにも残って無いよ?」
「ば、馬鹿なっ!」
「あ、見たい?そうだよね、自分の目で見なきゃ信じられないよねぇ?」
「こ、ここから出してもらえるのか?」
「暴れないって約束してくれたら出してあげても良い、でもその前に、歩くくらいは出来るように縛り直させてもらうけどね。」
「ああ、ここは窓も無ければ周囲の音も拾えない、こんな所にいつまでも放置されたら気が狂ってしまいそうだ。」
「じゃあ、大人しくすると約束してくれるかな?まぁもしも暴れたとしても、君の剣は私が隠してあるから大した脅威にはならない、クリスにでも投げ飛ばされて終わるだろうけど。」
「判った、約束しよう、早くこの恥ずかしい縛り方を解いてくれ。」
「っつー事で変態女よろしく。」
「ンもう、エリーちゃんに罵られるのも癖に成っちゃいそうよぉ。」
マカンヌさん、出て来て早々にマゾ気質までも開眼しないで欲しかった。




