反撃4
反撃4
「私に言わせればむしろ何で砂漠なんて勿体ない土地を放置しておくのかが不思議なんだけど?」
「そんなに簡単に言ってくれるな、これでも様々な手は尽くして来たのだ。」
「まぁ、普通に対策してもダメだよね、私とは科学レベルが違い過ぎるからね。 でも私に掛かれば来年には砂漠は草原に成ってるわよ。」
「それは是非、お願いしたい!切実なのだ、食料が明らかに不足しておるのだ!」
偵察用ナノマシンのお陰で知って居るのだけど、大臣の一人が縋り付いて来た。
「じゃあ、皇家消えても良いよね。」
「く・・・やむをえまい・・・皇帝陛下には申し訳無いが、ここは尊い犠牲に成って頂こう。」
あらぁ、そんなあっさり裏切るんだね。
今は好都合だけど、そんなあっさり裏切る奴はやっぱ信用できないよね、これは殺さないまでも永久に日の光は見せてあげられないかな。
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そしてそろそろ刻限が来たようだ。
「さて、そろそろアナウンスしようかな。」
「お、ついに時間か、俺達はどうする?」
「う~ん、万一抵抗が有った場合にと思ってついて来ては貰ってたけど、思いのほか抵抗が少ないんだよねぇ、まぁこれから私は最大級の魔法で城を爆散させるから、もしもその過程で出て来た兵士に抵抗されるようならお願いしようかな。」
「エリーってさ、そういう怖い事を、何でも無い事のように口に出すよねぇ~。」
聞いてても顔色一つ変えないで笑顔のクリスには言われたくないんだけど?
私だけが悪者みたいに言われるのは心外だ、解せぬ。
なんか納得行かないけどいい加減アナウンス始めよう。
外部スピーカーのスイッチを入れた。
ピ~ンポ~ンパ~ンポ~ン
「シーマ辺境伯軍より、お知らせします。
間も無く、締め切りのお時間となります。
後、五分ほどで、城を、極大魔法にて、吹き飛ばします。
皆様、お誘い合わせの上、ご鑑賞下さい。」
アナウンスを終えたとたんに、一人の兵士が飛び込んできた。
「申し上げます、ただいま、第一皇子、第三皇子、第二皇女、第三皇女、第四皇女が一般市民に混じって投降いたしました、既に身柄は確保済みですのでお連れ致しますか?」
連れて来られてもなぁ、これから城を粉々に粉砕するってのにさぁ・・・
仕方なく、もう一度外部スピーカーのスイッチを入れる。
ピ~ンポ~ンパ~ンポ~ン
「皇帝陛下、並びに皇后さまへ、迷子のお知らせをいたします。
第一皇子、第三皇子、第二皇女、第三皇女、第四皇女の五名様が、民衆に紛れてこちらへ投降されました。
恐らくはお間違えでは無いかと存じますので、見受けの使者をお出しに成られて下さい、城ごと焼き尽くすのは、それまで待ちますので、お早めにお願いします。」
「鬼か。」(カイエン)
「鬼だな。」(キース)
「いやぁん、もっとぉ~。」(マカンヌ)
「オーガよりヤベェにゃ。」(オーブ)
「下手な悪魔より質が悪いんじゃない?」(クリス)
「流石、ハイエルフ様・・・尊い。」(・・・)
お前ら絶対可笑しいだろその感想、若干二名は謎発言だけど・・・
そんな事やってたら、第一皇子が怒鳴り込んで来た、誰よここに連れて来た奴。
「おい!責任者を出せと言って居るだろうが!」
「おい、ここに連れて来るなと言っただろ、誰だ、つれて来ちゃったおバカさんは!」
「すみませんエリー様、報告に上がる所を足止めして居た衛兵を押しのけて後を着けられました!」
さっきの報告に来た奴だったか、チクショウ。
それにしても、この阿保そうな皇子、うちの兵士に怪我させやがったな?
「クリス、すぐ治療を!」
「判った!」
「おい、小娘お前が責任者か!?」
「随分と横柄ですね、民衆に紛れて投降して来たくせになんつう言い草、そして大事な部下に怪我をさせられたとあっては私はあなたを敵認定せねばなりませんね? 今この場で首でも刎ねられたいですか?」
「何だとっ!? 貴様私に向かって何と言う口の訊き様! 万死に値する!」
スラっとサーベルを抜こうとするが、私は一瞬で間合いを詰めてその剣を蹴って落とし、胸座を掴んで皇子を持ち上げる。
「ぐっ!」
じたばたする皇子を、機器が唯一無いブリッジの戸に叩きつける。
「うっせーんだよテメェ、誰に向かってっつったな、答えてやるよ! 敵国から投稿してきた捕虜だ! それ以上でもそれ以下でもねぇ! どっちが立場が上か分かったら大人しく独房にでも入ってろってんだよ判ったかこの薄野呂め!」
そう言って、目いっぱい手加減して皇子の鳩尾に蹴りを入れる。
「ぐぁっ!」
そうして皇子は気を失ってしまった。」
おかしいな、ちゃんと手加減したんだけどな・・・身体強化もしてないのに。
「エリー、流石にやり過ぎだろ、今のは。」
どっちの味方だよ!キース!
「あ~あ、やっちゃった・・・」
クリスはそう言うと急いで皇子にヒールをかけ始めた。
「待て待て、私はちゃんと手加減したぞ?身体強化すらしてないこのか弱い乙女の力で蹴られた程度でこれはちょっと私も引くわ。」
「え? マジ?」
「私は嘘は言わない。」
「もしかしてこいつ、超弱い?」
「多分そう言う事だと思う。 むしろ初めの胸座掴んで投げた方がダメージデカい威力だった筈なんだけどねぇ。」
「成程、ほとんど鍛えて無かったっつー事か・・・」
「とりあえずまた暴れられては洒落に成らないと言う事で、拘束衣を着せて置くか。」
それにしてもこの馬鹿皇子、持ってる剣だけは相当な大業物なのでは?
こんな大した事の無い坊ちゃんが一振りしただけで辺境伯の兵士が怪我するんだから驚く。
当然そんな物騒な物は没収。
剣を拾ってストレージに入れようとしたらキース達にジト目で見られた・・・ 別に私のにしようなんて思ってる訳じゃ無いぞ?
ここが一番安全だっつ―だけだ。
何故そんな目で私を見る・・・解せぬ。
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で、結局最後のアナウンスの後10分を過ぎても使いの者は現れない、うん、こりゃ皇帝逃げたな、まぁ良いや。
ピ~ンポ~ンパ~ンポ~ン
「皇帝陛下へお知らせします、先程のアナウンスに、未だに何の返答も無いと言う事は、ご子息をお見捨てに成られたとみなしまして、これより、城に対し、極大魔法を放ちます。
危険ですので、お早めに退避くださいませ。」
うん、我ながらショッピングモールのアナウンスみたいで面白いぞ!
「んじゃちょっとやって来るね~。」
そう言うと、ブリッジのサンルーフを開けてキャプテンシートを上昇、そして、実は必要無いんだけども詠唱なんてのを格好つけてやってみる事にした。
「賢者エリーの名の下に、周囲の精霊に命ずる。
風よ、光よ、集え。
我らが怨敵に鉄槌を下し賜え。
風よ集いて熱を発せよ、光よ集いて熱となれ。
熱は集いて全てを破壊し焼き尽くす地獄の業火となる。
集束せよ! 我が前に立ちはだかる大いなる壁を打ち砕け!
メガ・フレア!」
城の周囲に無数の魔法陣が投影され、その中心たる城が集まった光にかき消されたように見え始め、次の瞬間、大爆発が発生し、城は一瞬にして蒸発、その全貌を完全に消し去る。
その様子を、大臣以下捕縛した要人達は茫然と眺めていた。
「終わったよ~、これで完全勝利って事で良いよね。
早々に逃げちゃってたのは解ってるけどさ、そんなヘタレはほっとけばいいし。」
「で、城まで蒸発させちまってこれからどうするんだ、エリー。」
「そうだね、手始めにあの阿保皇子を調教する所から始めるかな?」
「調教!? なんて甘美な響きなのぉっ!」
腰をくねらせながら発言するマカンヌさん、あんたはややこしくなるから出て来ないでくれるかな?
「ま、まぁとにかくあの阿保皇子、拘束衣じゃ走って逃げだそうとしそうだから、ちゃんと縛り上げて置かないとダメだよね・・・どうしようか。」
「私に任せて!得意だから!」
又出て来たよマカンヌ、まさかとは思うけど拘束には自信ありそうなマカンヌさんに阿保皇子の拘束を頼んでみる事にした、いやむしろあまりにも煩いのでやらせるしかなかったと言った方が良いか?
で、結果・・・やっぱそう来たかぁ・・・何処でそんな縛り方を覚えたんだこの変態人妻は・・・はぁ、やらせるんじゃ無かった。
でもまぁ、一応身動きは取れないようになっては居たので、このまま尋問と調教をするとしよう。




