反撃3
反撃3
なんやかんやで、昼頃。
『間も無く目的地が目視出来ます。』
私の電脳に、ジャイアントクルーザーのナビのアナウンスが届く。
どれどれ、どんなものか見てやろうじゃないか。
ブリッジへと移動した私は、目前に見える城郭とその下に広がる城下町の様子に呆れるしかなかった。
「何となく予測は出来たけどね、ここ迄とはねぇ・・・」
思わず溜息が出た。
一番国境に近かったモイヤー伯爵領はまぁまぁ普通な感じだったが、こりゃぁ相当な吸い上げが行われて居たんだろうなと思える物だった。
ぐっと高台に有ると思われる城は、その規模が真面ではない、あんなデカい城をあれっぽっちの城下町で支えるなんてとんでもないけど不可能と言う代物だった。
高さ8m以上は有りそうな塔が8本もある。
こりゃそうとうだぁねぇ~・・・、所謂日本の城で言う所の天守閣に当たる建物なんか、巨大宇宙港よりも広そうな面積使ってそうだよなぁ。これだと既にこの付近から街が広がって無いと維持できそうに無いんだけど。
これは何とかしないと一部の貴族や皇族が我が物顔で支配する中で平民は奴隷のような生活を強いられているに違いない。
ここまで凸って来て正解だったな。
今ブリッジに居るのは、私の他は、クリス、ザイン、オーブ、キース、カイエン、マカンヌだ。
何だか戦力外が一人だけ居る気がしないでも無いが、少し前までラブラブしてたらしくてカイエンにべったりくっ付いて離れないので仕方なくそのままついて来るのを許可した次第である。
「噂には聞いて居たが、凄まじく巨大な城だな、城下町の規模とのアンバランスさが際立つな。」
カイエンが呆れたように口に出す。
「そうねぇ~、あんなにおっきいときっとキツイと思うわよぉ~。」
マカンヌさん、あんたが言うと違う意味に聞こえるのは気のせいですか?
クリスとザインが一斉に顔を赤らめてる、やっぱみんな同じこと思ってるのか・・・
多感な時期の子達には刺激が強すぎるからやめたげてっ!
「国民の事なんだと思ってるんだ、孤児も多そうな気がして来たぜ、無責任も大概にして欲しいよな。」
良いタイミングだ、ナイスアシストだキース!
ウッカリしたら下ネタ方向に話題が流れそうなところをうまく軌道修正してくれた、流石脳筋!
「私もそう思う、生活困難者やホームレス、孤児を増やすような行為は国にとっても不利益な筈だ、なのにそれをすると言うのは目先の利益を追求してしまった馬鹿で無謀な行為と言えるだろうね。」
「経済的に見ても不利益なのか、もしかしたらそれで苦しくなったから戦争なのかもしれないな。」
おお、脳筋のキースにも理解できたみたい!
それにしても、やっと皆にも段々仕掛けてきた理由が見えて来た気がする。
「理由は100歩譲って仕方ない事にしたとしても、戦争に持っていく思想は許せる物じゃ無い、あのアホ子爵が正々堂々と口上を述べてたからね、こっちもちゃんとやるよ、都市直撃戦闘って事もあって国際法的にも警告せねば成らないと思うのよね。」
「ん? 国際法ってなんだ?そんなの在ったか?」
「げ! もしかしてそんなの制定されて無かったりするの?」
「うん、多分、無い! 聞いた事無いな。」
寄りによって各国旅しながら魔物退治してた経験がある元勇者に断言されたよ・・・
「マジ? どんだけ水準の低い世界な訳?
まぁ良いわ、此方も警告文は読み上げる積りだから。」
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ついに街壁迄1kmを切ったのでジャイアントクルーザーを停止させる。
ハッキリ言って街壁よりもこのブリッジの方がずっと高さが有るのでもうこの辺りまで来ると街並みが見えている状態である。
さて、どんな口上・・・と言うか警告をしようかなーっと・・・
アナウンス前に音出しとくか。
外部スピーカーのスイッチを入れる。
ピ~ンポ~ンパ~ンポ~~~ン
「此方は、グローリー王国シーマ辺境伯領遠征兵団、臨時指揮官、エリー・ナカムラと申す者です。
お元気ですか? 私は途中色々あって楽しめたのでいつも以上に元気です。
この度、仕掛けられた戦争を終わらせるべくしてお伺いして居ります。
A級戦犯に当たる高級官僚の皆様並びに、皇帝陛下の皆様は、速やかに、投降して下さい。
只今より、半刻以内に投降されない場合、戦闘を開始するものと致します。
尚、一般市民の皆様に関しましては、受け入れ態勢が整って居りますので、皆様お申し合わせの上、同じく投降なさって下さい。
万一、投降されない場合、全て敵兵とみなし、攻撃対象となりますので、お気を付け下さいませ。
A級戦犯の方々の人相、並びに網膜パターンは、既にこちらの認証システムに登録済みですので、逃げようと隠れようと、一般市民に紛れようとも見逃す事は有りません。」
スーパーのアナウンスかっつー突込みは受け付けておりません、敢えてそうしてるから。
ここまで言うと、何だか知らんが変な鳥のような嘴のある奇妙なトカゲに跨った兵隊が門から飛び出して来た。そしてジャイアントクルーザー目掛けて槍を構えて突撃をして来たが、そんな物がこの巨体に効く訳も無く・・・あっさりと落馬・・・いや落蜥蜴?
そして出て来いとか宣っている様なので、強化装甲の一機で出迎えに行ってやることにした。
「貴様があのふざけた口上を述べた者か!?」
「あたり~、で、どうしたの?」
「どうしたもこうしたもあるか! おかげで街は大混乱だ!」
「そんな事知らんがな、戦争仕掛けて来たのはアンタらでしょうに、わざわざ市街戦闘は国際法に抵触するからこうして警告をしてやってると言うのに何で文句を言われねばならんのよ?」
「なんだ?その・・・コクサイホウ・・・とか言うのは?」
「は、やっぱそんなもんが無い位残念な水準だった訳ね。 じゃあ何も言わずにジャイアントクルーザーで街壁ぶち壊して乗り上げてすすんどきゃ良かったかな。
あ、そだ! なぁ、お前、皇帝連れて来いよ、そしたら攻撃しないでやるわよ。」
「なっ!? おいそれと連れて来られるもんか!」
「あっそう、じゃあ、とりあえずいっぺん死んどく?」
と言って、バルカンの照準を合わせる。
「ちょ!待ってくれ! 今上司が城に掛け合いに入って居るのだ、もう少し待て。」
「始めからそう言えば良いのに、あんたバカでしょ、ってか、ジャイアントクルーザーに槍で突撃してくるわ、強化装甲で出て来た私に全く臆した様子も無い、どんな蛮勇?」
「いや、このデカいのは、無理だろうなとは思って居たが、あまりにもデカすぎるので張りぼてである可能性を期待して居たのだが、張りぼてでは無かったと言うだけだ。
で、お主が乗っているそのゴーレムは、このデカいのを見て既に驚くのを通り越して居ると言うのもあるが、そんな物に勝てるとも思えぬので開き直っただけだ。」
「成程、良い洞察力だ、気に入った、投降しないか?シーマ辺境伯は優秀な人材が欲しいのだ。」
こんな会話をしている間にも、続々と一般市民達が投降してきている。
そしてついに、大臣の一人が投降してきた。
一般市民に紛れて・・・
はい、アッサリ要人認定されて撥ねられたね。
顔認証にあっさり引っかかったみたい。
「何じゃ!貴様ら!わしを誰だと思って居るか!」
なんか叫んでるけどさ、それ思い切り自分からばらしてる様なもんだからね?
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さて、そろそろ時間だ。
捕らえた重要人物は拘束衣を着せて全員ブリッジに連れて来させた。
宰相と皇帝、皇妃の姿だけは無いみたい。
ちょっと高くなっている司令官用のキャプテンシートに座って挨拶をする。
「ようこそ、ジャイアントクルーザーへ、私がこの隊の臨時指揮官、エリー・ナカムラです。」
さっきから何でフルネームを使って居るかと言うと、タダの平民と思われると舐められるからである。
でも、貴族を語ると罪になるけど貴族とは名乗って居ないのでギリギリセーフだ。
「我々をどうするつもりだ! この奇妙な衣を外して開放せよ!」
「何ですか?いきなり話に成らないとはこの事じゃないですか、ここには勝手に触られると迷惑な機械が山ほど在るので悪戯出来ないように着て頂いた迄です。
それとも、何ですか?
勝手に変な所弄ったおかげでご自分の手でこのご立派な城が木っ端みじんに成っても構わないと?」
「我々はそんな脅しには屈しない!」
「ほう? 面白い事を言いますね、一般市民に交じってコッソリ抜け出してくるような事をしたあなた方が脅しに屈しないなんて奇妙な話ですね、では試しましょうか。」
私はそう言うと、城の最右翼の塔に狙いを付けて、主砲を撃つ事にした。
「良いんですね?見たら後悔しますよ?」
「ふん!やれるものならやって見ろ!」
「判りました、撃て!」
ドンッと乾いた音が小気味良く響き、次の瞬間、最右翼の塔がその全高の半分位の位置でポッキリと折れ、倒壊して行く。
「ね? 脅しなんかじゃ無いって判って貰えたかしら?♡」
可愛く言って見た。
「い、一撃で・・・」
「あぁ、これでもまだ手加減してるのですけどね。」
「何だと?」
「私は実は、こう見えて魔法が使えるのです、例えば城の真下から炎の柱を立てる事すら出来ますよ?」
「魔法だと!? それこそただの脅しに過ぎん!そんな物が存在する訳が無いだろう!」
「でも、さっきので私が嘘を言わない事は証明済みな筈ですけど?
それとも、もっと見たいです?おじ様方。♡」
ここは流石に意見が分かれているようだったが、やはり私は噓を言って居るのだと言う方向に意見が纏まったらしい。
「ふん! 魔法なんて物は存在するはずがない!」
「そうですか、ではお見せしましょうか。でも、いきなりお城を破壊してはだめでしょうからね。
今度は左端の塔を消して御覧に入れます。」
と言って、ブリッジの天井のサンルーフを開け、キャプテンシートを稼働させてそこから外へと出る。
そして、編み出した闇属性唯一の攻撃魔法である重力指弾《《グラビティ―バレット》》を大きめサイズで放った。
黒い玉のように見えるナノブラックホールがゆっくりと飛んで行き、塔に当たると、塔を丸ごと飲み込んで消える。
シートを元に戻すと、呆然とした大臣たちがそこに居た。
「ね?私は嘘は言わないでしょう?」
かなりざわつき出した。
「そこで提案なのですが、今この場で皇帝を処刑する事を許可して頂けるのであれば、極大魔法で城ごと亡き者にし、この地を豊かな土地へと変える精霊と技術を提供しようと思うのですけど如何ですか?」
「なんとっ! あの土地を肥沃な作物の育つ土地に変えられると言うのか?」
そりゃそうだ、私の若かりし頃の地球は、政策が功を奏した事と、不妊治療の技術がファイナルステージになって居たので、人口が爆発的に増加、増え過ぎた人口を支える食料をプラントの生産だけで賄い切れなくなって砂漠の再利用を提唱、大規模な地球改良計画が行われた為にその技術は誰しもが知って居る物となって居た。
砂漠特有の生物こそ絶滅する事とはなってしまったが、砂漠の再生緑化が進んだ事で温暖化も解消して来て居て、結果的に地球の寿命も伸ばす事には繋がって居た、だが結局砂漠の土地を巡っての戦争なども起きて居たりして、治安は悪く成って居たのでは無いかと思うけどね。
そんなこんなで砂漠の緑化の方法なんか既に高校生の頃には既に知って居る基礎知識のような物だったので楽勝なのだ。
私に言わせればあんな簡単な方法を誰も思いつかない方が不思議とも言いたいほどである。
「私に言わせればむしろ何で砂漠なんて勿体ない土地を放置しておくのかが不思議なんだけど?」




