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宇宙戦争時代の科学者、異世界へ転生する【創世の大賢者】  作者: 赤い獅子舞のチャア(実際の人物及び団体とは一切関係ありません)
戦争

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交戦中5(セドリック辺境伯視点)

 交戦中5(セドリック辺境伯視点)

 エリーもジュドーも、少し小高くなっているこの場所で陣を張って強化装甲に乗って見て居ればすぐに終わると言って居ったが、本当に大丈夫なのだろうか、なんせ、此方の人数は凡そ5千人、相手は12万とも13万とも言われている。

 しかも、遠目に見るとバリスタや弩弓まで居るじゃないか。

「ジュドー、本当に大丈夫なのか?勝てるのか?

 私はどうにも勝てる気がしないのだが・・・」

「大丈夫で御座います、旦那様、この強化装甲を20機も参戦させるのですよ?

 それに、エリー様やエリー様の手掛けた規格外冒険者達も参戦して居ります、これで勝てない方がどうかして居ります。」

 そんなこんなしている内に、ランクル帝国の口上が始まってしまった。

「わっわっ、始まっちゃった、どうしようどうしよう。」

「落ち着いて下さいませ、坊ちゃん。」

「わ、私はもう一人前だ、坊ちゃんはやめろと・・・」

「ええ、そうですとも、ですから、もう少し落ち着かれては如何でしょう?」

「ああ、すまん・・・その通りだな。

 私がオドオドして居ては示しが付かない、表面的にだけでも落ち着く事にせねば。」

 そんなことやっている間に、相手の口上が終わり、拡声器を持ったエリーが返礼と言うか、挑発を始めてしまった。

 あまりの事に驚きエリーを止めに走った。

 急ぎ陣より出て行き、エリーに抗議をするも、それすらエリーに逆利用されてしまったのだった。

 怒りが抑えられなくなったランクル帝国兵士が多数、氾濫し突撃して来始めた事で、私は慌てて陣へと逃げ込む、そこには陣テントの中に隠してあった二人乗り強化装甲に既に乗り込んでいるジュドーの姿が有った。

「さあ旦那様、お乗り下さいませ、高見の見物と参りましょう。」

 ジュドーは勝利を信じて疑って居ないようだ。

 セドリックはジュドーに言われるままに強化装甲へ乗り込むことにした。

「それでは旦那様、強化装甲部隊にご命令を。」

「うむ、そうだな。」

 通信機のスイッチを入れ、出撃の下知を下す、すると後方に隠れていた15機の強化装甲と、5機のヘリとそれに抱えられた強化装甲空挺部隊が出現し、戦線へと参加する。

 ランクル公国の一発目のバリスタによる投石は、全てエリーがグレネードランチャーとか言う武器の乱射で全弾粉砕して居た。

 二発目が来るまでにヘリはバリスタへと向かい、完全に沈黙させると、切り離された強化装甲はそのまま弩弓の破壊へ向かう。

 もう大丈夫だろうとホッとした私は全体を把握するべく周囲を見渡すと、何だかすさまじい戦場になって居る様だ。

 冒険者の守る最右翼側では、敵陣のすぐ前まで行って帰ってと往復している様な砂埃が立って居る、これは全身義体とか言う体に変わったと言う勇者当たりの所業か?

 かと思えばそれ以外の右翼付近ではある一定のラインまでしか敵兵が居ない、と言うか、薙ぎ払われて居る様だ。

 もう少し中央に寄ると、明らかにあのエルフの娘の仕業、魔法と思える風や水柱が敵兵を蹂躙して居るし、エリーの中央に関しては、ほぼ敵兵は壊滅、その上で遊撃に出て居るのだろう、敵兵の密度の濃い所へとあのグレネードランチャーとか言うのを撃ち込んで居るのだろう、そこかしこで爆発が起きて居る始末。

 まさに圧巻だ、ここまで強い連中に私の領地は守られて居たのだとつくづく実感した。

 そして強化装甲部隊が守る左翼、ぐいぐいと戦線を押し上げていてもうほぼ壊滅状態だ。

 これがエリーのゴーレムの実力と言う事か・・・出鱈目な強さだったな。

 私は何を一人で焦りまくって居たのだと恥ずかしくなるばかりだ。

 そんな折の出来事だった。

 弩弓最後の一基が三本目の矢を射ったのとほぼ同時に弩弓も完全沈黙したが、この最後の矢がエリーを強襲してしまう。

 そのエリーに矢が刺さる瞬間を、私も望遠で目撃してしまったのだった。

「なっ! よりによって賢者殿が・・・」

「旦那様、落ち着いて、エリー様ならば大丈夫でしょう、あのローポーションの性能をお考え下さいませ。」

 やけに落ち着いているジュドーに対して、まさかのエリーの姿にたじろぐだけしか出来ない自分の弱さがつくづく悔やまれる。

 それと対照的なジュドーの落ち着きようが、本来私がこうあるべきなのだろうと痛感した。

 年の功が出たと言う感じなのか、はたまたジュドーがエリーの同郷だった事で良く知って居る為に落ち着いて居るのか。

 だが次の瞬間、ジュドーにも予想できなかった事態が起こる。

 冒険者の守備エリア中央寄り付近から、青白い光の柱が起ち、突然猛吹雪が吹き荒れたのだ。

 これによってランクル帝国軍の実に3割強の兵士が死傷したと言われている。

 その直後、戦意を失った敵兵士達が軒並み白い布を槍や剣のさやに結び白旗として掲げたのだった。

 ほんの1時間程しか無い戦闘で、勝利をした事に成る。

「おい・・・ジュドー・・・あれは、何だ??」

「さぁ、私には何がどうなって居るのやら・・・ですがあれは、氷の精霊のように見えましたが・・・」

「氷の精霊・・・か・・・そうでも言わなければ説明もつかんな、この時期に吹雪だなどと・・・」

「とにかく、既に勝敗は決したようですし、敵陣地へと参りましょう。」

「ああ、そうだな、ジュドー、頼む。」

「は、かしこまりました。」

 ジュドーが操縦し、そのまま敵陣へと走ってゆく。

 そこへ防衛に当たっていた15機も合流する。

 敵背後に回って居た5機づつのヘリと空挺強化装甲部隊も合流し、敵陣地を囲むようにして、一切の戦闘を停止させる。

 そんな敵陣へと、まるで何事も無かったかのようにピンピンしたエリーが現れた。

「お疲れー、イヤお恥ずかしい所をお見せしちゃった。」

 突然背後に現れたエリーに驚いた。

「うぉっ!? だ、大丈夫だったのかね?」

「たまたま身体硬化が切れた瞬間のほぼ同時に矢が来ちゃってね、掛け直しが間に合わなかった、あははは。

 他の方向向いてたしねぇ、避けるのも間に合わなかったよ~。」

 何だか心配していたのが馬鹿らしくなる程のあっけらかんとしたエリーの言葉を聞いて居て、ああ、この人物は本当に神の御使いなのだなと思った。

 この人物を何としても流出させたくない、心の底からそう思ったが、同時に、多分彼女は、公言通り誰にも縛られないのだろうな、と思った。

「さて、敵将とご対面と行こうか。」

 エリーがそう言って掌を空に向けて何事か小声で何かをつぶやく。

 すると上空に太陽を思わせるような光球が出現して辺りを明るく照らした。

「エリー、それは何だね?」

 私が問うと、これまたあっけらかんとエリーは答えた。

「ん?ああ、これは光の玉を作り出したんだ、私が最近開発して実現した光魔法って奴よ。」

「「「「「「ええぇ~~~~~~っ!!!???」」」」」」

 この場にいた全員があまりの事に驚き、そして、驚いた所でどうにもならんのだろうと言う現実に項垂れたのだった。

「何よ、出来ちゃったんだから良いじゃんっ! 出来ないよりこういうの出来た方が便利だしっ!」

 エリーの言い訳に全員脱力したのだった。

 本当にどこまでも出鱈目な人物だ、敵ではなかった事だけが幸いと思う。

 陣の中を覗くと、そこに居たのは、気の弱そうな優男と、プレートメイルに身を包んでは居るが、腕を切り落とされ瀕死の騎士風の男、誰が見てもうちの寄子のカース男爵に輪を掛けたような悪人面の虚勢を張った男の三名だった。

 恐らくあの口上を述べたのが悪人面だろう。

「貴殿が、この軍の総指揮官のモイヤー伯爵かね?

 私は、セドリック・グランツ・シーマ、この領地の領主だ。」

 優男に声を掛けると、その男は恐る恐ると言った風に、やっと声を出した。

「そ、そうです、わ、私は、こんな戦争したく無かったのだ、始めから反対だったのだ。

 私の領地を半分献上する、どうか命だけは助けて欲しい。」

 モイヤー伯爵と言うと、確か父上と多少の交流があったように思えるのだが、何と気弱な男なのだろう、私のそれを大きく上回る程の弱腰に少々緊張して居た肩の力が抜ける。

 それとは対照的に、その気弱そうな男を盾にするように隠れた悪人面に少し腹が立つ。

 ますますカース男爵と被るのだ。

 もっとも、奴は既に更迭されて多くの余罪によって国王に裁かれ、ギロチンに掛けられることが決まって居るが。

「な、何を言うのですモイヤー伯爵閣下、私は閣下に付いて行くと決めたのですぞ、私の領地迄半分差し出せとおっしゃるのですか!?」

 と、そこへ突然エリーが口を挟んできた。

「あー、そこの小太りは黙ってて。

 おっさん、悪い人じゃ無さそうだしさ、こっちの国に来ちゃえば?

 今なら聖女が国王へ助言してあげられるんだけど?」

「せ、聖女だと?聖女なんて居るのかね?」

「ああ、居るとも、ここに二人も。」

 エリーの背後から、タイタンズの、確かクリスとか言う娘だったかな? その娘が入って来た。

 私も一瞬、え?と思った。

「ああクリス、丁度良い時に来た。

 そこに負傷した騎士が虫の息で横たわってるからお願いしても良い?」

「うん、任せて、師匠。」

「私は弟子にした覚えは無いんだけどな。」

 クリスがランクルの瀕死の騎士の脇に座って、何事か唱えると、負傷兵の恐らくは致命傷になって居る傷が輝き始めた。

「な!なんとっ!」

「ね、紛れも無い聖女の力でしょう?

 クリスが神聖魔法を見せたのだから私はこっちにしようかな。」

 エリーはそう言うと、何もない空間から薬草を取り出すと、手の上に何だか妙な空間を作り出し、その中で薬草がどんどん形を変えていく。

 そして強く光り輝いた。

 ひかりが収まると、そこには私の知って居る物よりもずっと強い光を湛えた液体の入った、在り得ない程透明感の高いガラス瓶が。

「ハイ完成、クリス、これを。」

「はい、師匠。」

「師匠じゃないっつーの。」

 その薬を瀕死だった騎士に飲ませると、まるで息を吹き返したかのように、何事も無かったかのように立ち上がったのだった。

 切り落とされた腕までは戻らないらしく、切口だけは塞がって居た。

「あ、あれ?私は・・・」

「良かったな、こんな所に聖女が二人もいて、片っぽだけでは助からなかったかも知れない。」

 エリーはこういう時しっかりと手柄を主張する、中々に食えない。

 すると騎士は、辺りを見回し、この場に存在する女性がエリーとクリスだけであることを確認し、二人に感謝の言葉をのべつ幕なしに連呼した。

「私はランクル帝国の騎士爵、チック・バッカーだ。

 もう妻の顔を見れないかと思って覚悟をしていたが、こうして生かされた事を心より感謝する。

 ありがとう、ありがとう・・・・」

 呆然とぼんやり見て居ると言った感じだったモイヤー伯は、急に我に返ると、すぐにでも所属国を変えたい、取り計らってくれれば男爵位迄降格に成っても構わないと嘆願をしたのだった。

 それを聞いたショーン・ネーザン子爵が突然吠え、襲い掛かった。

「こ、この裏切り者め~! 死を持って償え~!」

 こう言う時に真っ先に動くのはエリーだと思って居たのだが、エリーは微動だにせず、動いたのはクリスであった。

「あんた上司を殺す気?!」

 両足で蹴る変った飛び蹴りをして子爵の剣を叩き落とした彼女は、そのまま組み伏せるかのような動きをした後、子爵を持ち上げて後ろに投げた。

「おお、見事なフィッシャーマンズスープレクスだな、流石は捨てゴロ聖女w」

 何かエリーが冷やかして居るが、何かを茶化しているのだろうとは理解できるが何処を茶化して居るのか迄は解らなかった。

 そんな背景の中に、頭から叩き落されてそのまま逆さに地面に刺さって高々と上げた足をヒクつかせて居る子爵が痛々しい。

「師匠のせいでしょ、こうなったのは。」

 と言ってクリスはほっぺたを膨らまして居る。

「私は戦えるように技を伝授しただけでどんな技をどこで使うかを選んで居るのはクリス本人だと思うけどね? だから私は師匠じゃ無いのだよ?」

 と言ってニヤニヤ笑いをするエリー。

 こんなに強い子達なのに何故かこの場に流れる空気が無性に緩いのは謎の一言だ。

 ふとジュドーを見ると、笑いを押し殺したような表情で堪えている・・・

「くくく・・・」

 う~ん、何だろう、まぁ勝ちは勝ちだから良いか。

「ジュドー、あの見苦しく痙攣して居る者を捕らえて戦犯として裁判に掛ける、連行せよ。」

「か・・・畏まりました・・・ぷっ。」

 あ、ちょっと噴き出した。

 ジュドーのツボに入ったのはどの辺だろう・・・

「い、犬・・・犬神・・・くっくっく。」

 イヌガミ??

 イヌガミとは何だ??

 ジュドーのツボに入ったのはその辺りなのだろうが意味が解らなかった。

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