交戦中2(キース視点)
交戦中2(キース視点)
間も無く開戦だ、俺は一応盗賊討伐等で対人戦の経験は有るが、未だ人を殺した事は無い、だからかなり心拍数は高いし、果たして出来るのだろうかと少し心配に成って来て居る。
開戦前にカイエンのおっさんに出来るのかと聞かれた時には、楽勝と答えたけど正直あまり自信は無い。
エリーの話だと、俺の脳に埋め込まれた電脳って奴が恐怖耐性を調節出来ると言うので、まぁ人を自分の手で殺すと言うのはある種の恐怖なのだろうと思い、うまくそれが働いてくれる事を信じてこの場に立って居る。
何より、俺とザイン、そしてカイエンのおっさん、ギルマス、エリーの五人だけは強制参加にされたのだ。
まぁそりゃそうだよな、戦闘能力で言えば俺達電脳組に敵う者は居ないだろうしな。
つい先日、何故か一日休みにした翌日にザインが精霊と契約したとか言って信じられない芸当をやってのける事が出来るようになって来たのだ。
ザインはハイエルフ様から紹介して貰ってお友達になったとか言って居たけど、エリーの事だからぜって―ザインに電脳化手術したに違いない。
それにしても俺も初めて精霊とやらを見せられてちょっと驚いたよ。
っつーか、そうこうしてる間にエリーの奴、変な魔道具で声をでかくして相手の事煽ってるし!
煽るなっつーの、止めてくれよ、あ、ほら、暴走した兵がこっちに向かってきた・・・
ってあれ?纏めて来られるよりこの程度の人数で掛かって来られても何とかなりそうじゃん、そうか、あいつコレが狙いだったか、じゃあ俺も期待に答えて殲滅してやろうじゃんか!
エリーに仕立てて貰った二本の大剣を抜き、構える。
敵兵は走って来てるけど、あんなフルプレートで走って来るなんか愚の骨頂だ。
ゆっくり歩いて出迎えてやろう。
ホラな、俺と接敵するまでに息が上がってる奴が多数。
怒らせて判断を鈍らせると言うエリーの作戦、ドはまりだな。
人を斬るのは初めてなので恐怖耐性を最大まで上げて見る事にしよう。
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そのままダラダラと開戦に成ったみたいなので、容赦無く自慢の大剣を振り回してやる。
それにしてもとんでもない切れ味だな、この剣、フルプレートの鎧ごと斬首とか出来ちゃってるよ。
やはり恐怖耐性を上げたのは正解だったかも知れない、何にも考えずに敵兵を葬って行けている。
お、こいつ、俺の剣を止めやがった! と思って、顔を拝んでやろうと相手のフルフェイスタイプの兜を蹴り上げてやったら、こっちが一瞬驚いた。
ゴリラの亜人だった!
「チっ!ゴリラ亜人かよっ!」
「貴様!初対面の者に対して失礼だぞ! 私は列記としたヒューマンだっ! ライン戦線のゴリラと謳われたガンダルフ・アームストロング准男爵とは吾輩の事ぞ!」
「え~、もしかして20年前の乱戦時代の帝国の六英雄の一人だとでも言う訳?
だとしたらものすげージジイじゃねぇか、そんな筋骨隆々の肉体維持出来る筈ねぇだろっ!」
と言って俺の剣撃を受け止めていた大型のバトルハンマーをはじき返す。
「ガハハハハハ!小童め! わしの事を知っとるか!その知識に免じて次の一撃で脳天かち割って苦しまん様に終わらせてやろう。」
「チ!冗談じゃねぇよこの爺さん、マジで本物かっ!」
「そう言っとろうが! おりゃぁっ!」
「当たらければどうと言う事は無いっ! うりゃぁっ! その首貰ったっ!」
切ったと思ったその次の瞬間、俺の体は後方へとふっとばされた。
「ぐ、なんつー蹴りだこのジジイ!」
「グハハハハハ!マダマダじゃな! だがわしも少し臆したわ、一撃が入れられぬとは!」
と、その次の瞬間、ザインとクリスの声が同時に戦場に響いたのだった。」
「「エリー!死んじゃダメーーー!!(ハイエルフ様ーーー!!!)」」
その声の方をつい向いてしまう。
そこには、弩弓の矢を受けるエリーの姿が有った。
あの小さな体に、弩弓の太く大きな矢が貫通して居る。
「小僧余所見するな!戦場じゃ!」
アームストロングじじいのバトルアックスが既に目前へと迫って居たが、その時思考加速と高速移動の強化スキルが同時に発動した。
一歩目で紙一重でバトルアックスを交わした俺は、二歩目を踏み抜くように地面を揺らしつつ二本の大剣を一回転するように振り抜いた。
次の瞬間、あのとんでもない強さで俺を翻弄して居たアームストロング爺さんのバトルアックスがまるで只の木の枝のようにスパッと切れ、すぐ次の瞬間に、アームストロング爺さんの体が上半身と下半身に分かれたのだった。
俺は、結局最終的に、同時に4つ程のスキルを発動して居たらしい。
電脳って奴はどこまで出鱈目な性能なんだろう・・・
なんだかこんな所でもエリーに助けられた気分だ。




