突然の再会
突然の再会
-MkⅢ-
今日もスパイダーナノに搭乗する兵士達の訓練を見ていると、そこへ、下級兵士が伝令にやって来た。
「皇妃エリー様へ来客との事です。」
「未だ結婚してねってばw
来客?誰よ、私がここに居る事知ってるのなんか数知れてる筈なんだけど。
まさかパメラ達って事は無いだろうし・・・」
「尚、そのお客人はこの訓練に参加する意思があるとの事です。」
「は?? どう言う事?? 意味が解らない。」
「と、兎に角お通ししても宜しいでしょうか?」
「そうねぇ、まぁ訓練一緒にやるってんだから悪い奴では無いでしょう、連れて来て良いわよ。」
「はっ、只今お連れ致します、しばしお待ち下さい。」
早足で行こうとする伝令君に「そんなに急ぐと誰かと鉢合わせして居たい目見るわよ。」と声を掛けようと切り出すのとほぼ同時に、訓練中にねん挫した兵士を救護室に連れて行ってたうちの団長候補が偶然戻って来て、早速激突して居た。
「す、すみません、すみません!」
「何だ君は、落ち着きたまえ、伝令のようだから急いで居たのは判らんでも無いが、俺だから良かったようなものの、そこいらの貴族様とはちあわせ何かした日には、死罪にされるぞ?」
「ああ、こいつ慌ててたみたいだからぶつかったのが君で良かったよ、マイケル。」
「ああ、エリー様、えりーさまへの伝令でしたか。」
伝令君に向き直ると。
「咎めたりしないから行きたまえ。」
「は、はい!すみませんでした!」
で、結局小走りに消えて行った・・・大丈夫か?アイツ。
暫くすると、さっきの伝令君とはまた違った下級兵が、どうやら私の客とやらを先導して連れて来てくれた・・・の、だが・・・
その来客っつーのがなぁ・・・orz
「エリーちゃぁ~ん!おっひさぁ~!」
出合っちまったよ、二度目の出会いを・・・
ルイ・アームストロング、そう、オーブちゃんの兄弟子の、筋肉ダルマの怪物オカマだ。
相変わらず白いワンピースにセレブなご婦人のかぶってそうな鍔の広い帽子が、被って居ると言うよりもデケェ頭の上にチョコンと乗っかって居る。
はぁ、手合わせすんの私かよ。
本体に再会して欲しかったよね。
「ルイちゃん!オヒサ~。」
若干ヒキツリ気味の声色で答えてしまう私。
「手合わせしましょう! 私が負けたらこの部隊に参加して一緒に訓練受けるわよ!」
やっぱそう言うアレだったか・・・
仕方ねぇかぁ~、出会っちまったんだもんなぁ、強引に会いに来たんだけれども、それだけ試合いたかったんでしょうしねぇ。
「仕方ないか、判ったわよ、試合しましょう。」
「ありがとう、貴女ならそう言ってくれると思ってたわ、強者な貴女なら。 何処か着替えられるところ、無いかしら?」
「この人に更衣室使わせてあげて。」
「はい、エリー様。 では、此方へ。」
暫くすると、道着を着たルイちゃんが戻って来る。
「お待たせぇ~、あら、エリーちゃんは着替えないの?」
「私は魔法で早着替えできるからね。 こんな風に。」
一瞬でプラグスーツに着替えて見せた。
「あら、それ動きやすそうねぇ、私も欲しいかも。」
「この部隊に入れば支給するわよ、スパイダーナノを操縦するのに反応速度を上げる為のスーツではあるからね。」
「じゃあわざと負けようかしら? なんて私の矜持が許さないんだけどね。」
「ルイちゃん、いつでも良いわよ。」
と言いつつ、ナノマシンによる筋肉の保護を開始、更に反応速度を上げる為の思考加速と神経速度強化を施し、身体硬化と筋力強化も同時に発動する。
ルイちゃんが構えを取りながら、苦笑いをする。
「恐ろしい子だわね、貴女、普通に立って居るだけなのに何処にも隙を感じないもの・・・」
「そんな事無いわよ、未だ私は普通に立って居るだけだもの。」
「どうやらやっぱり、私がチャレンジャーなようねっ!」
ルイちゃんの後ろ回し蹴りがとんでもない速度で迫って来るけど、それをバックスウェーで躱しつつ、左拳の一撃を脇腹へと入れる。
「グっ、流石に強いわね、様子見のつもりだったけどアッサリかわされて逆に一撃入れられるなんて・・・ねっ!」
掌底ラッシュだ。
一つ一つを丁寧に逸らしていき、一瞬のスキをついてこちらも掌底を入れるが、特に決定的だった一撃がガードされる。
って言うかガタイの良いルイちゃんは身長も有るので頭二つ分位大きいからある意味滑稽に見えるかも知れない、但しルイちゃんの掌底や私の往なしの手のスピードについて来られる動体視力が有ればだけども。
傍から見たら笑顔で見つめ合ってるようにしか見えないだろう、多分。
ちなみにここまで応酬し合った掌底の回数、ルイちゃんが73、私が18、時間にして1秒半程度。
私の最後のルイちゃんにガードされたの以外は決定打無し。
「ウフフフフ、やるじゃ無いの、思った以上に怖いわ、貴女。
本気出しても良いかしら?これなら良いわよね? 多分、私もこれ程本気を出すのも初めてよっ!」
今度は細かい蹴りを織り交ぜたラッシュが始まった。
これ迄よりも格段に速い。
そして威力も段違いだ。
心肺機能をナノマシンでサポートし、身体強化、身体硬化、反応速度、加速と幾つもの強化をマナで行っている私でもさすがにこのレベルになると全てを往なしたり避けるだけでは捌き切れず、いくつかガードをする羽目に成るんだけど、そのガードが弾かれそうな程の拳圧だ。
一発一発が異常に重い。
ルイちゃんも当然無意識で身体強化などを行って居るのは手に取るように判ってはいるが、それだけでこの拳圧は測り切れない、彼女のその雄大な筋肉の壁で出来た肉体の重量がしっかりと拳一つ一つに乗って居る証拠だ。
こう言う部分で私の様な軽量級は不利だが、速度だけならまだルイちゃんに負ける気は無いよ。
「うははははは! 速い速い! ルイちゃんすごぉ~い!」
なんて言いつつ反撃を開始する私。
するとさすがのルイちゃんもこの至近距離で打ち合うのは不利と踏んだようで、後ろに瞬歩みたいな動きで逃げたりするようになって、段々と広いスペースを取るようになって、移動が激しくなる。
「はぁっ! ほんっとに恐ろしい子っ! この私が押されてるなんて。 喋る余裕も無くなって来たじゃ無いのっ!」
「って喋ってるんだからルイちゃんだって只者では無いんだけどねっ!」
「「お互い、化け物だわね。」」
つい、私自身もとんでもないんだと認めてしまった。
もはや手数が2万を超えた辺りから数えている余裕も無くなって来たので、電脳でカウントして居るんだけど、電脳の処理能力も使わないと勝てないぞ、これ。
だって、ルイちゃんの一発一発が重すぎて、ガードしてるだけで腕とかにダメージ来るんだよ。
ヤベェな、早めに決着着けるとするか・・・
と思って、気功弾を撃ち出そうとしたら、ルイちゃんから気功弾が飛んで来た。
おいおい、これも出来るのかよ。
大急ぎで私も気功弾を撃ち出して相殺させる。
「あははははは! エリーちゃんも撃てたのね~! 折角決まり手になると思って隠してたのに~!」
驚いて一瞬動きが止まったのを私は見逃さなかった。
一気に間合いを詰め、それに咄嗟に反応して拳を撃ち出したルイちゃんの腕を掴んで、その力を利用して盛大に投げて、倒した。
「ルイちゃん、隙アリよ・・・ハァ、ハァ。」
「嫌ン、負けちゃったぁ・・・ハァ、ハァ。」
手を貸してルイちゃんを起こす。
開始戦に戻った私達は、きっちりと挨拶をして、試合を終える。
「「ありがとうございました。」」
「参ったわよ、流石にあれは交わし切れないわね。」
「ルイちゃんだってあの一瞬のスキが無かったら付け入るスキなんか何処にも無かったわよ、ホント強い。」
「「まさか気功弾迄撃てると思わなかったもんねぇ~。」」
お互いに顔を見合わせて笑い合った。
「す、すみません、エリー様、終ったン・・・ですか?」
「ええ、終ったわよ。」
「速過ぎて二人の姿を追い切れさえしなかったので、何があったのかさっぱりです。」
「「まぁそうなるわよね~。」」
ちなみに、ルイちゃんが本気出した辺りから決着までの時間が15秒弱。まぁ見える奴はルイちゃん並の達人だよね。
「さて、負けちゃったし、約束通り、この部隊に入るわよ、よろしくねっ!」
バッチぃ~ン!とデカい音がしそうなウインクをするルイちゃんであった。
私は良いけど、この部隊の兵士諸君、ご愁傷様です、こいつが一人は居ると訓練も半端なくなるぞ・・・




