潜入4
潜入4
さて、マジで今ダンジョン内に居る冒険者達が酷い事に成らない内に、とっとと攻略してダンジョンコアを調整、若しくは私製の人工コアに交換してしまいたい所だ。
そうなるとこのジョブでは少々時間が掛かり過ぎる気がする、せめて精霊召喚を使えればグッと攻略が早くなりそうだ。
メインのジョブ、シノビはそのままでサポートを精霊魔導士にするか。
それじゃ一度戻って、本体との電脳リンクで精霊魔法をダウンロードしないと。
来た道を戻り、さっきのボス部屋に戻る階段を下る。
上へと階層が伸びているダンジョンってなんか違和感があるな、なんて思いながら階段を降りて居るが、おかしい、いつまでも戻れない。
まさかとは思うが、もう繋がりが変化してしまってるのか?
仕方が無い、せめて電脳リンクを確立して強引にダウンロードするか。
フェンリルギアをストレージから取り出して、プラグスーツに早着替えすると、バイクモードのギアとプラグスーツを繋いで、バトルモードに変形。
何でこうするかと言うと、ヘッドユニットが繋がる事でナノマシンデータ通信が活性化して通信が繋がり易くなるからだ。
装着した以上、当面フェンリルギアも使った攻略をして一気にコアを目指す事にしよう。
精霊魔法のナノマシンの使用権限とナノマシン操作ソフトを電脳にダウンロード開始するが、強引に繋いでギリギリで繋がっているような状態だ、少し時間が掛かりそうだな。
そうこうしている内にも、やけに大量の一角ウサギや爆撃鳩が沸く。
左右に壁の有るこの階層では出て来るだけ無駄な、その機動力を生かせないようなDクラスの魔獣・・・やっぱこのダンジョンコアは食い合いで手いっぱいになって居る気がする。
ようやくダウンロードが終わったので移動を開始したが、雑魚が多すぎる為に一旦フェンリルギアをバイクモードにチェンジした。
面倒なので一気に駆け抜ける為だ、この程度の雑魚は相手にしててもエネルギーの無駄、何処まで行けば良いのか判らない奥行きである以上は温存したい。
更に上の階層への通路を発見、一気に駆け上がる。
そこには、思わぬ強敵が現れて逃げ惑う冒険者パーティーが居た。
魔物はサハギンだ、サハギンは単体の脅威度はC程度だが、極稀に上位種がいる場合、統率が取れた行動をする事があり、そう言う場合の脅威度はBと言った所だ。
この場合、群れでは有るが統率は取れていないのでC+と言った所か。
そんな程度で逃げ惑って居ると言う事は恐らくはDクラスの冒険者パーティーと言った所か。
まぁゴブリンやコボルドを相手にして腕を磨いて居た所に、この迷宮の食い合いが始まってしまって逃げようにも階層が入り乱れてごちゃ混ぜになった為に閉じ込められてしまった溶く所か。
仕方が無いのでフェンリルギアをオートモードであいつらの守りに付けてサハギンは私が倒そう。
「あ、あんたは味方か?
人間、だよな?」
「私がどう見えてるのかは大変興味深い所だが、助けた相手に対する第一声がそれかね?」
「あ・・・ああ、確かにそうだ、すまない、ありがとう。」
「まぁ良い、いつからこの迷宮に囚われている?」
「僕達は、昨日の朝ここに入ったんです、初めは普通だったんですけど、昨日夜に休息を取って居る時に突如安全地帯だった筈の階層にゴブリンが雪崩れ込んで来たんです。」
「そうか、良く今まで生き残って来れたな、お前達なら強い良い冒険者になれそうだな、数年後が楽しみだ。」
「あ、有難う御座います、あ、僕らはD級パーティーの“暗黒星の導き”です、僕がリーダーのガイア、こいつがオルテガであっちのちょっとおっとりしてる感じのがマッシュ。
む?どっかで聞いたような名前ばかりだな・・・
まぁ良いだろ。
こいつら三人は、既に電脳化は済んで居るみたいだ。
本体が放置した電脳化ナノマシンが野良化してランダムに電脳化して周ってるみたいだからな、こいつ等の場合、身体能力の補正は電脳によって多少入ってるみたいだ。
こいつ等に武器でも配って置くか。
三人共に、本体が調子に乗って作り過ぎてたデッドストックの高周波サーベルを一本づつと、ナノマシンによって使った砲弾が大気中の様々な所から材料を集めて来て自動給弾される無反動砲。
おまけに、電脳で制御可能のホバーブーツ。
何だって本体はこんな謎の装備品を大量にデッドストックして居るのか判らない。
「うぉ!何スか、この武器!
貰っちゃって良いんすか?」
「ああ、好きに使うと良い。」
彼らの新装備に身を包んだ姿を見た私は、思い出してしまった、そうか、こいつら、アレだわ・・・
口が裂けても言えないが。
数年後、ジェット〇トリームアタックなる技を見出してB級冒険者として名を馳せる三人の姿がこのダンジョン等で見る事が出来るようになるのだがそれは又別の話だ。
やっぱこの世界作ったあの阿保神、絶対元日本人だよな。
兎に角新しい装備でその強さをさらに増した三名をバックアップに回してどんどん先へと進む。
そして遂に、せめぎ合っている最前線と思わしき階層へと到達した、の、だが・・・・
何でゴブリンとコボルトの一個師団同士が戦っとんねん?
すっげぇどうでも良いレベルの戦争なんだが?
個々の強さはDだが統率の今一つなコボルト軍と、個々の強さはEしか無いけれどゴブリンキングの統率力で集団的な戦闘を展開するゴブリン、スッゲー力は均衡してて見所は有るかもしれないけれど、互いのレベルが低すぎてちょっとコミカルですらある。
ってかこんな低レベルで何時までも燻ってるんじゃネェよ。
ダンジョンコア同士の食い合いなんてもっと激しいものを想像してしまうでは無いか、ドラゴンとベヒーモスの食い合いとか、な? 普通そうなりそうな気がするよな?誰に言ってるのかは良く判んないけどさ。
馬鹿なのか?ここのダンジョンコア達は。
あ、そうか、天然ダンジョンコアだからか、何でそんな物が天然で出来たのかは知らんが、それもあの阿保神が一枚噛んでそうではある。
ま、精々自然災害とでも言って置くとしよう。
何はともあれ、このフロアの情報の端と端にダンジョンコアがチラホラ見え隠れして居るのだから、どうもここがダンジョンコア同士の戦って居る部屋って事なのだろう。
何でこんな低レベルなのかは知らんけど・・・
取り合えず、フェンリルギアで、近かった方のコアを取りに行って見る。
鑑定するが、こっちはどうもアルファードから来ているダンジョンの方のようだ。
成程こっちは階層を下へ進めていた訳だ。
すると、あれか、ベルファイア側のダンジョンコアが扇状地に向けて進んでは居たものの上へと階層を増やして行った事が原因でダンジョンコア同士の支配空間が干渉しあったと言う事だろう。
じゃあベルファイア側のコアを今ここで回収してしまって、私の人工コアと挿げ替えて、下へ階層を増やす方向に設定すれば良い、と思う、多分。
何だか、私はいつも損な役回りだな、全く・・・
例の三人が、私がこうしてダンジョンコアを捕獲しに動いている間にも、この戦争階層で動けなくなって居た冒険者達をどうも4パーティー程助けて居るようだ、うん、こいつら思ったより出来る奴等だな。
私の電脳へ通信して来た。
『兄貴! ガイヤでやんす! 遭難パーティーを全部保護終わりやした!』
遭難してたんかいw
まぁ良いか、ンじゃそろそろダンジョンコア捕獲しようか。
上に階層を広げてただけあってこっちのダンジョンコアは中々に狡猾で、追いかけると段々離れて行ってる。
ならば・・・
「忍法、影縫い!」
闇の術札をコアに投げつけ、動きを封じた。
やっと捕まえたぜ、長かった。
この天然ダンジョンコアは本体がストレージ越しに受け取って愉快な解析をして解明してくれる事だろう。
そして、ダンジョンが閉口しない内に、私の人工コアを据え置いて、設定を終わらせる。
すると、何事も無かったかのようにダンジョンコアルームが形成され、今までの食い合い戦争も何も無かったかのように収束し、ラスボス部屋が構築され、俺の考えたラスボス、ダークフレアドラゴン(やり過ぎた感だけは認めよう)が生まれた。
そして地下100階層のダンジョンが構成され、俺を含むダンジョンに挑んでいた冒険者達全員は、ダンジョンの入口へと放り出された。
「戻って来れた・・・のか?」
「帰って来られた、どうなるかと・・・」
等と各々に生きている喜びをかみしめながら独り言のように呟いている。
そこに、例の三人組のリーダーガイアが、余計な事を・・・
「皆聞けぇっ! このお方、B級冒険者だが間もなくA級に昇格される予定のルーデリヒ様がお前らを助けに来て下さったのだ! 皆この方に感謝するように! さぁ、英雄様の凱旋を皆で演出するぞ、列を成せ!」
おい、こいつ何言っちゃって「さ、ルーデリヒの兄貴!先頭を。」
お前、やってくれたな~・・・
しゃぁねぇ、予定よりも名声が跳ね上がってしまいそうだけど、これならスカウトは間違い無いだろうから乗っかるとしようか・・・ハァ。
あれ?今気が付いたけど、折角サポートのジョブを精霊魔導士にチェンジしたのに出番無かったな、結局一番初めに出て来たドラゴニュートとあのレアボスのトロールが一番強かったんじゃね?
それと、今更突っ込むけど、ガイアよ、俺はお前のアニキじゃねぇ。




