MkⅢのコッソリお宅訪問
MkⅢのコッソリお宅訪問
-MkⅢ-
三兄弟を送り出した私は、後からゆっくりと庭園で移動、恐らくダンジョンには入らず留守番して居るであろうクリスを訪問する事にした。
何でかって?
それはね、三兄弟が大量に集めて来た食材のお裾分け&本体が取り上げたと思われるクリスの赤ちゃんに会う為。
顔見たいじゃん?
ってかさ、本当は皆の装備の点検もしたいんだけど、多分本体が技を盗みたくて既にメンテしてる気がするんだよね、私の事だし、良く判るのよ、この辺りw
上空に辿り着いた私は、クリスの電脳に直接メッセージを入れて見る。
「クリス、私、MkⅢだけど、今上空に付いたんだけど、今お邪魔しても大丈夫?」
『あ、エリー!
来て来て~、もうね、起きてれば大変だし寝てくれたらそれはそれで逆に暇だしでさぁ。
もうね、兎に角来て~。』
うわ、すっげー鬱憤溜まってそうだな、これは夜中駄目でも面倒見て貰えるAIアンドロイドメイドでも作ってくれとか言われそうだな。
じゃあ、本体が、タカシに作ったって言われてる@Homeシリーズの新作でも持って行ってやろう。
明るい色系統のふわふわヒラヒラドレス系ミニスカメイドにでもしときゃシリーズ物だろ? 多分w
磁光エレベーターでクリスのスパイダーの前に直接アクセスすると、クリスがハッチを開けてエスカレーターを降ろしてくれた。
普段後ろのゲートからバイクとかで入って行く事が多いからこっちから入ったのって数える程しかねぇな、なんて思いながらエスカレーターで運ばれると、少々お疲れ気味な感じに見えるクリスが妙なハイテンションで出迎えてくれた。
「エリ~!久しぶりぃ~。
会いたかったぁぁ~~~。」
あ、こりゃガチで溜まってるな、色々と。
「よう、クリス、ハイこれ手土産、私の新作スイーツだ。
ミックスベリーミルフィーユよ、ユグドラシルベリー8種類をミルフィーユにして見たんだけど、未だ味見して無いw」
「なんかすっごく美味しそうな気がしてならないんだけど!
じゃあ私お茶淹れるわ、エリーは紅茶? それともコーヒー?」
なんだと? もう本体からコーヒー豆の供給受けたのかよ。
最近やっと本物のコーヒー豆を量産出来るようになったばかりなのに、もうここに有るって本体からしかあり得ないよね。
ユグドラシルコーヒーは、酸味、コク、苦み、香りのバランスがとっても良くて、ブルーマウンテンナンバーワンを超える味わいなのでコーヒーにしようかな。
「じゃあコーヒーね、お疲れなのに悪いわね、無理しないで頂戴。」
「それなんだけどさぁ、何故かやたらと夜中に泣き出す事が多くてさぁ・・・」
やっぱ来たな。
「仕方ないわな~、赤ん坊は寝て泣くのがお仕事みたいなもんだしね~。」
「マリイはどんな感じだったの?」
「ん~、私は直接子育てしてねぇからなぁ、本体に聞いて見ようか?」
「あ、そうか、MkⅢだったっけ、御免ね~。
でも本体から話聞いてない?」
「私はずっと旅の空だしなぁ、あ、そうだわ、もうすぐ大晦日だしさ、ダンジョン攻略してるあいつ等皆帰って来たら、私と一緒に本体に会いに行こうか。」
年の瀬から新年まで足かけ二日で楽しもうと思ってな。
忘年会が年を跨いだ瞬間に新年会になると言うとんでも無い大宴会w
楽しそうだろ?
「きっといっぱい集まるんだろうな、エリーの所じゃ。」
「クリスも行くだろ?」
「私は、子供の世話がね~・・・」
「何だ、そんな事か。
まぁもう少し待ってろ、解決するから。」
そんな会話をしている矢先に、子供の寝ている部屋からの音を出して居るスピーカーから、早速と言う程のタイミングで泣き声が・・・
「おお元気そうだな、この泣き方はオシメ交換だな。」
「エリー、初めて聞いた泣き声で何で判るの?」
「ンなもん年の功って奴でしょ、何人もの赤ん坊の泣き声聞いてりゃ判るんだよ、必ず共通点が有るんだよ。」
半ば勘では有るんだけど、大体判るんだよね、マジで。
すると、訪問者の来訪のアラームもなり始めた。
「あれ? 誰か来た?」
「ああ、開けてやってくれ、完成したようだな。」
「?? どゆ事?」
ハッチを開けるとすぐにこの場に顔を出したメイドロイド。
「初めまして、奥様。
私は@Homeシリーズメイドロイド、美也と申します。
たった今ロールアウトしたてのド新人メイドロイドですが、奥様のお役に立てるよう頑張りますのでよろしくお願いします。」
「え? どゆ事?エリー?」
「まぁそう言う事、あんたが子育てで難儀してそうだったからね、お手伝いしてくれるメイドロイドっつー家事全般や子供の世話に特化したAIアンドロイドを作ってたんだ、庭園のラボでな。」
「エリー、やっぱエリーと仲良くしてて良かった~。」
「早速ですが奥様、お子様が泣いておられる様子なので見て参ります。」
「うん、お願いね、美也ちゃん。」
メイドロイドが素早く赤ん坊の寝ている部屋に移動し、早速原因をチェック。
手際良くおむつ交換を終えて、あやし始めた。
するとすぐに泣き止むと、笑い声迄聞こえ始めた。
「どうだ、こいつの性能スゲーだろ?」
「えりー・・・
もっと早く作ってよぉ~!」
無茶を言う。
「あのなぁ、全部メイドロイドに丸投げにされてもダメだから始めはしばらくは作っちゃダメって本体に釘刺されてたんだから駄目。」
「ちぇ~・・・でも、大変なんだなーって良く判ったし、子育てって大変な代りにすっごく充実してて幸せだなーって思った。」
「だろ? 私は実の子を一から一切育てる事が叶わなかったからな。
代りに、700年以上生きた間に、何人もの孤児や人の子を育てたんだ。
だから子育て経験は人一倍豊富って訳。
だからな、クリスには初めの子位はどんなに大変でどんなにいい経験に成るかを身をもって体現して欲しかったんだ。」
「うん、ほんっとしんどかったけど、確かに良い経験になった、ありがとう、エリー。」
「まぁ、これからは半分近く負担させて少し自分の時間や睡眠時間に当てたら良いさ。
しかも新型エーテルリアクター搭載の魔素駆動だから充電も必要無いからな、ずっと動き続けられる。」
しかもナノマシンとの連携が出来るようになったおかげで、クリアランスの魔法と同じ効果が得られるので、ドレッシーメイド服と本体も自動で洗浄されると言う便利機能付きだったりする。
赤ちゃんのお世話がメインのお仕事である以上、いつもきれいにしてた方が良いからね。
炊事も洗濯も出来るわよ?
「ところで、名前は決まったんだっけ?本体から聞いて無いから知らないんだ、実は。」
「うん、もう名前は決まってるんだけどね、エリーに言わせるとその名前はってツッコミが入った名前なんだけど、キースがすっごくアッサリ付けたんだよねぇ・・・アーサーって・・・」
クリスの目が泳ぎまくっている、これはガチなやっちゃな・・・
キースに名前付けさせるとロクな事に成らない、なんたってモグラの魔物にヨルムンガンドってつけて地龍王に進化させちまった位だからねぇ・・・(遠い目)
「ま・・・まぁ、いいわ・・・
美也、アーサー君をこっちへ連れて来てね、顔見たいわ。」
キースの名付けのやらかし加減に精神的なダメージをかなり受けつつ、美也に指示をする。
「畏まりました、マスターエリー。」
電脳通信可能だから遠隔で指示が出せるのも便利です。
こんなメイドが欲しいって思った人挙手!
結構居るわね、どうしても欲しかったらこっちに転生なさいw
まぁこっちに来た所で作ってあげるかどうかは私次第だけどな。
って私は誰に向かって通販番組みたいな事してるのだろう。
そうこうしている内に、おしめの交換を速やかに終えてご機嫌になったアーサー君を抱いて私の元へと連れて来た美也。
うむ、出来るメイドは良いねぇ。
「ねぇ、エリー、このメイドロイドっての、本当に私の専属って事にして良いのよね?」
何かクリスが食い気味に質問して来た。
「良いわよ、でも食堂はハコンダーZも居るし、これ以上便利使い出来るAIアンドロイドもあんまり要らないかなぁって思ってたんだけどね、子供の世話が大変そうだったからつい造っちまったって感じではあるのよ。
だから今回だけね、これ以上作らないわよ。」
「うん、十分です、ホントありがと、エリー。」
「さぁ、お話はこの辺までね、はい、アーサー君いらっちゃーい。」手を伸ばして美也からアーサー君を受け取る。
か・・・かわええっ!
父は男前で母は目の前に居る通りの美女だ、可愛く無い訳は無いんだけどね。
しかしさすがの遺伝子だ、このイケメンベイビーにズッキュンって感じだわ。
「アーサーきゅ~ん、エリーおばちゃんでちゅよぉ~。」
この時、クリスは思ったのだった。“普段ぜってぇ自分の事美少女っつってる癖に自分からおばちゃんかよっ!ってか700年以上生きてるロリババアだけどさ。”
「ん?何だ?クリス、何か言いたげだけど。」
「あ、ううん、何でも無い何でも無い。」
「そうか?まぁ良いけど。」
かなり綱渡りなやり取りをする二人であった・・・
それにしても、本当にエリーは子煩悩である。




