平泉3
平泉3
「お嬢ちゃん、ちょっと話聞かせて貰おうか?
そこの番屋まで来て貰うぜ?」
ゲ、マジか、犯罪者扱い?
まぁいっか、何事も経験だ、大人しくついてったるか。
「行くのは良いけど、ちょっと待ってね、こんなもんこのまま置いといたら危ないから。」
火の付いたままの七輪と、焼きかけの牛タンなどすべてストレージに突っ込む。
「何だそれは、火が付いたままで何とも無いのか?」
「ああ、大丈夫大丈夫、ストレージの中は時間止まってるからどんな状態でもそのまま保管できるし。」
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「で、お前さんは何だってあんな所で肉焼いてやがったんでぃ?」
「お腹空いたから。」
「それだけ?」
「むしろ私が聞きたいけどそれ以外に何が有ると?」
「え?」
「そして私のおやつの時間を阻害してこんな所に連れて来たこの空腹をどうしろと?」
「あ、いや、その、あのな?」
「ほらどうした?私はお腹が空いてたから秘蔵の牛タンをここぞとばかりに調理し始めた所だったのだ、私のこの空腹はどのように処理せよと言うのかな?」
一寸お腹空きすぎてイラっとしたので英雄覇気駄々洩れでクレーマーになっている私。
「お、おい! 此奴を座敷牢にとりあえず連れて行け!」
逃げやがったか・・・ちっ!
それにしても座敷牢か・・・貴重かも知れない、中々体験出来ない体験になりそう。
大人しく連れて行かれる事にした。
「ほ、ほら、大人しく入ってろよ?」
「大人しくしてるかどうかは私の自由だろ?
出ない限りは。」
「う、煩い、いちいち突っかかるな!」
「ちっ!」
思いっきり舌打ちしながら入ってやった。
「おや、何だぁい?今どきの新入りは挨拶も出来ないのかぁい?」
何だかドロ〇ジョのような口調の牢名主らしき阿婆擦れが声を掛けて来た。
「・・・」
私は無視を決め込んでストレージからさっきの焼きかけたセットを取り出して調理を再開。
「お、おい!姉さんが直々にお声掛けられたんだ!
何とか言ったらどうなんだい!?」
「なんとか。」
「ちっがーう!
それにそれはどっから出した!?
何で食ってんだよ!」
「ん? 食べるか?」
「え、まじ?いいの?
・・・っじゃ無くてぇっ!」
「うるっせぇなぁ~、あたしは腹減ってんだよ、食いたくねんならほっといてくれよ!」
「ほぉ~、良い度胸だねぇ、アンタ、ここじゃ誰が偉いか教えてやろうか?」
「私に決まってるだろ、なんたって大賢者なんだから。」
「こンの・・・お前ら、やっちまいな!」
「へい!姉御!」
4人居るモブの一人が七輪を蹴ろうとした瞬間、ストレージに仕舞う。
空振り。
「危ないよ、あんなの蹴ったりしたら火傷するよ~?」
「てめぇっ!」
後ろから羽交い絞めにしようとして接近して来たのを察して、瞬歩で逆に背後を取って、ついでに足を引っかけてやる。
はい二人目撃退。
同時に殴り掛かってきた二人を、目を瞑ったまま躱しつつ、軽くステップを踏んでみる。
つってもダンス苦手な私がステップ踏んでも怪しい踊りになってしまって馬鹿にしているようにしか見ない。
「「こいつ!馬鹿にしやがって!!」」
何だかジワジワ半べそに成って来て居る。
4分程、ヒラヒラ躱し続けると、だんだんマジで泣き出してしまった。「えぐっ、中れよ、中ってくれよぉ~、アタイが叱られるじゃんよぉ~・・・」
あ~あ、泣いちゃった。
何か私悪者みたいよ?それ・・・
そんな事してたら、いつの間にか背後に牢名主が。
何だか鉄扇みたいなの持ってやがって、それで私を横薙ぎに殴りつけようとしたので、人差し指一本で止めてやってから、英雄覇気で威圧しつつ。
「私を倒したかったらドラゴンでも連れて来いやコラ。」
と、睨み付けてやると、牢名主はその場で失禁して泡吹いて倒れちゃった、よっわっ!
なんかね、一瞬で牢名主になってしまった私・・・えっとぉ。
そしたら、本体からNLMが・・・
『面白い事やってるみたいね~、MKⅢ~、私そこに行っていいかしら?』
イヤ面白くも何ともネェし!
『ダメに決まってんだろ! ここにアンタ来たら更にややこしく成るから大人しくマリイの顔見て和んでろや!』
『えぇ~、残念~、私も牛タン食べたかったな~。』
『ストレージ繋がってんだから勝手に食えやコラ!』
『ち、バレたか、まぁ良いわ、楽しんでね~。』
くそ、流石私、こんなタイミングで斜め上来やがった。
自分でやるのは楽しいけどやられるとイラっとするよな。
そして、現在私は、七輪で牛タン焼かせて一人で食って居る。
うん、美味しい。
匂いに釣られた牢付き番が様子を見に来た。
「お前ら・・・何してんの?」




