オリハルコン
オリハルコン
イヤぁ、湯あたりして倒れるなんて、私の悪い癖もここに極まった感じ?
てへっ♪
とか言ってる場合じゃ無い。
魔素の新事実問題はナノマシンのアップデート次第な部分も有るので後回し。
回収した鉱石を確認しに行かなければ。
部屋から出ると、ザインが眉毛を八の字にして私の部屋の前でウロウロして居た。
「何してんの?ザイン。」
「ハイエルフ様、大丈夫?」
「ああ、そうか、私が湯あたりして運び込まれたのを知ってる訳ね。
大丈夫大丈夫、ただのぼせただけだから。」
でもザインは私について来た。
「心配。」
大丈夫なんだけどなァ・・・
船倉に到着すると、ザインも一緒に入って来る。
大丈夫だよぉーもぉ~。
明りを付けると、巨大オリハルコン鉱石。
流石の感情平坦娘ザインも、この巨大オリハルコン鉱石には驚きを現わして居た。
「おお~! すごい大きい、これ、全部オリハルコン?」
「ああ、この巨大な塊がオリハルコン鉱石だよ、こんなデカいのは多分他で手に入る事は無いだろうな。」
日緋色玉鋼の時もかなりの大きさだと思ったけど、こんな巨大な隕鉄がこう二つも三つも出て来ると本当にいかにちゃんと管理出来て居ない世界だったかが伺えるよね~、良くこの星の生物全部滅んで無いもんだわ、マジで。
「で、だ、折角来たんだからさ、ザイン、このオリハルコンで何か作って欲しい物とか無い?」
「ん~・・・・・・・・・・解体用ナイフ?」
そんなのしか無いんかいっ! ってかオリハルコンで作るもんじゃネェよな、下手したらドラゴンも捌けるんじゃねぇか?
・・・ん?待てよ? でもドラゴンを捌くのって確かに大変そうだしな、有っても可笑しくはない気はする。
実際にポイズンサーペントも私はストレージに入れる時に分け方を考えるだけで切り分けられるから問題無かったけどあの鱗を剥がすのとか大変そうだったしなぁ。
鱗は何気に冒険者ギルドで意外な高値で買い取って貰えたんだったな、きっと硬いから小手や盾、鎧に加工されるんだろうな、軽いし良い防具になりそう。
しかも毒耐性の付与とかありそうだし。
良し、そう言う事なら作りましょう、解体用ナイフを。
どうせなので、グリップにナノマシン仕込んで自動でタッチアップ出来るようにしとくか、切れ味の永遠に落ちないナイフ、正に夢のナイフだよね。
先ずは鉱石を収納、のついでにオリハルコンインゴットと、少し混じってたニッケルやクロムなどもインゴットに。
残りカスは、アルミニウムの原石に多く含まれるのと同じ、バーミキュライトだった。
これが大量に手に入った訳なので、色々と使い勝手が有るのも事実だ。
園芸用の保水土にも使えるし、使い捨てカイロを作るって手もある。
何なら更に抽出してケイ素やマグネシウムを取り出す事も出来るだろう。
大切な錬金資源である。
分離したオリハルコンインゴットを取り出し、これだけでは加工が難しいので同系多種金属の日緋色金を使い、オリハルコンを叩く。
オリハルコンに関して、地球での見聞では、ただの真鍮である説とかもあったんだけど、この世界で見つけたオリハルコンは合金では無かったし、色も真鍮とは到底似ても似つかなかった、むしろ亜鉛? いや、錫に見えなくも無いかな?
オリハルコンは、日緋色金以上に硬度が高くなる。
圧縮する程硬度が上がってしまうのだ。
そのオリハルコンを、低圧縮状態で置いてある物を掴むと、亜鉛のようにぐにっと指の跡が付いたりするが、叩いて行くうちに鉄の玄翁なんかでは全く太刀打ちできないほど硬くなる、そんなオリハルコンを、日緋色金で作った玄翁で叩く事で共振誘発振動で更なる圧縮をさせる事に成功。
捌く為のナイフだと言うから文化包丁のようにある程度薄手の方が良いだろう、但し薄ければ脆くなるので其処はこの圧縮すれば硬度も粘りも上がると言う独特の特徴を持ったオリハルコンの特性を最大限に生かそうでは無いか。
形はマタギ包丁が良いかな?
大型爬虫類の鱗はがしの時なんかに、刃先が反って突き刺せる形の方が使い勝手がある。
刃のデザインが決まったので形成を始める事にした。
刃渡り26㎝、刃の厚みは、2.2mm、この厚みの中に、800gのオリハルコンインゴットを凝縮して行く。
ちなみに未圧縮のオリハルコンは、かなり軽量な金属で、圧縮して行く事で質量が増えていく。
つまり、800gも有るとかなりの体積になるのだ。
そりゃぁ巨大な塊だった訳だよね~。
それでも水圧で少し圧縮されてたから大分縮まってたみたいだけどね。
比重はアルミより軽い位のものが、鉄並みの重さにまで質量を上げたので、そろそろ良いかと圧縮の為の叩き上げを止めて刃の形成を終わらせた。
次にグリップなんだけど、このせかいの木って何度も言っている通り、やたら硬い。
なので力業で形成せず、錬金術スキルで強引に削り出す。
後はリベットで刃と合わせるだけなのだが、その前に鍔を作る、鍔は日緋色金で作る事で、一見真っ白でまるでセラミック包丁のように見えるけども良く見ると薄っすら青白く輝いている刃に、黄昏色の鍔がとても良く映えて美しい、この鍔の中を空洞にしてあって、ここにナノマシンを潜ませる。
自動で磨いでくれる大変便利な奴だ。
こうして完成した解体用ナイフを、裸で置いておく訳には行かないので、ここはポイズンサーペントの皮を鞣して使う事にした。
中々格好良い鞘が出来たので、ナイフを仕舞い、ザインちゃんに渡そうとした。
しかしそれは敵わなかった。
刃の向きを下にして、鞘を上方から掴みグリップをザインに向けて手渡そうとしたその時、ィーーーーンと言う音で表現するのが一番良いような微かな弾き音がし、ナイフが鞘を切り割き、床に向かって自重落下を始めた。
私は、危険を察知してとっさに足を引いた。
そのナイフの刃は、何千トンもの荷物を積んでも拉げない頑丈な、格納庫の床に突き刺さり、そのまま鍔で止まるまで沈んで行ったのだった。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」
えーっとぉ~。
何、これ。
グリップを掴み引き抜くと、何のストレスも無く引き抜く事が出来た。
ごるぁあぁぁぁぁ!
何処の阿呆だ! オリハルコン製の聖剣が岩に刺さっててて、所有者と認められた勇者が抜くまで誰にも抜かれないなんて言う荒唐無稽な物語書いた奴ぁ~!
こんなバカ切れ味のナイフ誰にでもノンストレスで抜けるし岩に突き刺さったりせんわ!
岩をカチ割って地面に深々と突き刺さって鍔で辛うじて止まるって感じだよ!
そうなってから長い年月経っちゃったら土に埋もれたりしてもはや聖剣なのか何なのか判んない状態になってるわ!
びっくりしたんだからな!ちょっぴりチビったんだからな!
涙で前が見えなくなったんだぞ! 超~怖かったぁ~~!(泣)
そーっとストレージにしまった私でした・・・
「えっとぉ、それで、何が欲しいんだっけ?ザイン。」
なかった事に・・・
いやそのうち防刃結界かなんか練り込んだミスリル製の鞘とか作るからそれまで封印って事で。




