~動の五~
ある昼下がり、私は母の墓前に居た。
月に一度は来ているのだが、何だか久しぶりに思う。
最近は、本当に色んな事があったから……。
私の初実戦。
西の森の探索は、変異型ゴブリンとゴブリンロードの発見及び即時討伐と言う結果になった。
追加調査により、ゴブリン達は隣国から国境を越えてきたと推測されている。
人間には困難なルートでも、あのゴブリン達には容易だったはずだ。
だが、なぜ国境を渡って来たかは不明。
ゴブリンの様なモンスターは縄張り意識が強い上、あれ程の強さを持っていれば、同種との争いに負けたとも考えにくい。
派遣団が隣国へと向かい、報告と調査依頼を打診するとの話だが、現在両国の関係は良好とは言い難く、形だけになる可能性が高い。
アルが「ロードの情報だけでも得られたら良いのですが」と言っていたけれど、望みの薄い事はアルも分かっているだろう。
アルと言えば、「感動しました!」とか「さすが未来の剣聖様!」とか、辟易する程の賞賛の雨あられを頂いた。
またしても「覚えてない」で押し通したのだが、私としては申し訳ないやら居たたまれないやら……。
そんな慌ただしい日々を過ごす中で、トモエから母の墓を見たいと言われた。
確認したい事がある……と。
私はアルに断りを入れ、その日の内に墓前へと赴いた。
何時来ても奇麗にされている。それが少し申し訳なくもあった。
(もう良いぞ……)
トモエが呟く。
「何を確認したかったんですか?」
(……何でもねぇよ)
「……トモエは良く言いますね……何でもないとか……別にとか……」
私は、それが寂しかった。
「何でもなくないですよね……何かあったんですよね……」
(…………)
「教えてください、私も何かトモエの力になれるかも……」
(はっ……お前がアタシの力に? ジョーダンだろ)
トモエが毒づくのは何時もの事だが、今日は殊更冷たく感じる。
(あぁ……一個あったな、お前がアタシに出来る事は……死ぬ事くらいだよ)
「……トモエは……私に死んで欲しいですか……」
(……そうだな)
トモエはハッキリと言い切った。
不意に涙が溢れてくる。
(……またかよ)
「今度は……冗談だって言ってくれないんですね」
トモエが体を欲している事は分かっている。
それでも、私は……。
「私は嬉しかった……トモエが自分と同じように……お母様を目指していると……だから」
(だから? お友達にでもなれると思ったか? 何度も言うが、お前とアタシは同じじゃねぇ)
「でも!」
(少なくとも、アタシの親は死んでまで娘を守ろうとはしてないからな)
「……どういう、意味ですか……」
(アタシはな、死んでから霊感みたいなモノが感じられるようになったんだよ……今でも、この辺にお仲間が居るのが分かる)
お仲間とは、スピリット……霊的な存在の事だろう。
(ついでにな、誰がどの墓に憑いてるかも分かる。それぞれ、波長みたいなモンがあるんだ)
「そう……なんですか……」
(お前がお袋さんの石碑に触れた時に、それを感じたんだ。そして思い出した……アタシは以前、同じ波長を感じた事があるって)
「それは……」
(アタシをお前に憑けた、あの女神さんだよ)




