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~動の二~

 王都の正門を抜けて、私達の一団は西へと進路を取る。


 中央に私とアル、その二人を囲むように8名の騎馬隊が隊列を組んでいた。


 真新しい鎧とバスターソードを身に着けた私は、慣れぬ馬上で周囲をキョロキョロと見渡す。


「オリヴィア様、落ち着いてください」


「は、はい、大丈夫です」


 アルの言いたい事は分かる。


 指揮官なのだから、もっと堂々としていろ……と言う事だろう。


 軍事関連の勉強はしている。


 しかし、それはあくまで机上での事。実戦となれば不安も募る。


 それ以上に、私の心配の元となっているのは……。


「大丈夫ですか……トモエ」


(……何が?)


 私の中から、ぶっきら棒な答えが返ってくる。


 最近トモエが少し変だ。


 出会った時から掴めない人ではあったのだが、やたらと口数が減り、こちらから話しかけないと一日中無言でいる事もある。


 話しかけても、こうして投げやりな返事をされるだけ。


「何だか、元気がないような気がして……」


(……霊魂に元気も何もあるかよ)


「それは……そうかもしれませんけど……」


 それ以降、再び無言になる。


 トモエが私の中に現れてから、こんなに静かだった事はない。


 暇があればトモエから話しかけてきて、くだらない雑談を楽しんでいた。


 時には「話し相手になれ」と、深夜まで寝かせてくれない日もあったのに……。


「トモエ……」


 不思議と胸が苦しい。


 姉様達に疎まれ、無視をされたり罵声を帯びせられた時だって、こんな気持ちにはならなかったのに……。


「オリヴィア様、そろそろ到着します」


 アルに指摘されて気が付いた。目的地である西の森は、もう目の前だ。


 いけない、今は目の前の仕事をしっかりとこなさなければ……。


「全軍停止! 装備確認後は2人を斥候に! 残りは法円の陣! 西の森の調査を行います!」


 全員が馬を降り、調査の為の装備を確認した後、私達は徒歩で森の中へと向かった。



 西の森は、ゴブリン等の低級モンスターが住み着いている。


 巨大な樹木が不規則に立ち並んでいる為に視界は限られ、太陽の光が遮られる事で常に薄暗い。


 力の弱い獣魔やモンスター達が身を隠し、狩り等を行うには適しているのだろう。


 しかし生息地は森の奥にあり、普段は危険視すらされていない。


 隣国との境界線を跨いでいる為、デリケートに扱わなければ行けないと言う理由もあるが、基本的に放置されている。


 偶に街道で目撃情報があれば、今回のように調査団が編成され、調査結果次第で討伐が行われる。


 しかし規模もさほど大きくはなく、本来は民間の冒険者ギルドに回すような案件だ。


「オリヴィア様の初陣には良いかもしれませんね」


 アルはそう言ってたけれど、もしや王が気を回してくれたのだろうか。


 ゴブリン一体の力は、精々民間人一人と同程度。今の私でも何とか立ち向かえるレベルだ。


 スタンリー王は王妃や姉様に比べると、私を気にかけてくれている様に思う。


 きっと母を愛してくれていたのだろう。


 もっとも、その母への想いが王妃達の逆鱗に触れている様にも思えるのだけれど……。


 ダメだ、また余計な事を考えている。集中集中……。


 私は頬を軽く叩き、気を引き締め直す。


 その後、特に異常もなく調査は進み、やがて国境付近にまで近付いていた。


 ここまで来て何もなければ、調査は終了となるのだが……。


「オリヴィア様……」


 アルが小声で呟く。


 アルの視線を追うと、前を歩く斥候からハンドサインが送られていた。


 何か見つけたようだ。


 私達は音を殺しながら進み、前の2人追いつくと、物陰から奥を覗き込んだ。


 ……居た。


 実物は初めて見る、アレが……ゴブリン。


 頭部には小さな角。青黒い顔面には鋭い牙を備えた口と、鋭利にとがった耳。子ども位の体躯に、ボロボロの衣服を身に着けた人型のソレは、集団で何かをむさぼっている。


 食事中だろうか……こちらに気が付く様子もない。


 ゴブリン達は、両手や口の周りを緑色の果汁の様な物で汚し、一心不乱に食事を続けていた。


 誰かが、喉を鳴らす音が聞こえた。


 私は初めてだから知らなかった、その異常さに。


「オリヴィア様……撤退の指示を……」


 傍らから、アルの緊張感に満ちた声が聞こえる。


「アレは……ただのゴブリンではありません……」


 私はもう一度ゴブリン達を凝視し、その意味を知った。


 ゴブリン達が食べているのは……ゴブリンだ。


 ゴブリンが、共食いをしている……。


 グチャグチャと不愉快を音をたてながら、ゴブリン達は自分と同じ種族だった者の腕をもぎ取り、臓物を引き出し、飢餓状態かと思うほど必死に食らっていた。


 全身の血が一気に引いていく。


 過去の文献で一度だけ読んだ記憶がある。


 それはゴブリン同士の争い。縄張り争いの結末として、敗者が勝者の糧となった。


 問題は、勝者となったゴブリンを率いていた者……ゴブリンロードの存在だ。


 通常のゴブリンは、どんなに空腹であっても同種を食料にすることはない。


 それを指示する者が居ない限り……。

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