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世界の果て  作者: さまっち
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第8話 今後の方針

 僕は帰りの電車に揺られながらぼんやりと考え事をしていた。

 もう少し地球の形を探る取っ掛かりになる情報が得られれば良かったが、結果は芳しくない。

 水平線の光景から何かが導き出せそうで、何も出せないもどかしい気持ちだった。

 僕がもっと賢ければ得られた情報から色々なことが分かったかもしれないのに。

 自分の知力の足りなさを嘆かずにはいられない。僕は思わずため息が漏れてしまう。

 そんな僕の様子を見て、裕が慰めるように言う。

「結果は伴わなかったけど、僕たちに出来ることは精一杯やれたんじゃないかな」

「そうかな」

「そうだよ。それに調べていることが僕らには難しすぎたのかも」

 たしかに難しいというのはあるかもしれない。しかし僕にはそれが不可能だなんて思っていなかった。


 今でも心の底では何とかなるんじゃないかと思っている。だからもう満足したという気持ちになれず諦めきれない。

 まだやれると僕の本能が訴えかけていて情熱は衰えていない。ただ次の手段が思いつかないのも事実だ。

「次はどうしようかな」

 僕はぽつりと呟く。

「また面白いこと考えたら僕にも教えてよ。出来ることなら協力するから」

「ありがとう。そうするよ」

 とりあえず今後のことはよく考えて決める必要がありそうだ。


  ☆


 学校の放課後。

 展望台に登った日から数日が経ち、僕は考えを纏めつつあった。

 やはり水平線が鍵を握っているのではと思い、実際に近くまで行って眺めたいと考えている。

 目の前まで行けば何かわかることがあるかもしれないと期待する。

 裕が言っていた、高い所から水平線を見たら地球の丸みがわかる、という言葉も気になる。

 海へ行って展望台が建っていれば最高だが、最悪砂浜から眺めるだけでもいい。

 それがここ数日で考えた結論だ。

 まだこのことを裕には話しておらず、これから裕を誘って以前話をした公園へ一緒に向かうつもりだ。

 僕は帰り支度をしている裕の近くまでいって話しかけた。


「裕くん、話がある」

 その言葉で裕はすべてを察したような表情を浮かべる。

「わかった」

「話す場所はまた前に行った公園でいい?」

「うん。いいよ」

「じゃあ、行こう」

 僕たちは並んで歩き始めて教室を出る。それから下駄箱で靴を履き替えて、学校を出て目指す公園までやってきた。

 前回と同じベンチに座り僕は話し始める。


「海に行こうと思うんだ。海に行って水平線を眺めたい。そしたら何か地球の形の情報を得られるかもと期待してる」

「そっか。なんとなく蓮くんならそう言うんじゃないかと思ってた。海にはいつ行くの?」

「まだ決めてない。ただ近いうちに行こうと思ってるよ」

 僕がそう告げた時、裕は少し寂しそうな顔をした。

「こないだ僕、出来ることなら協力するっていったよね」

「いってたね」

「凄く残念なんだけど僕は海には行けないよ。お小遣いがもうそんなに無いんだ」

 お金がない。そう言われるのは予想の範囲内だったので別に悲しんだり驚いたりすることはなかった。


 確かにこの町から海まで行こうと思ったら結構な距離があるので安くはない。

 電車も一本で行くことが出来ないので、何度も乗り換えていくことになり、余計お金がかかる。

 調べてみないと正確な額は分からないが、展望台に登ったあの日に使った総額の倍くらいは予算が必要になるかもしれない。

 僕の方は海までの往復のお金がまだおそらく残っているが、裕にお金がないなら連れていくことは出来ないだろう。

「わかった。今度は僕一人で行ってくるよ」

「ほんとにごめんね」

「気にしなくいいよ」

「海に行って何か手掛かりが得られたら後で僕にも教えてよ」

「いいよ」

「楽しみに待ってるから」

「うん」


 話は終わったので僕は立ち上がり「じゃあ帰ろっか」と裕を促した。

「そうだね」

 裕も立ち上がり僕たちは公園を出て、家に帰る道を歩く。裕と別れる道まで歩き、そこでバイバイする。

「また明日ね。裕くん」

「また明日。蓮くん今日はほんとにごめんね。それじゃあね、バイバイ」

 裕は何度も手をぶんぶん振りながら僕とは違う道を帰っていった。

 僕もまた自分の帰る道を歩きはじめる。僕は、ふぅ、とため息をつき、一人になってしまったなと考える。

 でもそれは仕方ない。展望台についてきてくれただけでもありがたいことだ。ひとりで電車に乗ったり展望台に登ったりしていれば心細かったことだろう。

 裕にはとても感謝しており、あの日はとても楽しかった。結果は得られなかったが良い思い出だと感じる。


 僕は今後のことを考える。とりあえず海に行く計画を立てたが、ひとりで行くのは心細いなと感じる。それに一人旅は寂しいだろうと思う。

 とはいえお金があり、ついて来てくれる人に心当たりがないので諦めて一人で行くしかない。

 もともと最初はひとりで行動しようと思ってたのだ。状況が最初に戻っただけである。

 海までの具体的な経路や電車賃もこれから調べなければならない。これは駅員さんに聞いてみようと思う。

 電車の事なら詳しく教えてくれるだろう。

 僕は家路を急ぎ、一度家に帰ってランドセルを置いたら、駅に向かおうと決意した。


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