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「ロシアにて」  作者: 羽衣 一男(はごろも かずお=ろわぬ)
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第二話 「別れ」

挿絵(By みてみん)


「・・・江母井デスク!」


"タッ タッ タッ タッ...."


成田空港4F。


「いやー、マジでこれからロシアなんスね!」


「・・・・」


隆和が薄暗い造りのとんかつ屋で


かつ丼と蕎麦(そば)を食べていると、入口の方から


日朝新聞の文芸部の部下である


"太田(おおた) (あつし)"


が、ヘラヘラと軽い足取りで


自分が座っている席までやってくる


「あ、部長!」


「田中くん...」


「いきなり、「ロシアに行けっ」って言われた時は


 私も驚きましたけど...」


太田の脇にいた、何人かの日朝新聞の


社員の中から江母井の部下である


新入社員


"田中 ゆかり"


が大きなトランクを引きながら、


テーブルに座っている江母井に笑顔を向ける


「私も、少し迷ったけど...」


「おいおい、ロシアに行くのに


 そんな薄着で平気なのか?」


礼文(れぶん)くん....」


「デスク。」


「・・・何だ?」


ゆかりの隣から、あまり表情を顔に出さない


これも江母井と同じ日朝新聞の部下である


"礼文(れぶん) 健一(けんいち)"


が隆和に向かって話し掛けてくる


「いきなり、東京から


 「モスクワに行け」なんて...」


「・・・・」


「松坂編集局次長は何か考えでも


 あるんスかね?」


「・・・・」


"俺が聞きたいくらいだ"


「・・・・・」


"ガッ ガッ!"


「で、デスク?」


礼文の言葉に何か現実逃避の様な


感覚に陥ったのか、隆和は


目の前にあるかつ丼の丼を持ち上げ


それを無心でかっ込む様に口の中に運ぶ


"ガッ ガッ!"


「――それ、うまそうスね...」


「・・・・中根。」


"クチャ クチャ"


丼から顔を外すと、そこには何かよく分からない


脇に小さいバスケットの様な物を抱えた


太った目つきの細い男が、バスケットに入れられた


チキンの様な物を被り付きながら


こちらを見下ろしている


「それ、とんかつっスか...」


"中根 学"


田中や礼文より三年ほど先輩の


日朝新聞の記者で、


よく分からないが気付くと


いつも何かを口にしているデブだ


「・・・とんかつっスか...」


中根は隆和が今食べていた


かつ丼の丼をチキンの様な物を口に頬張りながら、


物欲しそうな目で見ている


「・・・食うか?」


「いいんスか...?」


"ガサッ"


「・・・・・!」


手に持っていたチキンのバスケットを


テーブルの上に置くと、中根は


脇に置いていた箸を手に取り、


目の前の丼を勢いよく持ち上げる


"ガッ ガッ ガッ ガッ!"


「(浅ましいな...)」


「で、デスクっ このカツ丼


 マジでうまいっスよっ」


「・・・そうか」


"ガッ ガッ ガッ ガッ...!"

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