第三話:魔法は紡いで、魔術は構築
「セーシリア!」
外へと出たら真っ先に声をかけてきたのは、水色の半透明の手のひらほどしかない小さな羽の生えた少女である。彼女の名前はソラ。空を司る精霊だ。
そもそも3歳児が外に出て食べ物を手に入れることができるなんて不可能だが、ソラや他の魔族たちの力を借りることで何とか生きることができている。
幸運なことにセーシリアには生まれつき精霊や妖精が見ることができる。昔は全ての種族が精霊や妖精たちを見ることができたようなのだが、時が経つにつれて見ることができなくなってしまった。信仰の問題なのか、魔術の発展の為なのか、何かしらの陰謀なのかは分からないが、今時珍しい見える人間である。
「ソラ、きょうもまほーをおしえてくれる?」
「ええ、もちろんよ!」
ソラは可愛らしくセーシリアの周りをくるりんと飛んで頬にキスをしてくれる。なんとも愛らしい返事だ。
「じゃ、魔法と魔術のおさらいをしましょうか。セーシリア、違いを言える?」
「まほーはつむいで、まじゅつはこうちく!」
「今のセーシリアには正解ね」
ソラはまた頬にキスをした。3歳児の言葉では上手に説明できないからだろう。
この世界には空気の他に魔素というのが漂っている。魔素というのは精霊や妖精、魔物のご飯である。それを使って魔素を紡ぎ自分の思い通りに事象を起こすのが魔法であり、魔素を紡ぐことができるのが魔法使いや魔女である。紡ぎ方に正解はなく人それぞれであるが、セーシリアの場合は糸を編むような感じで魔法を完成させる。
反対に魔術とは自分の肉体に溜まった魔素によって作り上げた魔力を放出、構築して魔術を作り上げていく。例えば火の魔術を使いたいとなると、例えばどう言う科学式にするか、例えばどのように数式を作り上げていくのか、どんな風に回路を構築していくかを考える必要がある。構築の仕方は人それぞれなのであくまで例であるが。答えまでの行程を省略していかに速く魔術を発現するかが魔術師の良し悪しを決めるのだ。
昔は魔素や精霊などが見えていたためか、魔法使いや魔女が多かったのだが、それも減ってきて魔術師が主流となっている。どっちが良い等は特にはないが、魔術師は自分の中の魔力がなくなれば魔術は発現できなくなり、魔法使いは魔素を紡ぐ精神力と集中力がどれほど保てるかが鍵となる。
日曜日に更新できたらいいなとか思ってます。