第二話:設定盛りすぎなんだよ
この【救国の乙女】の話をしよう。
『クロスリア』には『種族』がたくさんいる。人間であったり、エルフであったり、ドラゴンであったり、ドワーフであったり、前世の世界では馴染みのあった種族がたくさんいるというわけだ。そしてその『種族』には『称号』が存在する。簡単に言えば仕事だ。魔法使いや、魔術師、薬師、鍛冶屋、戦士であったり、主婦や官吏、魔女、はたまた王や姫なんて『称号』がこれまたたくさんある。この『称号』生まれながらにして得ているものであり、仕事なので変更は可能である。薬師の称号を持つものが戦士になることだってあるから、自由自在である。もちろん、『称号』を持つためだけの知識や技量等が必要であるがここでは省略しよう。
そして、『称号』を極めると『種族』に変更ができるようになる。『種族』が『人間』であったものが『称号』である『戦士』を極めて『種族』を『戦士』にすることができるというわけだ。人間(もしくはその他の種族)を捨ててその道を極めることができるようになると、『種族』限定の技であったりスキルであったり得るものがあるということだ。
……設定盛りすぎなんだよ。
セーシリアは『種族』『人間』、『称号』は『魔女』である。3歳にして称号を持っているのはなかなか珍しく、流石魔王としか言いようがない。
しかし残念なことに『種族』を『魔女』にするためには何をしたらいいのかが分からないのだ。物語が始まった時のセーシリアはすでに『種族』は『魔女』であった。種族を魔女にすることができればアンリの呪いも解呪できたというのに。
セーシリアはそっと息を吐き出した。
「どうしたの?セリア、何か嫌な夢でも見たの?」
「ううん、なんでもないよ!おしょといってくるね!」
小さく吐いたつもりは息はアンリには聞こえてしまったようだ。笑顔で首を振って外へ出るための扉に手をかける。
アンリは呪いで根付いているためご飯は日光と水になってしまったが、セーシリアには食事が必要である。アンリは動けないとなると、3歳には過酷な自給自足の生活をしなければならない。なんて酷い世界だ。
あと、どうしてサ行が上手に発音できないのか。3歳児の体は困ったものだ。