これからどうしていこうか、城に留まるのはありえない。
改めて別室に移されて、召喚の責任者っぽいおっさんと向き合って座る。
神官長だそうだ。確かに責任者だわ。あの王子を除けばね。
女子高生ちゃんは、別の部屋に連れていかれたようだ。
まあ、しょうがない。あの子は聖女らしいからね。
王太子ぶん殴った小娘と一緒にはいさせられないからね。
まあでも、駄女神の所為とはいえ、こいつらに非がないわけでもないのも事実。
こっちとしては遠慮する理由もない。
「この度は、大変申し訳ございませんでした。異世界の聖女は我が国にとっては特別な存在でして…。その特徴が黒髪黒目の乙女という記述がございましたもので…。」
「なるほど、それであの王子はあんな態度だったと。私がこの世界の人物だって思ったのね。」
「は、はい…。」
腹は立つが、いつまでも気にしてはいられない。
生きていくために情報を収集せねば。
「さて、聖女召喚は何のために?」
「わ、わが国では次期国王のパートナーとして、王太子殿下が18歳の御年になられる年に儀式を行うことが慣例となっておりまして…。」
とどのつまり、王子様の花嫁探しの儀式ってことか。
続けて聞いていると、召喚の儀式で実際に異世界の少女が来ることは稀にしか起こらないらしい。
大抵はこの世界の年頃の女の子が出てきて終わりらしい。
「ですが、今回は異世界から二人も来るとは異例すぎまして…。」
王太子の花嫁が私なのか女子高生ちゃんなのかおっさんたちは悩んでるのか。
でも、私はあの王太子とは気が合わないし、好みじゃない。
そもそも、私は自力で生きていきたい派なのよ。
「なるほど、でも、聖女ってことは普通の花嫁とは違って特別な役割があるんじゃないの?」
「え、ええ。聖女様は女神レーア様の祝福を持つ選ばれし乙女なのです。レーア様の神託を告げ、王の治世を支えるのが聖女様のお役目なのです。」
…え?レーアの神託?
それ、アテになるのか?
レーアにさんざん迷惑かけられた身としては、マゾ集団なのかと疑いたくなるレベルのヤバさを感じる。
っていうか、よく今まで滅びずに済んでるな!!
金山あるって神託しても、何故か菌類の山とか出そうなんですけど?
うん、やっぱり、早くここから出て行こう。
「そういうことならば、聖女じゃない私は早々にここを立ち去りたいと思います。」
「い、いや!貴女が聖女じゃないとはまだ決まっては!!」
もういっそ私が聖女かどうかはどうでもいいんだけどね。
でも、あっちはそういうわけにはいかないらしい。
城を出るにしても宮廷魔導師長のステータス鑑定を受けてからにしてほしいとのことだった。
その御仁は今出張でいないらしく、戻るのは3日後らしい。
まあ、3日あれば十分に情報を収集できそうだ。
その間に色々対策を考えよう。
「わかりました。ではその間はこの世界で生きていくために必要なことを学ばせてもらいます。」
「あ、ありがとうございます!」
その後、メイドさんに促されて客室に案内された。
女子高生ちゃんも別室で寛いでいるらしい。
今日はなんか疲れた。思えば深夜まで働いていた帰りに死んでそのまま異世界だものね。そりゃあ疲れるよ。
もう休もう。
ふわふわなベッドに潜り込んで目を閉じた。