身分高くても躾がなってないのはただのアホでしかない。
―何不自由ない家柄の赤ちゃんになるだけですから!!安心して第2の人生楽しんでください!!―
って、そう言ってたよね?
どう見ても赤ん坊じゃない、私の姿は10代半ばの銀髪紫瞳の超絶美少女だ。
そして、ファンタジーな服装のおっさんが数名とダイブ身分高い若い男。そして、私にとっては馴染のあるお嬢様系女子高の制服を着た黒髪の少女。
「お、おお!!聖女召喚の儀式は成功した!!」
「殿下、おめでとうございます!」
「し、しかし二人おられる。一体どういうことだ?」
どうやら、聖女としてこの女子高生が召喚されたようだった。
私、巻き込まれた?
いや、レーアがしくじったのか?
しくじってそうだな…、あの駄女神は人の話をちゃんと聞かないし、一息ついて考えることをしない。
致命傷な女神だ。
たぶん、やらかしたことに気づいてもないだろう。
自分でなんとかするしかない。
「我が国にようこそ、異世界の聖女殿。」
「え?聖女?人違いだと思いますけど。」
先ほど殿下と呼ばれていた若い男が、私の後ろにいた女子高生ちゃんの前に立って声をかけた。
おい、手前にいた私は無視か?
ただですら、駄女神のせいで死んで、赤ちゃんに転生のはずが10代半ばで別人の姿で召喚に巻き込まれてるってのに。
ここ数日のストレスもあり、私は相当イライラしていたと思う。
その私の状態に気づいた女子高生ちゃんはオロオロしてる気配がしていた。
おおう、ごめんよ。
とりあえず、冷静になろう。
「何を言う、聖女とは黒髪黒目をしている異世界の乙女のことだ。間違いなく貴女は聖女だ。」
強引に女子高生を連れ出そうとしている。私を無視して…。
よし、殴ろう。
そう思った瞬間に、二人の間に入って殿下とやらの顔に思いっきり拳で殴り飛ばしてやった。
「ぐは!!」
思っていた以上に吹っ飛んで壁に激突して失神してしまっていた。
おいおい、どんだけ弱いんだよこいつ。
「リ、リチャード王太子様!!」
慌てて駆け寄ったローブのおっさんは介抱するため、王子様を連れ出していった。
お、王太子ってことは、あいつ次期国王ってことか!?
あんなのが王様になったら、この国は間違いなく滅びる気がする。
私は聖女じゃないし、巻き添えなので被害者。
さっさとここから出て行こう。
王太子殴ったけど、そもそもあっちが悪いから問題ないでしょう。
文句言って来たら言いくるめてやればいいし、最悪強行突破してしまえばいい。
ここにいるよりは遥かにマシだろう。
女子高生ちゃんは、聖女になってお役目果たせば一生安泰だろうし、ここに残らせるべきだろうね。
さて、まずは固まってるおっさんどもと話を付けないといけないか。
そう思って振り向けば、おっさんたちはビクリと震えていた。