おっちょこちょいな神様
目が覚めたら、なんかいきなり・・・
「本っ当に、すいませんでしたーーーーー!!!!!」
初対面の人に土下座された。
どういう状況だよこれ…。
謝罪を素直に受け取っていいのかすら分からん。
目の前の人物の顔は地面にへばりつく程の土下座なので分からないけれど、真っ白なワンピース??ローブ??を着た白髪のツインテール、たぶん小娘っぽい。それと何かうっすら光ってる。
うん、別にイルミネーション纏ってるとかそんなんじゃなくて普通に光ってる。
正直、ドン引きものだ。
だけど、今の状況を知るにはこの不審者に聞くしかない。
…仕方ない、腹をくくって声かけるか。
「謝罪するなら、理由を説明してくれませんか?」
不審者にドン引きしてるってバレたくなくて平静装って喋ったら、思ってた以上に冷たく響いてしまった。
不審者がぷるぷるしだしたよ…。なんかごめん。
「別に怒ってるとかじゃないんで、顔上げて立って5W1Hを考えたうえで説明してくれませんか?それと、あなたは誰ですか?」
まだぷるぷるしてるけどなんとか立ち上がってくれた。
「は、はい・・・。私は、レーアといいまして、女神です・・・。」
そして、あーだこーだって身振り手振りでしゃべってくれたんだけど…。
こいつ、説明下手すぎる。
順序バラバラだし、テンパりすぎて客観的な内容がない。
おちつけ私、こういう人はどこにでもいる。
出てきた言葉を自分でつなぎ合わせればいいんだよ。
「…つまり、あなたは世界を管理している神様の一人で、あなたが管理している世界に雷を落とそうとして、躓いた拍子に空間移動の魔法が発動して、何故か地球に発動させちゃって運悪く通りがかった私が巻き込まれたってことですね?」
「はい…、そのとおりです。本当にすみませんでした。」
なんか、客を怒らせた新人を思い出すんだけど、神様なのに、ポンコツすぎませんかね?
「それで…、その…空間魔法の先が世界の果ての果ての無の世界でして…、あのままじゃ消滅してしまうので、私の領域に急遽引っ張りだしたんです。そのせいで、貴女は元の世界じゃ死んだことになってしまったんです。」
な・ん・だ・と!?
それじゃ、独身のまま孤独に過労死した哀れなアラサー女ってことか!?
「…責任、取ってくれますよね?」
多分、今すっごい冷たい声になってる。でも、仕方ないよね?
しょうもないドジかました神様に殺されたんだからね?
普通に怒る事案だよこれ。
「も、もちろんです!!私の世界に私の加護付けて転生していただくということで!!」
見た目も私の好みにしていいらしい。
…めんどくさい。
「別に今のままでもいいです。」
「えええ!?私の世界じゃ黒髪黒瞳は原則いないんです!!無駄に目立ってしまいますよ?」
…マジか。それは嫌だな。
「普通に暮らしたいから、そっちの世界に馴染む見た目なら何でもいいわ・・・。」
「わ、わかりました!!私がバッチリな見た目にしておきます!!」
「…はりきりすぎなくていいから。」
やらかしそうで怖いから、普通にやってくれ。
こいつに任せて大丈夫なんだろうか。なんか、不安になってきたから意見を言おうとしたら、レーアはガッツポーズしたかと思えば、両手を前に出して呪文を唱えだした。
「あとは、貴女が不自由がないように取り計らいますので!!」
「ちょっ!!」
「何不自由ない家柄の赤ちゃんになるだけですから!!安心して第2の人生楽しんでください!!」
また渦に巻き込まれる。
まだ、話終わってないよね!?
「早とちりもたいがいにしなさあああああい!!!!」
飛ばされながら悟った。
レーナは、そそっかしさでいろいろやらかしてるポンコツ女神だと・・・。
そして、転生先でも、たぶんやらかしてると思う。
神様って、指導係というか、新人教育とか…ないのかな…?
その思考が、妃世羅の最後の瞬間だった。
そして、完全に渦に飲み込まれた時、私は、妃世羅ではなくなった。