さあ、冒険者になろう
冒険者ギルドは、思ってたより清潔感のある雰囲気だった。
いや、ほら…。魔物と戦ったりダンジョンに潜ったりとかするから、厳つい集団の組織なのかなって思ったんだけど…。
「冒険者ギルドにようこそ!ご依頼ですか?」
ふんわり系うさ耳な受付嬢がニコニコと話かけてきた。
「いえ、冒険者の登録をお願いしたくてお伺いしました。」
なんか、マジマジと見られた…。
あ、そうか。今ちょっとお上品なワンピース着てるんだったわ。これじゃあ、冒険者志望には見えないわよね…。
「…今日は拠点作りで、外に出るつもりはないので手続き関係をするために身なりを整えてるんです。」
身だしなみは、コミュニケーションの一環です。
「あ、ああそういうことだったんですね!では、こちらの書類に記入をお願いしまーす!」
書く内容は、名前、年齢、特技か…。
特技…、魔法でいいか。
さっきから、なーんかギルドに来てる男連中の視線が集まってるような…。
ちらっと視線の方向を見たら、気まずそうに露骨にそらしてる…。
まあ、10代半ば女子から冷たい視線を浴びたくはないよね。
「魔法系職希望なんですね。得意属性は何ですか?」
あー…、やっぱり聞かれるか~。
「えーっと…全部?」
「え?」
「いや、だから全属性…使えますんで…得意不得意は特になく?」
受付嬢さん、フリーズしてる。
「もしもし?」
「は!!し、失礼いたしました!い、一応鑑定しますのでこの水晶に手を置いて魔力を注いでください。」
言われたとおり魔力を注いだら、水晶が砂みたいになった…。
「…なんでーーー!?」
「いや、知らないです。」
言われたとおりにしただけなんで、文句言われる筋合いもない。
「魔力量がオーバーして割れるのは聞いたことありますけど、砂みたいになるのなんて見たことないですよ!!」
…それ、私の魔力量尋常じゃないからだわ。
MP∞だもんねえ…。
あわあわしてる受付嬢さん、ごめんね。わざとじゃないのよ?
周囲もざわついてるし、ちょっとどうにかしてほしんだけど…。
「おい、リリ。なんの騒ぎだ?」
「あ!マスター!」
40歳くらいのワイルド系イケオジが出てきた。
私の手の下にある元水晶の粉末を見て、一瞬目を丸くしていたけど、事態を察したのか、受付嬢さんことリリさんに片づけを命じ、私には一緒に奥に来るように言われたので言う通りついていった。
その先は応接室だった。
席にエスコートされた。見た目に反して紳士だわ。
「俺はロイド・グリーデン。冒険者ギルドのマスターをしている。」
「セラです。」
自己紹介をしていたら、スタッフさんらしい人がお茶とお菓子を出してくれた。
せっかくなのでお茶を飲む。あ、おいしい。
そんな私を見て微笑ましいような顔で見ていたロイドさんは少し申し訳なさそうに話を切り出した。
「悪いな、奥に連れ込んでよ。これ以上騒ぎが増えて目立たせるわけにもいかんのでね。」
「いえ、助かりました…、目立つのはあまり好きではないので。」
「魔力鑑定用水晶が粉々になるってことは、相当高い魔力を持ってるってことだろう。本当は手続きを踏んでから渡すんだが、冒険者登録カードを先に渡す。これに触れてくれ。」
机の上に出されたカードに触れると、文字が浮かんできた。それをロイドさんに見せる。
「えーっと、氏名:セラ・キサキ、年齢:15、レベル:50、ジョブ:エレメントマスター…。」
カードに書かれた内容を順次読み上げていけば、どんどん信じられないって表情になっていった。
「…お嬢さん、これは新人のステータスじゃねえな。」
「…ですよね…。」
冒険者歴10年以上のベテランでも拝めないだろうね…。
でも、ランクFだからギルドに登録履歴はないのも事実なんだよね。
「まあ、お嬢さんみたいな子が冒険者になろうっていうんだ、深い事情があるんだろう。リリには俺から話をしておくから、クエストをこなしてランクアップの条件を満たしてくれ。Eランクまでは冒険者としてやってく覚悟があるかの確認みたいなもんで、Dランクからは功績でランクアップする仕様だからな。」
なるほど、合理的な制度だわ。
手続きはロイドさんが直々にやってくれるそうだ。あと、やたら頭撫でてくるなこの人。
まあ、頭くらいならいいけどね…。




