私、死んだ?
「…起きよ、人間…。」
誰よ、私の休日の昼寝を邪魔する奴は…。
昨日も終電にギリギリ間に合うくらいまで働いていたってのに、起こさないでほしいんですけど?
そもそも、どいつもこいつもさ、やれ嫁が待ってるだの、やれ子供の用事だのって言い訳して、定時に帰って行く。
まあ、確かに家庭の事情は人それぞれあるよ?
仕方ないことだってのは理解している。
だけど、人に仕事を押し付けておいて、
「先輩は、独り身だしフリーだからお願いしやすいわぁ。」
「先輩は、仕事が恋人ですもんね。」
とか、小馬鹿にした態度で大量の書類押し付けに来る後輩に軽く殺意を覚えたのは仕方ないことよね?
上司も上司で、
「君は独身で独り暮らしだから、気楽に命令できてありがたいねぇ。」
ふざけるなっての!!!
給料のためじゃなきゃ顔面に書類投げつけて大股で出ていってるわ!!!
モラハラとセクハラで訴えたい・・・。
結局、終電ギリギリに間に合うかどうかの時間まで働いていたんだ。
そう、急いで走って、走って、走って…。
…あれ?
そういえば、私、電車に乗れたんだっけ?
間に合わなくてタクシー呼んだんだっけ?
私、家に帰れたんだよね?
だから、寝てるんだよね?
そうじゃないなら、私は今、どこで寝てるんだろう…。
そう思ったら、急にぞっとしてきた。
嫌な気分が止まらなくなってくる。
(起きないと!!!)
意図的に意識を戻すように目を覚ませば、そこには何もなかった。
そう、何も…。
真っ白で、静寂で、そこにいる感覚すらおかしい気分になるくらいに何もない。
「何…?ここ、どこなの?」
思わす、声を出してしまった。だって、声を出していないと、この何もない場所に溶けてしまいそうな感覚から解放されないと思ったんだ。
何とかしないとって、思った途端に足場が崩れるように落ちていく。
いや、引きずられていくといった方が正しいのかもしれない程の何か強い力で引っ張られてる感覚だった。
「すまない。」
遠くで誰かが謝罪しているような声がしたが、それが誰の何に対する謝罪なのか。
聞き返すこともできないまま、再び意識が遠のいていった。