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オークの大王: ローマ式歩兵で世界を統一する  作者: リチャード江藤
第四章 大陸統一と大陸会議
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28)ヘルベ歴248年 4月9日 憲法

「なんだか緊張しますね」


「働く前から給料を前借りした奴が何を言ってる。それにここには俺と弟のシュキアとヴェラとお前しかおらんだろ」


 ここはノックス達が乗って来た船よりも一回り大きい船の中である。窓はあるがうす暗い。ついでにこの船にはノックスが以前カシヴェラヌスに教えた救命胴衣が置いてあり、船には隔壁も新しく取り付けてある。


「はあ、まあそうなのかもしれませんが」


「自己紹介ももう終わってるし、さっさと始めよう」


「では聞きますがホサンス様は大陸会議で何をなされたいのですか?」


「やはり憲法だな」


「憲法ですか」


「憲法ってなんだ?」


「えーと、国の枠組みと言いますか、仕組みと言いますか、取り決めと言いますかそのようなものです」


「だめだわからん」


「ワタクシが聞いた話ではヘルベの町では皆が集まって議題について話して、決議を取って、多数の意見の通りに行動すると聞きましたが」


「そうだな」


「それが憲法です」


「は?」


「例えばですね、ヘルベの千人住んでいる町で、たった五十人だけ集まって話して決議を取ったとします。その場合その町の人々はその結論に従いますか?」


「あ~、しないだろうな」


「それは皆が集まると言う枠組み、取り決めから外れているのでそうなるわけです」


「なんとなくわかった。取り決めか」


「それを町に当てはめるだけでなくて、国全体でやるのです」


「今のままだとダメか?」


 シュキアが濁って無い方の眼をまっすぐにノックスに向ける。


「ダメですね。破綻します」


「はあ? 何故だ」


「現状はホサンス様一人に各地域の指導者が忠誠を誓っているわけなので、ホサンス様の死後おそらく大陸同盟はバラバラになります」


「お前なあ、そんな縁起でもないことクリーニャの前で言ったら問答無用でぶっ飛ばされたぞ」


「まあ、そう脅すな。事実そうだと俺も思う。それに俺たちだけで王政をやるとしたら、敵対者を完全にぶっ潰すと言う感じになって。半分恐怖で支配することになると思う。そんな王にはなりたくはない」


「うーむ、兄者の言うことはわかるが」


「だから憲法なのですか?」


「だから憲法だ」


「だいたいその『憲法』と言う言葉自体が耳慣れない」


「ならば基本法とでも」


「基本の法か。それならもうちょっとわかりやすいか」


「まあ、名称はなんでもいい。とりあえず、お前が知恵熱を出す前に大まかな形は決めていこう」


「うっさいな、俺は赤子じゃねえぞ」


「三権分立しますか?」


「したいが、王政でできるのか?」


「一応できます」


「ちょっと待て、そのサンケンブンリツってなんだ」


「えーと、司法と行政と立法を分けると言うことです」


「なんだそりゃ」


「ヘルベの町では皆が集まって色々と決めるじゃないですか」


「ああ」


「それが立法です」


「ほう」


「で、例えば、そうですね、戦争に行くと決まったら指揮官が軍を率いるわけですよね」


「まあな」


「で、戦場では指揮官に任せて戦闘をしますよね。まさかいちいち皆が集まって多数決を取るなんてしませんよね」


「そりゃそうだ」


「その指揮官が行政みたいなものですね。立法が決定したことを遂行する役割です」


「ああ、なるほど。じゃあ、司法ってのは?」


「誰かが犯罪を犯したとき、その人が有罪か無罪か決めることです」


「そんなの町の人々が全員集まってその事について話して多数決で決めて終わりだ」


「ではヘルベの町では司法と立法はわかれてないと言うことになりますね」


「じゃあ、それでいいんじゃないか?」


「いえ、現実問題として人口が十万人、百万人、一千万人とかになりますと、犯罪者の数が多すぎて、立法でそれをいちいち裁くのは無理になります。なのでどうしても、それ専門の部門が必要になり、立法と司法はわかれます」


「ああ、そういうことか」


「だからコイツが必要なんだよ」


「わかったよ兄者」


「で、だなこれらを分けるには理由があるんだ。立法と司法と行政を分けて、どれか一つが暴走するのを防ぐ。例えば戦争や贅沢が大好きな王様がいるとしよう。そしたらそいつはおそらく税金を絞り取れるだけ取ろうとするだろ。そんなことになったら俺たちみたいな普通の人は困るだろ。だからそれを防ぐために立法に税金を決める権限を与えるんだ」


「いや、兄者が王だからな。というか大将軍になった時点で普通の人じゃないからな」


「わかってるし、俺はそんなことはしない」


「だったらそれでいいじゃんか」


「俺の孫やひ孫やその子孫がまともとは限らないだろ」


「孫までは大丈夫だと思うぞ、が、兄者の言いたいことはわかった」


「普通は王が行政の長となります。問題は立法と司法ですね」


「うーん」


 ここでホサンスが唸る。机を指でトントンと叩いている。


「色々と考えましたが立法はやはり二院制しかないと思います」


「なぜだ」


「ちょっと待て、二院制とはなんだ」


「立法はやはりヘルベみたいに人が集まって法や方針を決めるのが望ましいので、人の集まる院を設けます」


「まさか百万人を一つの場所に押し込むつもりじゃないよな」


「それは無理です。わかっています。貴族院と言ってもいいですし、元老院と呼んでもよいのですが、ここではとりあえず上院と呼びますね。そしてそれに相対するのが下院です。上院では現在存在している国の指導者たちを集めます。これで現状すでに上にいる人達を集め、彼らの意向がわかります」


「まあ、俺でもそこはわかるな。それに数も少ないしな」


「うむ」


「問題は下院です。選挙がないのに、どうやって民の代表を選ぶのかが、問題となります」


「そうなんだよなあ」


「選挙ってなんだ?」


「ヘルベみたいに人々が集まって、彼らの代表を選ぶことです。この代表は人々に選ばれたので人々の代弁をすると言うのが建前であり、理想です。話を聞くかぎりヘルベなら問題なくできると思いますが、アペルドナルでは無理です。皆が集まって物事を決めるという文化がありません。アペルドナルでは村長となんとなく雰囲気で選ばれた少数の村の老人たちが相談して決めるという形を取ってます」


「ああ」


「でもどうにかして、集まる人の数を減らさないと一つの所に集まることができません」


「そうだな」


「なので、クジで選ぶというのはどうでしょうか? ワタクシはこれは一つの案としては悪くないと思います」


「悪くはないが保留だな。で、司法はどうする」


「法体系を新たに作る必要があるので、これが一番の問題かと」


「うがあ、頭が痛くなってきた。知らないことが多すぎる。こんど会う時はダゴマロスでも連れてきてやってくれ」


「ああ、悪かった。一気にやるのは無理だな。で、司法は裁判官を育てるところから始めるのが正解なのか?」


「一応裁判官ならアペルドナルとかセノーネにもいますが彼らが真っ当な判断を下せるかどうかはわかりません。おそらく毎回王よりの判断を下すような気もします」


「まあ、そういう環境にずっといたらなあ」


「陪審員でもいいのですが」


「まだ法もないし、最高裁が陪審員なんて聞いたことがない」


「いっそ、ヘルベみたいに最高裁を下院と上院の合同院にしてしまいますか?」


「それも手か。おい、聞いているのか?」


「あ、すまん、ちょっとお前らがなに言ってるのかわからなくなって意識が飛んでた」


「そうか。じゃあ、今回はここまでだな」


「わかりました。私ももっと考えます」


「おいヴェラ。このことは記録に残してもよいが、当面は絶対に秘密だぞ。清書もするな。ほかの連中にもしゃべるなよ」


「了解いたしました」


 ホサンスとシュキアが退出したあとはノックスとヴェラが部屋に残り書面にする事柄をまとめた。こうして大陸会議に向けての準備が水面下で始まった。船の中なので水上なのだが。



ここから全部で五話、政治関係の話をします。

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