王都の最初の一歩
俺は今、立派な城壁の前に来ていた。
王国の首都、王都の門前である。
そんな中、一際人の目を引いていた。
その理由は、馬車だった。
どうやら家の馬車は他の貴族よりも装飾が多く、馬も珍しい亜種だかららしい。さらに、今までの馬車と違い、横に揺れても安心のサスペンション付きの為、馬車の足がいろいろと大きくなっているようで、それも目立つらしい。
だが、そんな目も家紋が書いてあるのを見ると、すぐに目をそらす。
「もう少し、普通の馬車を買おう」
「かしこまりました。至急、我々で選定いたしますので、その中からお選びください」
セバスチャンが律義に答えてくれる。
「それにしても、王都の城壁は、地味だな」
「そうでしょうか?城壁と言えばこのような頑丈なものではないのですか?」
そうなのだが、家の城壁は数枚あるため、街中の城壁は模様と言うか、絵を掘ったというか、まあその時作業に当たってもらった人の中に、そう言うのが好きな人がいたので、書かせてみたらそうなった。
「まあいいや。それで、家の屋敷はどこにあるんだ?」
ようやく王都へ入れたので、セバスチャンに聞いてみる。
「旦那様、王都に当家の屋敷はございませんよ?」
「え?ないの?」
「はい、ついこの間まで貧乏領主でしたからな」
「ついこの間って、十五年前じゃないか」
「ですが、貴族社会ではついこの前ですよ。そのため、王都に屋敷を構えられていないのです」
う~ん。
そこまでお金が回せなかったのか?いい機会だし、一軒でかいのを買うか?
「…屋敷、買うか。お金は余ってるし」
なんせ、貧乏だったから使い道が分からない。それ故にどんどんおかねがたまっていく。
「では、王都の立地と敷地面積などを考慮して、選考いたします」
「ああ、あ、湖と森って作れる?」
「湖ですか?可能ですが…」
「じゃあ、結構でかいのをよろしく」
将来、リタイヤしたときの楽しみは多く持っておかないとな。
水辺で食事なんてするのも悪くない。
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そうこう自分の屋敷について注文を付けていると、馬車が止まった。
付いたようだ。
御者が扉を開けたので、降りていくと、家の屋敷より数段小さい屋敷がそこにあった。
「ん?小さくない?」
まあいっか。
「旦那様、今後そのような発言はお控え下さい。ここは、弟様とお父様を現在住まわせていただいてる、奥方様の家の屋敷なのですから」
ああ、そう言えばそうだったわ。すっかり忘れてた。
「それじゃあ、セバスチャン、ワインの準備は?」
「こちらに。当家領産のピーナッツとチーズもここに」
「よし。弟と父を預かってもらってるんだ。愛想良くしなきゃな」
俺は、自分に気合を入れて、その門をくぐるのだった。