領地
「戦争?」
「はい。北の帝国が王国に宣戦布告をしたそうです」
朝食を食べていると、セバスチャンがそんなことを言い出した。
「っていうか、それ俺たちに関係ある?一応この領も近所に接してるんだけど?」
「はい。ですので旦那様には食料救援をお願いしたいと」
「………マジか」
「はい」
この状況で食料救援って何ですか?
食物の量はあるが、運ぶ手段が少ないのだ。
これではある程度のリスクを抱えて送らなくてはならない。
「はぁ、やるしかないか」
「それと隣のフレイア領が陥落したそうです」
「は?」
フレイア領とは、帝国の反対側にある国の領地だ。
大きいが、町として機能しているのは小さい領域だった。
「陥落?戦争でもしたのか?」
「はい。隣の領主と揉めてしまったようです」
マジか。
と言うことは、近いうちに労働力が手に入る?
「よし、移民受け入れ態勢を整えておこう。とりあえず、住居の確保だな」
「はい。レンガと漆喰と言う物により、頑丈で大きな家がいくつもできていますからな」
「そうなのか?ここからは全然見えないからな」
そう、家の屋敷の周りはほとんど森で、近くに家があっても分からないのだ。
「それは当然でございます。辺境伯として恥ずかしくないほどの土地は確保してありますからな」
セバスチャンが胸を張って言う。
「それでか」
まあ、土地があるっていうのはいいことだからな。
「ん?でも土地は売ってるよな?結構なくらい」
「いえ?どうせ管理もしませんし、領民がやっていますので、我が領の土地はすべてアルフレット様の物ですよ?」
マジか。
え、じゃあそれ売ればかなりの利益になるんじゃね?
「よし、それ全部売っちゃおう」
「無理ですな」
間髪入れずに否定してきた。
「…なぜだ」
「このような危険地帯、誰も欲しがりません」
「…資源は豊富だぞ?」
「それでも、その土地の管理費や職人を雇う費用を考えればマイナスになりますから」
「何それ、怖い。えぇ、じゃああれか?俺はいつの間にか税収からその分まで引かれてるのか?」
「正確には、税収の決められた額に入っているので、最初から変わりません」
ああ、なるほど。
朝食が水とパンなわけだ。
「まあいいか。移民は受け入れて、兵士も募集しよう。それで壁を建てれば何とかなるかな?」
「そうですね。長期的な計画になりますが大丈夫かと思います」
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「ついに、ついに、ようやく、終わったか!!!」
あれから一年。
道や建物は不十分ではあるが、領地の全てを消化することが出来た。
その間に、様々な移民や戦争があったが、ほとんどが職人や兵士になってくれたおかげで、異例の速さで開拓を進めることが出来た。
いや、もともと正剛な兵士がいたため、その後の人材育成でも数多くの強者を生み出した。
いや~、人材が豊富っていいですね~。
「まあ、それまでが大変だったんだがな」
後は道を舗装したり、工場を建てたりだな。
すでに食物の数は領民内で消費できなくなっているので、これ以上は畑を広げられない。
「さて、ついに産業に力を入れられるようになったんだ。最近税収も増えてきたんだ。そろそろ鉱山の開拓を考えてもいいころだろう」
「そうですな。ではそれについての計画を立てましょう」
と言うことで、鉱山の採掘を始めることにする。
これで領地が潤って、俺の食生活も解消して、いやもう笑いがとまらんは。
こうして、領地を何とか安全な土地にした。これで枕を高くして眠れる。
いや~、ゆっくり眠れたのは何年ぶりだろうか。今までは夜中に魔物の出現なんてざらだったからな。