弟、勇者ご対面
食堂にて、皆で団欒する食事中。
妙にエミリア夫人の視線が当たる。
「なあ、弟よ。何故君の奥さんはこちらを見ているんだ?」
近くで食事をしているチャールズに手招きして聞く。
「ああ、兄さんが王都来た時あったじゃない?その時そっけない対応をされただろう?だから、彼女としては申し訳なく思っているんだって」
ほほ~ん。
そう言えば、そんなこともあったっけ?
まあ、俺器がでかいから?よく覚えてないけど?
確か、部屋がないとかで締め出されたっけ?
冗談です。
とてもよく覚えています。
「まあ、あんま気にしてないから、って言っといてくれ」
「わかった」
まあ、これで大丈夫だろう。
夕飯時にはもとに戻っているはずだ。
さて、さっきからメイドに食べさせてもらっている、レイラだが。
「うむ。子供は可愛いな」
これで、陛下の歓待の予行練習は大丈夫だろう。
「そうだ。後で、勇者に会うか?」
俺は、チャールズに聞いてみる。
なんせ、あれでも勇者だからな。
いずれ有名になる人間には会ってみたいだろうとの気遣いだった。
「ああ、だがかなりのたらしだ。嫁さんには会わせない方が良い」
チャールズは、う~ん、とうねった後、娘と二人で会うと決めたそうだ。
「ウィルはいいのか?」
其れこそ、若い男の憧れだろう。
「う~ん、一応聞いてみるよ」
そう言って、食事を再開した。
「なんだなんだ。難しい顔をしおって。ここ数十年でずいぶん老けたな」
父さんが俺のことを指さして言う。
「しょうがないだろ。最近になってようやく暇になったんだから」
そう。
継いだ当時はどうなるかと思っていたが、本当に良かった。
「まあ、過去のことは措いといて、夕飯も豪勢にするから期待しててくれ」
そうして、昼の団欒は終わった。
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俺の執務室にて。
目の前のソファーの片方には勇者、片方にはチャールズとレイラ。
そして真ん中の一任掛けソファーに俺。
レイラは、このような場所になれていないのか、居心地悪そうにしていた。
「チャールズ様。こちら今代の勇者、セイマ佐々木様でございます」
セバスチャンが紹介を始める。
「勇者様。こちら、旦那様の弟君、チャールズ・フォン・ビンラット様、そしてそのご息女、レイラ様にございます」
まず、話を始めたのはチャールズからだ。
「勇者殿、この度はこの世界を救うために活動しているとのことで、まずはお礼を申し上げます」
「ああ、こちらこそ。ここの領主様にはいろいろと迷惑をかけている。その弟さんともなれば、なおさら下手に出てもらっては困る」
俺はぎょっとした目を勇者に向ける。
どうした。
いつものふてぶてしさはどこ行った。
いつからこんなになった。
セバスチャンを見て、真相を確認しようとする。
「…」
何も答えなかった。
「勇者殿は、無類の女性好きと聞いていたのですが、そうでもないのですかね?」
話題作りのためのネタを発射。
「ああ、前まではそうだった。だが、ここの領主や騎士たちに稽古され、上には上があるのだと思い知らされた。そして確信した。このままでは、俺は死ぬと」
え、何やっちゃんってんの?
勇者に一体何をしたの?
疑問の尽きない中、話はどんどん進んでいく。
「こちらは娘のレイラでして、何かお言葉をかけてもらえませんか?なんでも、魔術師になりたいとか」
え、そうなの?
ならいくらでも先生をやらせるよ?
勿論女の。
「そうか。少女よ。努力を惜しむな。そうすればいつか報われる時が来る。それは魔術師としてではないかもしれないし魔術師かもしれない。だが、努力をすることを忘れるな」
何やら、重みのある言葉だった。
「なるほど、娘にはそうなってもらいたいものです」
微笑みながらチャールズが言う。
「では、ありがとう、今日は記念すべき日だった」
そう締めくくって終わった。
なんだこれ。




